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「駄目よ!あなた死にそうだったのよ。」
 おばあさんは手を握り、
「ああ、きっと神様がわたくしにこの子を使わして下さったのよ。」
 ポロポロと涙を流す。
 隣の紳士は、
「お義母様、この子が困っていますよ。
 すまないね、君にも事情があるだろうが暫くこの家にいてはくれないか?悪いようにはしない。衣食住には不自由させないし、ご両親がいないのならば納得いく家に養子として引き取られるよう便宜をはかろう。」
「駄目よ!この子はどこにもやらないわ!家の子よ!」
 とんとんとおばあさんの背中をなだめるように叩き執事らしき人に休ませるように指示をした。
「本当にすまないね、突然で驚いただろう。
 私はエドガー・クランセン伯爵だ。
 この家はシュガー男爵家。
 私の妻だった人の実家だ。
 今日は妻の命日でね、お墓参りに行ったついでにこの家に寄る途中で倒れていた君を見つけたんだ。
 冷えきっていたからメイドにお風呂に入れさせここに寝かせんだよ。
 君はね…君は、妻の子供の頃によく似ているらしいんだ。
 妻は子供を身籠ったまま亡くなってしまってね…お義母様は、君が…孫が帰ってきたと、とんでもない事を言い出してね…す…すまない…私も、もし会えるものなら我が子に…。」
 言葉に詰まり肩を震わせている。
 そんな事情があったのか。
 このままご厚意に甘えるのがいいんだろうけど、こんな上手い話ってある?
 なんか落ちがあるんじゃないかな。
 例えば、この紳士の養子になったはいいが、継母や姉にいじめられるとか、飽きたら奴隷に売られるとか。
「あの…こちらのお屋敷には先程の奥さまのご家族は?」
 首を横にふり、
「ご主人も亡くされて、妻の妹がいるが首都の子爵家に嫁いでこちらに帰って来ることはまったくない。
 だから私がこうして時々様子を見に来ているんだよ。」
「ここにいていいのなら、居させて下さい。
 下働きでもなんでもします。
 でも、条件があります。
 学校に行かせて下さい。
 もし、なんらかの事情で家から出される事があっても卒業するまでは支援して下さると約束して下さい。」
「そんな事は当たり前だ。家から追い出す事もしないよ。」
 そうやって私はシュガー男爵家の子供になった。
 だってこんなふかふかの布団に寝かされたらもう孤児院の板のようなベッドには戻りたくない。
 おばあさんは年をとりすぎているから養子縁組みは出来ないという事で書類上はクランセン伯爵の養女となる。
 私はおばあさんをおばあ様と呼び
 おばあさんは私をリリアンと名付けた。
 お嬢様がリリアナという名前だったのだと。
 おばあ様は私を本当の孫のように可愛がってくれたが、元々お身体が悪かったのだけれど五年後には…。
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