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 リリアン視点

 保健室につれてこられた。
「校医がいないようですわ。」
 タオルを濡らし、
「これで冷やして。」
 なんて優しいの。
「髪をとかしてもよろしいかしら?」
 頷くと、ポケットから櫛を取り出しとかし始めた。
 掴まれてくしゃくしゃにされていたみたいだ。
 優しくとかしながら、
「とても繊細な絹糸のように柔らかな髪ね。」
 私の髪は一見綺麗だけど、絡みやすいしすぐに千切れる。
 それには訳がある。
「…幼い頃、あまり栄養状態が良くなくてこんな髪になってしまったそうなんです。
 私が普通の子より背丈が低いのも。
 先ほどのご令嬢達がおっしゃった通り、私は孤児だったので。」
 幸せになれたはずなのに、やっぱり私は卑しい身分の者だと思い知らされた。
「卑しい私なんかがクラウディア様の婚約者である皇太子殿下とどうにかなるなんて事は絶対絶対無いんです。」
 ふわっと後ろから抱きしめられた。
「苦労なさったのね。それなのにまたこんなひどい目にあわされて。」
 頭をナデナデされた。
「わたくしが守ってあげるわ。これからはわたくしの側から離れては駄目よ。」
 優し過ぎじゃない?
 そうだ、クラウディア様に聞かなきゃいけない事が、
「クラウディア様は転生って…あると思いますか?」
「…まさか…やっぱりあなたも転生者?」
 『も』、って言った!
「クラウディア様も?」
「そう!そうなの!」
「やったー!」
「よかったー!」
「で、元ネタ何?」
「で、元ネタ何?」
「…。」
「…。」
 二人でため息をついた。
「とにかく、私は皇太子妃なんて無理なんでクラウディア様の邪魔なんてしませんから。」
「えー…わたくしは主人公が現れたら穏便に婚約解消して身を引くつもりでしたのに。」
「いやいやいや、私は皇太子の事すきじゃないし。」
「いやいやいや、それを言うならわたくしも好きじゃないし!」
「でもやっぱりクラウディア様のほうがお似合いだし!」
「そんな事ないわ、リリアンってばとってもかわいいし!」
 皇太子の押し付けあいが続いた。
「じゃあ、しょうがないからわたくしが…。」
「あっ、そう?やったー!」
「違うだろっ!そこは『いや、やっぱり悪いから私が』ってなるだろっ?」
「なりませんーっ!もう一人いないとそれは成立しませんーっ!」
「くそーっ!」
「…ぷっ、クラウディア様。キャラ崩壊してるーっ!あはははっ。」
 久しぶりに笑った。腹の底から笑った。
 幸せだと思っていたけどいつもどこかでここは自分のいる場所じゃ無いと感じていた。
 本当に対等な関係の人なんて居なかった。
 クラウディア様は同じような前世の世界を知っている。それだけで親近感がある。
「コホンッ、なんとかわたくし達二人で、ともにバッドエンドを回避できるよう協力して生きていきましょうね。」
「はいっ!」
 心強い仲間が出来た。
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