88 / 112
88
しおりを挟む
アレクサンドリアの回想
あれは学園に通う前だから13歳頃だったかしら。
マティアス殿下の婚約者としてお妃教育が始まった。
婚約者だけれどわたくしとマティは幼なじみの兄妹も同然。お互いに好きな相手が現れたら解消しようということになっていた。まあ、そんなこと無くてもマティとの結婚なんてごめんだわ。
お妃教育には3歳年下のルシア・ルコルテリア侯爵令嬢も皇妃候補として参加することになっていた。
ルシアは生なりの絹糸のような淡い髪色にピンクの瞳のなんとも儚く存在感の無い女の子だった。
お妃候補がもう一人いると聞いて皇后はその子に押し付けようと思っていたけど、こんな頼りなげな子で大丈夫?お妃教育は厳しいって聞くわ。途中で投げ出されでもしたら大変。わたくしがサポートしてあげなきゃ。妹が出来たみたいで嬉しかったし。
そんなある日、側室であるビアンカ様からお茶のお誘いがあった。
当時の後宮にはビアンカ様ただお一人が住まいしていた。
歴代の皇帝の中には20人以上も側室を置いた方もいらしたらしい。当時と同じ建物なのだからお一人では広すぎるだろう。
現皇帝は皇后様がお亡くなりになられてから周りに強く進められビアンカ様お一人を側室に迎えられただけ。貴族派であまり権力のない家門から選ばれたようで、影響力の無さで選ばれたのだろう。
何代か前の皇帝からこのように妃を多く迎える事をしなくなった。
皇帝といえど、子供達が争うのは見たく無いということだろう。
皇子教育でも皇帝の座は権力では無く務めだと思えと教えているみたいだ。
賢帝が治めているからこそ帝国は長きに渡って栄えている。
話が逸れてしまった。
お一人で住まいされているビアンカ様がゆくゆくは後宮に入る事となる私たちを招待してくださったのだろうと幼いながらも感謝していた。
だが通された部屋では上座にすでに着席されたビアンカ様が、傲慢な笑みを浮かべ、
「よく来ましたね。さあ、お座りなさい。」
と、下座を指した。
わたくしもルシア様も困惑した。
というのもビアンカ様は側室といっても伯爵家の令嬢。皇族では無いのだ。
皇族を名乗れるのは皇后と皇妃のみ。
幼いとはいえわたくしは公爵令嬢、ルシア様は侯爵令嬢。ビアンカ様より地位は高い。
耐えかねたルシア様が小声で、
「アレクサンドリア様、これは何かのテストかしら?」
と尋ねられた。ルシア様はこれまで人の悪意に晒されたことなど無かったのだろう。
わたくしは牽制だと思ったけど、単にビアンカ様が礼儀を知らないだけかもしれないし、
「ビアンカ様、お招きあずかりありがとうございます。ですが、お加減がお悪いようですわね。もうお座りになられているなんて。」
これで気づいて下さればいいのだけれど。
高位の者より先に着席など有り得ない。
眉をひくつかせて、
「どういう事かしら?席に付かれてはどうなの。」
と、相変わらず下座をすすめる。
侍女も間違いを指摘しない所を見ると共謀しているようですわね。
ニヤニヤと薄ら笑いを浮かべた侍女達に見下ろされ怯みそうになったけど。
はぁっ、とため息をつき、
「侍女を解雇なさったほうがよろしいわね。」
「なんですって?」
「礼儀知らずをお側に置くとビアンカ様が恥をかきますわ。まさかこんな無礼がビアンカ様の指示のはずがありませんもの。」
扇子を持つ手がぶるぶると震え今にも投げつけようとしていて、ルシア様に当たるかと心配だったわ。
「今日の事は侍女の不始末ということで退席させていただきますわ。ごきげんよう。」
ルシア様も小声で、
「ご…ごきげんよぅ。」
部屋をでて庭に差しかかった所で、
「ア…ア…アレクサンドリア様、怖かったですわ。ううう~っ。」
ルシア様の我慢が限界で泣き出した。
「わ…わたくしだって…うわーん。」
二人で震えながら抱きあって泣いた。
それからわたくし達は本当の姉妹のように仲良くなったのだ。
あれは学園に通う前だから13歳頃だったかしら。
マティアス殿下の婚約者としてお妃教育が始まった。
婚約者だけれどわたくしとマティは幼なじみの兄妹も同然。お互いに好きな相手が現れたら解消しようということになっていた。まあ、そんなこと無くてもマティとの結婚なんてごめんだわ。
お妃教育には3歳年下のルシア・ルコルテリア侯爵令嬢も皇妃候補として参加することになっていた。
ルシアは生なりの絹糸のような淡い髪色にピンクの瞳のなんとも儚く存在感の無い女の子だった。
お妃候補がもう一人いると聞いて皇后はその子に押し付けようと思っていたけど、こんな頼りなげな子で大丈夫?お妃教育は厳しいって聞くわ。途中で投げ出されでもしたら大変。わたくしがサポートしてあげなきゃ。妹が出来たみたいで嬉しかったし。
そんなある日、側室であるビアンカ様からお茶のお誘いがあった。
当時の後宮にはビアンカ様ただお一人が住まいしていた。
