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おまけ(1)
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テリオス視点
誰だろう。こんな夜中に、雨も降っているというのに馬を走らせて来るのは。
玄関へ向かうとエミリンも待ち受けていた。
エミリンは普通の侍女を装おっているがおそらくアレクサンドリア様がシオン様に付けた密偵。
ずぶ濡れで馬を降りて玄関のドアを叩く男。
この匂いは、
「エミリン、武器を降ろせ。」
「誰?」
「陛下だ。」
「は?…へ?」
「マティアス皇帝陛下だ。」
もうすぐ結婚式だというのに今更何をしに来たのだ。
「すまない…シオンに会わせてもらえないだろうか。」
泥だらけで、こんなに汚れたこの人を見たことがない。
護衛も付けずにこんな所まで、どんな覚悟で来たのかと思うと拒否する事は出来なかった。
「…こちらへ。」
そのまま寝室へは行かせられない。
浴室へ通した。
「あちらのドアはそのまま寝室に繋がっておりますから。」
頭を下げて浴室を後にした。
この後二人が何をするか、考えるのも嫌だ。
そうだ、シオン様は苦しめばいい。
ボロボロに傷つけられて捨てられたらいい。
そして恨めばいいんだ。
長い時間二人きりの時間を過ごし、シオンを頼むと言いい残し帰った。
残されたシオン様は乱暴に犯されたようで立つことも出来ないほどだった。
なのに、幸せそうにうっすらと微笑みを浮かべているのだ。
出ていけと言う言葉には従うしかなかった。
シオン様の心には僕が入り込む余地など最初からなかったんだ。
捨てられた。
馬は駄目だ。すぐに引き返したくなるから。
首都へ向かう乗り合い馬車にしよう。
これに乗ったらもう未練は断ち切ろう。
…なん台も見送った。
意を決して荷台に足をかけたが乗れなかった。
胸が苦しくて汗が吹き出す。
そうだ、殺してしまおう。
邸へと引き返した。
窓から中を伺う。
あれから2日も経つのにまだベッドから出てこないのか。
まだ痛むのだろうか。
食事はちゃんと摂られているのだろうか。
…馬鹿だ、僕は。
ついさっきまで殺す気でいたのに。
もう一度だけ、もう一度だけ姿を拝見できたら旅立とう。
「あらやだ、野良猫かと思ったら薄汚い無職の男だわ。」
聞き覚えのある声。
「マーレン?」
いや、エミリンだ。
だがこの声はマーレン(22話で消えた)。
「馬鹿めがやっと気づいたか、とっとと失せないか!」
「…すっごい若づくり。」
マーレンは30代前半位だったのにエミリンはどうみても二十歳前後に見える。
「はあ?こっちが素だよ。小娘だと傭兵どもに舐められるからな。」
嘘だ。
「子供が出来て結婚したんじゃ?」
「傭兵上がりじゃ公爵邸でシオン様をお守りする事は出来ないからね。
それより、首になったんならとっとと失せな。
さすがに元同僚を殺るのはしのびないからね。」
殺気を放ってはいないはずだか、一時の気の迷いも見逃さないか。
「あんたがシオン様に不埒な真似をするようなら殺れってアレクサンドリア様から仰せ付かってるんでね。
知らないとでも思っているのか?
シオン様の使用済みシーツの匂いを嗅いだり一緒に風呂に入ったりする貴様の異常行動を、この変態め。」
バスケットを差し出し、
「これ食ったらさっさと出て行きな。」
サンドイッチとワイン?
