10 / 127
10
しおりを挟む
「そろそろ新入生の中から生徒会の役員を選ばなければならないな?」
カイル皇太子がそわそわと側近で副会長のフェリクスに話しかける。
カイルがそわそわしている理由は自分のお気に入りのリリアン・シュガー男爵令嬢を生徒会に入れたいからだ。
フェリクスもそれは気づいていたが、
「今年度はやはりクラウディア様で決まりでしょうね。
入学試験では残念ながら次席でしたが、その後のテストは常にトップですから。」
クラウディアはカイルの婚約者なのに、あからさまにがっかりしている。
だが、フェリクスには気がかりな事もあった。
常に公正な彼は知りうるすべてはカイルに話すべきだと考えている。
「しかしながら、これは教師達が話していた事ですが、シュガー男爵令嬢はテストのさいに簡単な答えを必ず一つ二つ空欄で出すそうです。
私が推測するに、トップを誰かに譲る為ではないかと…。」
「そういえば今、成績表が張り出されているな。見に行こう。」
途中、言い争う聞き覚えのある声が、
「待ってクラウディア様!ごめんなさい、許してよ!」
「離して!」
ばちんという音がしてクラウディアは驚いた。
振り払った手が背の低いリリアンの頬を叩き、そのままリリアンはバランスをくずし倒れこんでしまったのだ。
「何をしているのだ!」
ちょうどその時、間の悪い事にカイル皇太子がそれを見てしまった。
カイルはリリアンに駆け寄り抱き起こす。
リリアンは慌てて、
「ち、違うの!間違ってちょっと当たっただけなの。」
クラウディアは思った、
(ああ、これがヒロイン補正か。偶然がすべてヒロインの味方をするんだ。)
「リリアン、大丈夫か?
クラウディア、何があったかは知らないが手をあげるとは何事だ。」
クラウディアは黙ってうつむいた。
「皇太子殿下、私が悪いのっ!クラウディア様は悪くないの!」
リリアンがクラウディアを庇えば庇うほどカイルのリリアンに対する評価は上がり、逆にクラウディアを憎らしく思うようになるのだ。
辺りに人が集まり出した。
フェリクスが、
「ここは人目につきます。場所を移しましょう。」
四人で生徒会室に入り、皇太子の向かい側のソファーにクラウディアとリリアンを座らせた。
クラウディアはリリアンに腹が立っていたし、すべてがリリアンの味方のような気がして苛立っていたためそっぽを向いていた。
皇太子は困り顔で、
「何があったのか話してくれないか?」
クラウディアは口を開きそうにないからリリアンが、
「私が悪かったんです。クラウディア様のお気に障る事をしました。」
「だからといって手を上げるほどの事か?」
「あれはわざとじゃ無いんです。私がしつこくクラウディア様を引き止めたから手を払っただけなんです。」
すべて本当の事だがクラウディアを庇って言っているようにしか聞こえないのが不思議だ。
ますますクラウディアは苛立った。
これでは本当に悪役令嬢じゃないかと。
「そのとおりですわ、わたくしには何の落ち度もございません。」
仮に誤って男爵令嬢のリリアンを打ったとしてもクラウディアは頭を下げる必要の無い身分だ。
「では聞くが、リリアンの成績が常にクラウディアの下なのはどちらからの提案だ?」
場の空気が凍った。
クラウディアの美しい顔が怒りで歪む。
「私がっ!私が勝手に、」
リリアンの言葉を遮るように、
「黙りなさい!あなたが何を言っても不利になるのはわたくしなのよ!そんな風になってるのよ。」
リリアンは、はっとした。
ここがロマンス小説の世界だとしたら、クラウディアの言うとおりだ。
「ごめんなさいっ!私があざとかわいいばっかりにっ!
だって!生徒会に入りたくなかったんだもんっ!
