黒い聖女

あさいゆめ

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 召喚の儀式は神殿と皇室が共同で行う。
 皇帝陛下はご高齢の為、お身体に負担になるという事で、イデオンが代行する。
 術式や儀式は神官が執り行うが、神官の足りない魔力を補うのが、魔力量の多い皇族の役割。
 しかしイデオンもまだ成人していない事で魔力は安定していない。そのため私も手伝うことになった。
 アストロイト侯爵家は代々魔力が多いのだ。
 それも婚約者に選ばれた理由のひとつ。
 神官達が儀式を始める。
 術式から光が溢れ、光の中から少女が現れる。
 黒目黒髪、日本人だ。
 高校生なのでしょう。制服を着ています。 
 ああ、やはり目を奪われてしまったようですね。
 …。
 …足か?生足か?
 この童貞野郎どもめ!
 この国では淑女は足を見せません。
 膝上のスカートなどもっての他。
 儀式を執り行う高位の神官も女性との関係をもっていませんから、皆生足に釘付けです。
「聖女様、失礼いたします。」
 肩に掛けていたストールを腰に巻いた。
「あ、あの?聖女って?」
 イデオン?
 皇帝陛下の代わりに挨拶と説明をしなくてはならないのに。
「殿下!」
 ハッとして。
 優しく微笑むと。
「突然の事で驚かれたことでしょう。
 私はグラディアス帝国の皇太子、イデオン・オーギュスト・グラディアスです。
 あなたは聖女として、召喚されました。
 どうか私達をお助け下さい。」
 恭しくお辞儀をする。
 聖女もイデオンに釘付けだわ。
 見るからに王子様だもんなぁ。 
「マジで?
 私が聖女?
 王子様まじイケメンなんですけど。」
 口は悪いようですが、若い日本人ならこんなものでしょう。
 アイドルグループとかにいそうなかわいらしい娘です。
 とりあえず今後の活動について説明をしなくてはなりませんので、一旦城に向かいます。
「うわー馬車?うける。」
 こちらの貴族社会が長かったせいか、耳に馴染んでいた言葉が汚く失礼に聞こえてしまう。
 私の聖女に対する嫌悪感がそう感じさせているのかもしれない。
 城に着きましたが、
「失礼かと存じますが、この国では淑女は足を見せません。どうかお召し物を着替えて下さいませんか?」
 幸いイデオンの母君とよく似た体型でしたのでお借りいたしました。
 女の子が好きそうなピンクのフリルたっぷりのドレスです。
 着替えて客間に向かいます。
 イデオンを見て挨拶も無しに、
「見て~王子様!きれいでしょ?」
「…母上のドレス。」
「うそー、お母さんの?マジありがとー。」
 イデオンの顔が雲っている。
「あの、いけませんでしたか?私のドレスではサイズが合わないので申し訳ございません。」
「いや、いいんだ。」
 今後について話し合う。
 聖女の名前は山田 玲美那、キラキラネームでした。
「レミィって呼んでね。」
 聖女にはまずこの世界に慣れてもらわなくてはならない。
 一般貴族の家に養女に入ってもらい、学園へ通ってもらう。
 そうしながら浄化や治癒の魔法の練習もしてもらう事になった。
「ところでさ、この侍女は顔が地味だからもっと可愛い娘にしてよ。」
 侍女?
 私の事でしょうか?
「この女性は侍女ではありません。
 クリスティア・メルローズ・アストロイト。
 私の大切な婚約者です。」
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