マイアがエミリンを探しに来たようだ。
「どうしたの?」
「ちょっと野良猫にエサをね。」
「えー、どこどこ?」
「駄目よ。すごく汚ないの。」
「そっか、シオン様が見つけたらかわいそうだからって飼いそうだもんね。
万が一テリオス様が帰ってきたら叱られちゃうもんね。」
「そうよ。万が一帰ってきたらね。」
「そんな汚ないものをシオン様に近づけるな、病気がうつる!とか言うもんね。」
「そうそう。あの小うるさいのがいなくなって静かになったわよね。」
「そこまで言わなくてもいいじゃない。でもストレス減ったなーあはははは。」
あいつら…。
誰だろう。こんな夜中に、雨も降っているというのに馬を走らせて来るのは。
玄関へ向かうとエミリンも待ち受けていた。
エミリンは普通の侍女を装おっているがおそらくアレクサンドリア様がシオン様に付けた密偵。
ずぶ濡れで馬を降りて玄関のドアを叩く男。
この匂いは、
「エミリン、武器を降ろせ。」
「誰?」
「陛下だ。」
「は?…へ?」
「マティアス皇帝陛下だ。」
もうすぐ結婚式だというのに今更何をしに来たのだ。
「すまない…シオンに会わせてもらえないだろうか。」
泥だらけで、こんなに汚れたこの人を見たことがない。
護衛も付けずにこんな所まで、どんな覚悟で来たのかと思うと拒否する事は出来なかった。
「…こちらへ。」
そのまま寝室へは行かせられない。
浴室へ通した。
「あちらのドアはそのまま寝室に繋がっておりますから。」
頭を下げて浴室を後にした。
この後二人が何をするか、考えるのも嫌だ。
そうだ、シオン様は苦しめばいい。
ボロボロに傷つけられて捨てられたらいい。
そして恨めばいいんだ。
長い時間二人きりの時間を過ごし、シオンを頼むと言いい残し帰った。
残されたシオン様は乱暴に犯されたようで立つことも出来ないほどだった。
なのに、幸せそうにうっすらと微笑みを浮かべているのだ。
出ていけと言う言葉には従うしかなかった。
シオン様の心には僕が入り込む余地など最初からなかったんだ。
捨てられた。
馬は駄目だ。すぐに引き返したくなるから。
首都へ向かう乗り合い馬車にしよう。
これに乗ったらもう未練は断ち切ろう。
…なん台も見送った。
意を決して荷台に足をかけたが乗れなかった。
胸が苦しくて汗が吹き出す。
そうだ、殺してしまおう。
邸へと引き返した。
窓から中を伺う。
あれから2日も経つのにまだベッドから出てこないのか。
まだ痛むのだろうか。
食事はちゃんと摂られているのだろうか。
…馬鹿だ、僕は。
ついさっきまで殺す気でいたのに。
もう一度だけ、もう一度だけ姿を拝見できたら旅立とう。
「あらやだ、野良猫かと思ったら薄汚い無職の男だわ。」
聞き覚えのある声。
「マーレン?」
いや、エミリンだ。
だがこの声はマーレン(22話で消えた)。
「馬鹿めがやっと気づいたか、とっとと失せないか!」
「…すっごい若づくり。」
マーレンは30代前半位だったのにエミリンはどうみても二十歳前後に見える。
「はあ?こっちが素だよ。小娘だと傭兵どもに舐められるからな。」
嘘だ。
「子供が出来て結婚したんじゃ?」
「傭兵上がりじゃ公爵邸でシオン様をお守りする事は出来ないからね。
それより、首になったんならとっとと失せな。
さすがに元同僚を殺るのはしのびないからね。」
殺気を放ってはいないはずだか、一時の気の迷いも見逃さないか。
「あんたがシオン様に不埒な真似をするようなら殺れってアレクサンドリア様から仰せ付かってるんでね。
知らないとでも思っているのか?
シオン様の使用済みシーツの匂いを嗅いだり一緒に風呂に入ったりする貴様の異常行動を、この変態め。」
バスケットを差し出し、
「これ食ったらさっさと出て行きな。」
サンドイッチとワイン?
マイアがエミリンを探しに来たようだ。
「どうしたの?」
「ちょっと野良猫にエサをね。」
「えー、どこどこ?」
「駄目よ。すごく汚ないの。」
「そっか、シオン様が見つけたらかわいそうだからって飼いそうだもんね。
万が一テリオス様が帰ってきたら叱られちゃうもんね。」
「そうよ。万が一帰ってきたらね。」
「そんな汚ないものをシオン様に近づけるな、病気がうつる!とか言うもんね。」
「そうそう。あの小うるさいのがいなくなって静かになったわよね。」
「そこまで言わなくてもいいじゃない。でもストレス減ったなーあはははは。」
あいつら…。
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