戦鬼は無理なので

あさいゆめ

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  アレクサンドリアの回想

 あれは学園に通う前だから13歳頃だったかしら。
 マティアス殿下の婚約者としてお妃教育が始まった。
 婚約者だけれどわたくしとマティは幼なじみの兄妹も同然。お互いに好きな相手が現れたら解消しようということになっていた。まあ、そんなこと無くてもマティとの結婚なんてごめんだわ。
 お妃教育には3歳年下のルシア・ルコルテリア侯爵令嬢も皇妃候補として参加することになっていた。
 ルシアは生なりの絹糸のような淡い髪色にピンクの瞳のなんとも儚く存在感の無い女の子だった。
 お妃候補がもう一人いると聞いて皇后はその子に押し付けようと思っていたけど、こんな頼りなげな子で大丈夫?お妃教育は厳しいって聞くわ。途中で投げ出されでもしたら大変。わたくしがサポートしてあげなきゃ。妹が出来たみたいで嬉しかったし。
 そんなある日、側室であるビアンカ様からお茶のお誘いがあった。
 当時の後宮にはビアンカ様ただお一人が住まいしていた。
 歴代の皇帝の中には20人以上も側室を置いた方もいらしたらしい。当時と同じ建物なのだからお一人では広すぎるだろう。
 現皇帝は皇后様がお亡くなりになられてから周りに強く進められビアンカ様お一人を側室に迎えられただけ。貴族派であまり権力のない家門から選ばれたようで、影響力の無さで選ばれたのだろう。
 何代か前の皇帝からこのように妃を多く迎える事をしなくなった。
 皇帝といえど、子供達が争うのは見たく無いということだろう。
 皇子教育でも皇帝の座は権力では無く務めだと思えと教えているみたいだ。
 賢帝が治めているからこそ帝国は長きに渡って栄えている。
 話が逸れてしまった。
 お一人で住まいされているビアンカ様がゆくゆくは後宮に入る事となる私たちを招待してくださったのだろうと幼いながらも感謝していた。
 だが通された部屋では上座にすでに着席されたビアンカ様が、傲慢な笑みを浮かべ、
「よく来ましたね。さあ、お座りなさい。」
 と、下座を指した。
 わたくしもルシア様も困惑した。
 というのもビアンカ様は側室といっても伯爵家の令嬢。皇族では無いのだ。
 皇族を名乗れるのは皇后と皇妃のみ。
 幼いとはいえわたくしは公爵令嬢、ルシア様は侯爵令嬢。ビアンカ様より地位は高い。
 耐えかねたルシア様が小声で、
「アレクサンドリア様、これは何かのテストかしら?」
 と尋ねられた。ルシア様はこれまで人の悪意に晒されたことなど無かったのだろう。
 わたくしは牽制だと思ったけど、単にビアンカ様が礼儀を知らないだけかもしれないし、
「ビアンカ様、お招きあずかりありがとうございます。ですが、お加減がお悪いようですわね。もうお座りになられているなんて。」
 これで気づいて下さればいいのだけれど。
 高位の者より先に着席など有り得ない。
 眉をひくつかせて、
「どういう事かしら?席に付かれてはどうなの。」
 と、相変わらず下座をすすめる。
 侍女も間違いを指摘しない所を見ると共謀しているようですわね。
 ニヤニヤと薄ら笑いを浮かべた侍女達に見下ろされ怯みそうになったけど。
 はぁっ、とため息をつき、
「侍女を解雇なさったほうがよろしいわね。」
「なんですって?」
「礼儀知らずをお側に置くとビアンカ様が恥をかきますわ。まさかこんな無礼がビアンカ様の指示のはずがありませんもの。」
 扇子を持つ手がぶるぶると震え今にも投げつけようとしていて、ルシア様に当たるかと心配だったわ。
「今日の事は侍女の不始末ということで退席させていただきますわ。ごきげんよう。」
 ルシア様も小声で、
「ご…ごきげんよぅ。」
 部屋をでて庭に差しかかった所で、
「ア…ア…アレクサンドリア様、怖かったですわ。ううう~っ。」
 ルシア様の我慢が限界で泣き出した。
「わ…わたくしだって…うわーん。」
 二人で震えながら抱きあって泣いた。
 それからわたくし達は本当の姉妹のように仲良くなったのだ。
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