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53 学園生活のスタート 王様視点
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いよいよ学園生活が始まる。
入学式を控えて、昨晩はあまりよく眠れなかった。
そのせいか、今朝から少し体調が悪い。
だけど今日は絶対休むわけにはいかない。
入学式で新入生代表の挨拶をしなくてはならないから。
限られた人にしか僕が健在だと知られていない。もっと世に知らしめないと、未だに病弱で寝たきりだと思われているらしいから。
実際油断すればすぐにこのざまだけど。
寝起きにポーションを飲んだのにもうしんどくなってきた。
どこかで人目を避けてまた飲まなくてはならない。
なのに今日はずっとグロリアがついてまわる。
控え室では僕の体調を気遣い、
「今日は大切な日です。
鋭気を養う為に、滋養強壮によいお茶をお持ちいたしましたわ。」
うっ、臭い。
また漢方薬か。
仕方がない、少しは効くはず。
入学式の前にクラスの確認に。
誰かに聞けばすむ事だけど、僕が気になるのはレティのクラス。
レティの暮らしていた北部では教育環境が整ってなかったと聞いている。王都にきてから勉強したとして、どれくらい遅れを取り戻す事ができただろうか。
廊下がやけに長く感じられる。
気持ち悪い。
さっき飲んだお茶が胃の中から臭ってきている気がする。
ロレンスがいつもより20㎝離れて歩いている?
もしかして臭いのか?僕の息が。
僕らが掲示板を見に行くと、人混みはさっと拓けて道を作る。
レティのクラスは…やった!Aクラス!僕と同じだ。
すごいな、レティは。頑張ったんだな。
もう、戻らないと…こんな所で倒れるわけにはいかない。
「王様ぁ~。」
レティ?
無邪気に手を振って走ってくる。
「お久しぶりです、お元気ですか?」
元気じゃない。
だけど、これは…ああ…握られた手からレティの魔力が流れ込む。
「あ…ああ、元気だ。」
先ほどまでの不快感もすっかりなくなった。
「無礼ですわよ!」
事情をしらないグロリアは声をあらげる。
グロリアだけじゃない。
誰も僕の体調には気がつかないはずなのにレティだけは気づいてくれた。
嬉しくて胸が熱くなる。
「あっ、ごめんなさぁい。
久しぶりに会ったから嬉しくなっちゃって。」
茶化してすぐにその場を立ち去った。
波打つ金の髪を揺らし、短いスカートを翻し。
…いいっ!
新しい制服はなんて素敵なのだ。
まるでレティの為に作られたようによく似合っている。
くるりと振り返り小さく手を振ってくれた。
はあぁぁぁ~かわいい。
だけどレティがかわいいと思ったのは僕だけじゃないみたいで、男子生徒が皆レティを目で追っている。
「スカート…短すぎではないか?」
「まったくですわ、下品で見るに耐えません。」
グロリアが同意する。
けして下品では無いが。
「え~グロリア様どうかしてるんじゃない?
僕はかわいいと思ったけどな。」
テリオスめ、見るな。
「王様、ちょっと失礼いたしますね。
レティにかわいいって言ってきます。」
はあっ?
そんな事言わなくてもレティがかわいいなんて世界中知ってるから!
「…もうすぐ式が始まる。
整列しなさい。」
まったく油断も隙もない奴だ。
式は滞りなく進められ、僕の新入生代表の挨拶も無事終わった。
学校長が挨拶と祝辞をのべ、新しく理事に就任された方を紹介した。
新しい理事は、
「皆さん初めまして、この度理事に就任いたしましたレオンハルト・サザール・タッナーカです。」
叔父上?
聞いて無い。サプライズのつもり?
そりゃ近ごろでは政務も落ち着き、各部署をそれぞれの責任者に任せる事ができるようになり、叔父上も少し手が空いて時間に余裕ができたと言っていたけど。
「実は私、諸事情により学校という所へ通った事がございません。
皆さんと一緒に新鮮で有意義な学園生活をおくりたいと思っております。」
皆、叔父上が過保護で僕が入学したから後を追うように学園に来たと思っている。
絶対違う。
過保護は過保護だけど、レティがいるからだ。
入学式を控えて、昨晩はあまりよく眠れなかった。
そのせいか、今朝から少し体調が悪い。
だけど今日は絶対休むわけにはいかない。
入学式で新入生代表の挨拶をしなくてはならないから。
限られた人にしか僕が健在だと知られていない。もっと世に知らしめないと、未だに病弱で寝たきりだと思われているらしいから。
実際油断すればすぐにこのざまだけど。
寝起きにポーションを飲んだのにもうしんどくなってきた。
どこかで人目を避けてまた飲まなくてはならない。
なのに今日はずっとグロリアがついてまわる。
控え室では僕の体調を気遣い、
「今日は大切な日です。
鋭気を養う為に、滋養強壮によいお茶をお持ちいたしましたわ。」
うっ、臭い。
また漢方薬か。
仕方がない、少しは効くはず。
入学式の前にクラスの確認に。
誰かに聞けばすむ事だけど、僕が気になるのはレティのクラス。
レティの暮らしていた北部では教育環境が整ってなかったと聞いている。王都にきてから勉強したとして、どれくらい遅れを取り戻す事ができただろうか。
廊下がやけに長く感じられる。
気持ち悪い。
さっき飲んだお茶が胃の中から臭ってきている気がする。
ロレンスがいつもより20㎝離れて歩いている?
もしかして臭いのか?僕の息が。
僕らが掲示板を見に行くと、人混みはさっと拓けて道を作る。
レティのクラスは…やった!Aクラス!僕と同じだ。
すごいな、レティは。頑張ったんだな。
もう、戻らないと…こんな所で倒れるわけにはいかない。
「王様ぁ~。」
レティ?
無邪気に手を振って走ってくる。
「お久しぶりです、お元気ですか?」
元気じゃない。
だけど、これは…ああ…握られた手からレティの魔力が流れ込む。
「あ…ああ、元気だ。」
先ほどまでの不快感もすっかりなくなった。
「無礼ですわよ!」
事情をしらないグロリアは声をあらげる。
グロリアだけじゃない。
誰も僕の体調には気がつかないはずなのにレティだけは気づいてくれた。
嬉しくて胸が熱くなる。
「あっ、ごめんなさぁい。
久しぶりに会ったから嬉しくなっちゃって。」
茶化してすぐにその場を立ち去った。
波打つ金の髪を揺らし、短いスカートを翻し。
…いいっ!
新しい制服はなんて素敵なのだ。
まるでレティの為に作られたようによく似合っている。
くるりと振り返り小さく手を振ってくれた。
はあぁぁぁ~かわいい。
だけどレティがかわいいと思ったのは僕だけじゃないみたいで、男子生徒が皆レティを目で追っている。
「スカート…短すぎではないか?」
「まったくですわ、下品で見るに耐えません。」
グロリアが同意する。
けして下品では無いが。
「え~グロリア様どうかしてるんじゃない?
僕はかわいいと思ったけどな。」
テリオスめ、見るな。
「王様、ちょっと失礼いたしますね。
レティにかわいいって言ってきます。」
はあっ?
そんな事言わなくてもレティがかわいいなんて世界中知ってるから!
「…もうすぐ式が始まる。
整列しなさい。」
まったく油断も隙もない奴だ。
式は滞りなく進められ、僕の新入生代表の挨拶も無事終わった。
学校長が挨拶と祝辞をのべ、新しく理事に就任された方を紹介した。
新しい理事は、
「皆さん初めまして、この度理事に就任いたしましたレオンハルト・サザール・タッナーカです。」
叔父上?
聞いて無い。サプライズのつもり?
そりゃ近ごろでは政務も落ち着き、各部署をそれぞれの責任者に任せる事ができるようになり、叔父上も少し手が空いて時間に余裕ができたと言っていたけど。
「実は私、諸事情により学校という所へ通った事がございません。
皆さんと一緒に新鮮で有意義な学園生活をおくりたいと思っております。」
皆、叔父上が過保護で僕が入学したから後を追うように学園に来たと思っている。
絶対違う。
過保護は過保護だけど、レティがいるからだ。
応援ありがとうございます!
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