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    カイル皇太子視点

「私が悪いのか?」
 私はこれまで誰かに嫌われる事など無かった。考えてもみたことなかった。
「だいたい、皇太子殿下は一目惚れしたとか何とか言ってたけど、好きとも愛してるとも言ってくれた事無いじゃないっ!私の事困らせて楽しんでるだけじゃないの?」
「そうなんですの?」
 クラウディアが皇太子を見る。
「そんな事は無い、私はリリアンをあ…。」
「「あぁ?」」
「す…す…。」
「「すぅ?」」
 なぜだ?こんな簡単なことばが出てこない。
「…おかしいな?クラウディアには簡単に愛してると言えるのに。」
「そうなの?クラウディア様?」
「そうね、愛するカイル殿下。」
「そうだな、愛するクラウディアよ…。」
「良かったですね。クラウディア様愛されてますよ。」
 ぷっ、とフェリクスが吹き出す。
「あ、失礼。話がずれてますよ。」
 生徒会役員には一年生からは前期の成績トップが選ばれていると聞いてリリアンはわざと成績を下げたそうだ。
 そんなに私の事を避けたかったとは。
 それに気づいたクラウディアはプライドを傷つけられ怒っていたのだと。
 クラウディアがあんなに感情をあらわにした所は初めて見た。
 いつも微笑みを絶やさない彼女だがその笑みには感情は感じられない。
 それは上に立つ者としては正しいが私は少しさみしく思っていた。
 その彼女があんなに怒るとは。
 その後、リリアンとは和解したがその時の彼女の姿も見たことの無いクラウディアだった。
「そんなに嫌なら一言相談してくれたら良かったのに。」
「だって嫌だなんて言ってはいけない事だと思っていたんだもん。」
「それはそうだけど、自分であざとかわいいってなんだよ。はははっ。」
「だってそういう事でしょ?かわいく生まれたのは私のせいじゃないけど。」
 クラウディアはあんな顔で笑うのだな。
 その笑顔を引き出すリリアンはきっとただ者ではないのだろう。
 現に私の感情もコントロール出来なくなっている。
 しかし、リリアンに愛してると言おうとすると苦しくなり何かが胸の奥から込み上げてくるのは何故だろう?簡単に口にしてはいけない言葉のような…呪い?まさか呪いなのか?婚約者以外に愛してるとは言ってはいけない呪いなのか?いや、クラウディアのザカリー侯爵家ならそれくらいの呪術師を雇うことはするかもしれない。
 結局、一年生の役員は雑務が多くて毎年苦情が上がるという事で今年からは二人選出することになり、クラウディアとリリアンが選ばれた。

 
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