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   リリアン視点

 側妃か。
「それは出来ないかな。年老いたおばあ様を一人残しては行けないよ。」   
 側妃になれば市井にはいられない。外出も自由には出来ない。
「そう言うと思ったよ。」
 クラウディア様には言えなかったけど、私はそんなに出来た人間じゃない。
 側妃になればずっとクラウディア様を補佐する事になるだろう。どれだけ貢献しても私の名前はどこにも残らない。
 パーティーでは殿下とクラウディア様が揃いの衣装を着る側で控えて引き立てるように地味なドレスを着る。誰にもエスコートもされず、ファーストダンスも無い。
 華やかなようでずっと孤独を感じるのだ。
 お互いに男児が生まれれば、クラウディア様の子供は皇太子。私は自分の子供に分をわきまえさせ、我慢を強いなければならない。
 なんの後ろ楯も無い私の子供として生まれただけなのに。
 同じ転生者なのに侯爵家に生まれたクラウディア様と親も知らない孤児。逆の人生ならどうだったかと考えずにはいられない。
 本当は時々思う。物語の幸せな主人公はクラウディア様で、惨めな私は最後までクラウディア様を羨んで惨めに死んでいくのではないかと。
 小さなプライドだけど、こんな気持ちはクラウディア様には絶対知られたく無い。
 何よりクラウディア様を嫌いになりたくない。
 そんな私をパーティーに誘う人がいた。
 断る事の出ない人。皇族である第二皇子アレン・ヴェルガモーゼ・ラクシード様。
 なぜ誘われたかはわからないけど、アレン殿下はクラスメイト。目立たないというか影が薄いというか、前期の授業が終わる頃まで皇子様だとは知らなかった。
 よく見るとカイル殿下に似ているのにキラキラしていない。
 パーティー当日、また皇族の馬車が…。
 おばあ様は高貴な方ばかりを虜にする我が孫さすが!とか舞い上がっているけどアレン殿下の意図がわからない。
 私と付き合ってもアレン殿下にはなんのメリットも無い。
 その日、私はレイモンド様から頂いたドレスとサファイアを付けて出かけた。
 会場ではアレン殿下がエスコートして入場、ダンスを踊った。
 ダンスを躍りながら、
「突然誘ったりして困惑されただろう?少し聞きたい事があって…君は転生ってあると思うかい?」
 !
「アレン殿下?転生者なのですか?」
「…ああ、君も?」
「はい!」
「ここでは話づらい事もある。あちらで少し話さないか?」
 カーテンで仕切られた場所だ。
 パーティーは出会いの場であったり、商談や密談などもあるからだいたいの会場にはこういった場所がある。だけど一番の用途は花売り達と戯れる事に使われる。
 そちはに行くのは躊躇いがあるけれど…。
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