ただでさえ皇太子殿下に気に入られているって悪目立ちしてんのに、これ以上皇太子殿下と関わり会いたくなかったんだもんっ!」
カイル皇太子がそわそわと側近で副会長のフェリクスに話しかける。
カイルがそわそわしている理由は自分のお気に入りのリリアン・シュガー男爵令嬢を生徒会に入れたいからだ。
フェリクスもそれは気づいていたが、
「今年度はやはりクラウディア様で決まりでしょうね。
入学試験では残念ながら次席でしたが、その後のテストは常にトップですから。」
クラウディアはカイルの婚約者なのに、あからさまにがっかりしている。
だが、フェリクスには気がかりな事もあった。
常に公正な彼は知りうるすべてはカイルに話すべきだと考えている。
「しかしながら、これは教師達が話していた事ですが、シュガー男爵令嬢はテストのさいに簡単な答えを必ず一つ二つ空欄で出すそうです。
私が推測するに、トップを誰かに譲る為ではないかと…。」
「そういえば今、成績表が張り出されているな。見に行こう。」
途中、言い争う聞き覚えのある声が、
「待ってクラウディア様!ごめんなさい、許してよ!」
「離して!」
ばちんという音がしてクラウディアは驚いた。
振り払った手が背の低いリリアンの頬を叩き、そのままリリアンはバランスをくずし倒れこんでしまったのだ。
「何をしているのだ!」
ちょうどその時、間の悪い事にカイル皇太子がそれを見てしまった。
カイルはリリアンに駆け寄り抱き起こす。
リリアンは慌てて、
「ち、違うの!間違ってちょっと当たっただけなの。」
クラウディアは思った、
(ああ、これがヒロイン補正か。偶然がすべてヒロインの味方をするんだ。)
「リリアン、大丈夫か?
クラウディア、何があったかは知らないが手をあげるとは何事だ。」
クラウディアは黙ってうつむいた。
「皇太子殿下、私が悪いのっ!クラウディア様は悪くないの!」
リリアンがクラウディアを庇えば庇うほどカイルのリリアンに対する評価は上がり、逆にクラウディアを憎らしく思うようになるのだ。
辺りに人が集まり出した。
フェリクスが、
「ここは人目につきます。場所を移しましょう。」
四人で生徒会室に入り、皇太子の向かい側のソファーにクラウディアとリリアンを座らせた。
クラウディアはリリアンに腹が立っていたし、すべてがリリアンの味方のような気がして苛立っていたためそっぽを向いていた。
皇太子は困り顔で、
「何があったのか話してくれないか?」
クラウディアは口を開きそうにないからリリアンが、
「私が悪かったんです。クラウディア様のお気に障る事をしました。」
「だからといって手を上げるほどの事か?」
「あれはわざとじゃ無いんです。私がしつこくクラウディア様を引き止めたから手を払っただけなんです。」
すべて本当の事だがクラウディアを庇って言っているようにしか聞こえないのが不思議だ。
ますますクラウディアは苛立った。
これでは本当に悪役令嬢じゃないかと。
「そのとおりですわ、わたくしには何の落ち度もございません。」
仮に誤って男爵令嬢のリリアンを打ったとしてもクラウディアは頭を下げる必要の無い身分だ。
「では聞くが、リリアンの成績が常にクラウディアの下なのはどちらからの提案だ?」
場の空気が凍った。
クラウディアの美しい顔が怒りで歪む。
「私がっ!私が勝手に、」
リリアンの言葉を遮るように、
「黙りなさい!あなたが何を言っても不利になるのはわたくしなのよ!そんな風になってるのよ。」
リリアンは、はっとした。
ここがロマンス小説の世界だとしたら、クラウディアの言うとおりだ。
「ごめんなさいっ!私があざとかわいいばっかりにっ!
だって!生徒会に入りたくなかったんだもんっ!
ただでさえ皇太子殿下に気に入られているって悪目立ちしてんのに、これ以上皇太子殿下と関わり会いたくなかったんだもんっ!」
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
1,226
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる