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レイモンド視点
クランセン伯爵は身分の低い者だと言うが、違うだろう。
身分の低い者は高価な紙をあのように使うことはない。
行間を詰め小さな文字でびっしり書き余白などは残さない。
数年前に再婚したというが、再婚相手は確か夫が亡くなった為にウォルガリン侯爵家から離縁されたという元テッセン侯爵令嬢。
テッセン家は教育熱心な家系で知られている。
夫人が発案者ならばウォルガリン侯爵家は金の卵を産む鳥を逃がしたな。
「ザカリー小侯爵様、改めてお願いがございます。」
「令嬢の事でしょうか?」
「はい、リリアン・シュガー男爵令嬢と名乗っておりますが、あの娘はクランセン伯爵家の養女です。」
伯爵家の者だからぞんざいに扱うなとでも言うのだろうか。
それとも逆に関わり合いなど無いものとしてほしいのか。
「シュガー男爵家は私の亡き先妻の実家ですが、今は老夫人しかおらず、リリアンを養女にするのは難しかった為私が代理で養父となりました。
ですが、私もあの娘の事は実の娘のように思っておりました。
再婚もあの娘の為にした事なのですが、妻や義姉達に遠慮したのでしょう、次第にクランセン伯爵家から離れて行きました。
あの娘は幼い見た目とは違い大人びた考え方をします。
上手に甘える事ができません。
どうか、大切にしてやって下さい。」
「勿論だ。」
離れて良かったのだ。
美しく育った血の繋がらない娘などと一緒に暮らせばろくなことにはならない。
何度もリリアンを頼むと言って帰って行った。
言われずとも十分大切にしている。
後日、リリアンに養父が訪ねてきた事を話すと、
「ステキな紳士でしたでしょう?初めてお会いした時は私を助けに来てくれた王子様かと思ったもん。」
「…ああ。」
イラつく。
「おいで。」
腕を引っ張り強引に抱き寄せ膝に座らせた。
「きゃっ、なんですか?びっくりするじゃないですか。」
「…すまない。」
大切にするし、甘やかしてもやっている。
「…欲しい物は無いか?」
「もうっ、いつもそればっかりですね。
甘やかしすぎですよ。」
「私は忙しくてあまり構ってやれないからな。
金を使うくらいしか出来ないのだ。」
他に何が出来るだろう。
私はリリアンの好みの容姿でもないし、年が離れているから共通の話題も無い。
そもそも私と話題の合う女性などいた試しがないが。
「構ってもらえてますよ。
今も膝の上だし。」
胸に顔をうずめて甘える。
かわいい。
柔らかい髪を撫でているとささくれた気持ちが和む。
「クランセン伯爵夫人はどのような方だ?」
たしか元々はリリアンの家庭教師だったはず。
「よい方でしたよ。貴族社会についてや、マナーなどを教えていただいてました。」
「辛くあたられたりなどは?」
「家族としては生活していなかったのでそんな事はありませんでした。」
それは、家族として認めてもらえなかったという事ではないのだろうか。
継母や義姉達の前では養父に甘える事など出来なかっただろう。
リリアンが私に甘えるのは親を恋しいと思う気持ちに近いのかもしれない。以前、兄なら良かったと言われた事もあった。
こうして膝に抱いている間、私がどのような醜い妄想をしているかも知らずに甘えているのだろう。
クランセン伯爵は身分の低い者だと言うが、違うだろう。
身分の低い者は高価な紙をあのように使うことはない。
行間を詰め小さな文字でびっしり書き余白などは残さない。
数年前に再婚したというが、再婚相手は確か夫が亡くなった為にウォルガリン侯爵家から離縁されたという元テッセン侯爵令嬢。
テッセン家は教育熱心な家系で知られている。
夫人が発案者ならばウォルガリン侯爵家は金の卵を産む鳥を逃がしたな。
「ザカリー小侯爵様、改めてお願いがございます。」
「令嬢の事でしょうか?」
「はい、リリアン・シュガー男爵令嬢と名乗っておりますが、あの娘はクランセン伯爵家の養女です。」
伯爵家の者だからぞんざいに扱うなとでも言うのだろうか。
それとも逆に関わり合いなど無いものとしてほしいのか。
「シュガー男爵家は私の亡き先妻の実家ですが、今は老夫人しかおらず、リリアンを養女にするのは難しかった為私が代理で養父となりました。
ですが、私もあの娘の事は実の娘のように思っておりました。
再婚もあの娘の為にした事なのですが、妻や義姉達に遠慮したのでしょう、次第にクランセン伯爵家から離れて行きました。
あの娘は幼い見た目とは違い大人びた考え方をします。
上手に甘える事ができません。
どうか、大切にしてやって下さい。」
「勿論だ。」
離れて良かったのだ。
美しく育った血の繋がらない娘などと一緒に暮らせばろくなことにはならない。
何度もリリアンを頼むと言って帰って行った。
言われずとも十分大切にしている。
後日、リリアンに養父が訪ねてきた事を話すと、
「ステキな紳士でしたでしょう?初めてお会いした時は私を助けに来てくれた王子様かと思ったもん。」
「…ああ。」
イラつく。
「おいで。」
腕を引っ張り強引に抱き寄せ膝に座らせた。
「きゃっ、なんですか?びっくりするじゃないですか。」
「…すまない。」
大切にするし、甘やかしてもやっている。
「…欲しい物は無いか?」
「もうっ、いつもそればっかりですね。
甘やかしすぎですよ。」
「私は忙しくてあまり構ってやれないからな。
金を使うくらいしか出来ないのだ。」
他に何が出来るだろう。
私はリリアンの好みの容姿でもないし、年が離れているから共通の話題も無い。
そもそも私と話題の合う女性などいた試しがないが。
「構ってもらえてますよ。
今も膝の上だし。」
胸に顔をうずめて甘える。
かわいい。
柔らかい髪を撫でているとささくれた気持ちが和む。
「クランセン伯爵夫人はどのような方だ?」
たしか元々はリリアンの家庭教師だったはず。
「よい方でしたよ。貴族社会についてや、マナーなどを教えていただいてました。」
「辛くあたられたりなどは?」
「家族としては生活していなかったのでそんな事はありませんでした。」
それは、家族として認めてもらえなかったという事ではないのだろうか。
継母や義姉達の前では養父に甘える事など出来なかっただろう。
リリアンが私に甘えるのは親を恋しいと思う気持ちに近いのかもしれない。以前、兄なら良かったと言われた事もあった。
こうして膝に抱いている間、私がどのような醜い妄想をしているかも知らずに甘えているのだろう。
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