歴代の皇帝の中には20人以上も側室を置いた方もいらしたらしい。当時と同じ建物なのだからお一人では広すぎるだろう。
現皇帝は皇后様がお亡くなりになられてから周りに強く進められビアンカ様お一人を側室に迎えられただけ。貴族派であまり権力のない家門から選ばれたようで、影響力の無さで選ばれたのだろう。
何代か前の皇帝からこのように妃を多く迎える事をしなくなった。
皇帝といえど、子供達が争うのは見たく無いということだろう。
皇子教育でも皇帝の座は権力では無く務めだと思えと教えているみたいだ。
賢帝が治めているからこそ帝国は長きに渡って栄えている。
話が逸れてしまった。
お一人で住まいされているビアンカ様がゆくゆくは後宮に入る事となる私たちを招待してくださったのだろうと幼いながらも感謝していた。
だが通された部屋では上座にすでに着席されたビアンカ様が、傲慢な笑みを浮かべ、
「よく来ましたね。さあ、お座りなさい。」
と、下座を指した。
わたくしもルシア様も困惑した。
というのもビアンカ様は側室といっても伯爵家の令嬢。皇族では無いのだ。
皇族を名乗れるのは皇后と皇妃のみ。
幼いとはいえわたくしは公爵令嬢、ルシア様は侯爵令嬢。ビアンカ様より地位は高い。
耐えかねたルシア様が小声で、
「アレクサンドリア様、これは何かのテストかしら?」
と尋ねられた。ルシア様はこれまで人の悪意に晒されたことなど無かったのだろう。
わたくしは牽制だと思ったけど、単にビアンカ様が礼儀を知らないだけかもしれないし、
「ビアンカ様、お招きあずかりありがとうございます。ですが、お加減がお悪いようですわね。もうお座りになられているなんて。」
これで気づいて下さればいいのだけれど。
高位の者より先に着席など有り得ない。
眉をひくつかせて、
「どういう事かしら?席に付かれてはどうなの。」
と、相変わらず下座をすすめる。
侍女も間違いを指摘しない所を見ると共謀しているようですわね。
ニヤニヤと薄ら笑いを浮かべた侍女達に見下ろされ怯みそうになったけど。
はぁっ、とため息をつき、
「侍女を解雇なさったほうがよろしいわね。」
「なんですって?」
「礼儀知らずをお側に置くとビアンカ様が恥をかきますわ。まさかこんな無礼がビアンカ様の指示のはずがありませんもの。」
扇子を持つ手がぶるぶると震え今にも投げつけようとしていて、ルシア様に当たるかと心配だったわ。
「今日の事は侍女の不始末ということで退席させていただきますわ。ごきげんよう。」
ルシア様も小声で、
「ご…ごきげんよぅ。」
部屋をでて庭に差しかかった所で、
「ア…ア…アレクサンドリア様、怖かったですわ。ううう~っ。」
ルシア様の我慢が限界で泣き出した。
「わ…わたくしだって…うわーん。」
二人で震えながら抱きあって泣いた。
それからわたくし達は本当の姉妹のように仲良くなったのだ。
0
あなたにおすすめの小説
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
怒られるのが怖くて体調不良を言えない大人
こじらせた処女
BL
幼少期、風邪を引いて学校を休むと母親に怒られていた経験から、体調不良を誰かに伝えることが苦手になってしまった佐倉憂(さくらうい)。
しんどいことを訴えると仕事に行けないとヒステリックを起こされ怒られていたため、次第に我慢して学校に行くようになった。
「風邪をひくことは悪いこと」
社会人になって1人暮らしを始めてもその認識は治らないまま。多少の熱や頭痛があっても怒られることを危惧して出勤している。
とある日、いつものように会社に行って業務をこなしていた時。午前では無視できていただるけが無視できないものになっていた。
それでも、自己管理がなっていない、日頃ちゃんと体調管理が出来てない、そう怒られるのが怖くて、言えずにいると…?
【完結】 男達の性宴
蔵屋
BL
僕が通う高校の学校医望月先生に
今夜8時に来るよう、青山のホテルに
誘われた。
ホテルに来れば会場に案内すると
言われ、会場案内図を渡された。
高三最後の夏休み。家業を継ぐ僕を
早くも社会人扱いする両親。
僕は嬉しくて夕食後、バイクに乗り、
東京へ飛ばして行った。
お兄ちゃんができた!!
くものらくえん
BL
ある日お兄ちゃんができた悠は、そのかっこよさに胸を撃ち抜かれた。
お兄ちゃんは律といい、悠を過剰にかわいがる。
「悠くんはえらい子だね。」
「よしよ〜し。悠くん、いい子いい子♡」
「ふふ、かわいいね。」
律のお兄ちゃんな甘さに逃げたり、逃げられなかったりするあまあま義兄弟ラブコメ♡
「お兄ちゃん以外、見ないでね…♡」
ヤンデレ一途兄 律×人見知り純粋弟 悠の純愛ヤンデレラブ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる