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リリアン視点
マリローズ・クランセン伯爵夫人は元侯爵夫人だった。事情があり離縁されたが、夫人に落ち度があったわけではない。
家庭教師としてクランセン伯爵家に来た彼女には二人の令嬢がいらした。
侯爵令嬢として育った彼女らは孤児で養女の伯爵令嬢をお嬢様と呼ぶのは屈辱だったに違いない。
マリローズ様もお辛かっただろう。
いつしかマリローズ様は伯爵に恋するようになった。見ていればわかるほどに恋していた。あんなに素敵な伯爵だもの、好きにならない訳がない。
二人の経緯はわからないけれど再婚すると聞かされた。
私はこの頃までは体も弱かったし、シュガー男爵邸には使用人も少なく子供の世話は難しいだろうと一週間のうち4日はクランセン伯爵邸で過ごし、週末の三日間はおばあ様の男爵邸でという生活をしていた。
私はこのままここに居てはいけないと思った。
なぜなら私は先妻であるおばあ様娘のリリアナに似ているらしいから。
マリローズ様はよく出来たお方で私を蔑むようなことは言葉にも態度にも出さなかったが、内心穏やかではなかったと思う。
二人の義姉達はいかに自分達が優れているかを伯爵にアピールしはじめた。
それでも私と同等に扱うのは気に入らなかったのだろう。誰も見ていない所で些細な嫌がらせをしてくるようになった。
使用人達も古くからいる保守的な人が多く、元々孤児を引き取るのも面白くなかったから侯爵家からの高貴な方々を尊重し、徐々に私を蔑むようになってきていた。
でもクランセン伯爵はそんな事には気がつかなかっただろう。
鈍感。というか人の良い面ばかり見ようとする善良な方なのだ。
体も回復し、おばあ様の男爵邸でお手伝いも出来るからと、自ら伯爵邸を出る事にした。
ワイン作りは恩返しになればと教えた。
前世でワインの輸入に携わったのがきっかけで製造過程も調べ覚えていたから。
葡萄は孤児院にいた頃、勝手に侵入していた荒地に自生していたのだ。
食べながらこれはワインの葡萄だと思っていた。おそらく鳥(フン)にでも運ばれて来たのだろう。
自生できるという事は栽培にも適した土地なのだろうという読み通り育った。
お腹がすいたら勝手に食べていた野イチゴや葡萄はおばあ様の土地だった。おばあ様は知っていたけれど、少しでもお腹が満たされるならと黙認していたらしい。
おばあ様は小さな農場も経営していて、そこで取れた野菜も孤児院に寄付していた。
寄付していたからこそ痩せ細った私を見てショックを受けたそうだ。
荒地はレイモンド様からの融資で私が買い取って、葡萄畑にした。
クランセン伯爵にレイモンド様から融資を受けるよう頼んだのも私。プレゼン資料は私が作ったから自信があった。
伯爵領はこれといった特産品もなく、他の領地から比べれば貧しい。土地や子供を捨て、首都や他の領地へ出ていく者もいる。
これも恩返しだけれど、自分の為でもある。
レイモンド様が私と約束してくださったのは学生の間だけだ。
その後は自分でなんとかしなくてはならない。
働き口がないなら自分で経営するしかない。
だけど信頼も信用もない女にはどうすることも出来ないから、クランセン伯爵とレイモンド様を利用し、伯爵との共同経営にしてもらった。
私って結構強かなんだよ。
マリローズ・クランセン伯爵夫人は元侯爵夫人だった。事情があり離縁されたが、夫人に落ち度があったわけではない。
家庭教師としてクランセン伯爵家に来た彼女には二人の令嬢がいらした。
侯爵令嬢として育った彼女らは孤児で養女の伯爵令嬢をお嬢様と呼ぶのは屈辱だったに違いない。
マリローズ様もお辛かっただろう。
いつしかマリローズ様は伯爵に恋するようになった。見ていればわかるほどに恋していた。あんなに素敵な伯爵だもの、好きにならない訳がない。
二人の経緯はわからないけれど再婚すると聞かされた。
私はこの頃までは体も弱かったし、シュガー男爵邸には使用人も少なく子供の世話は難しいだろうと一週間のうち4日はクランセン伯爵邸で過ごし、週末の三日間はおばあ様の男爵邸でという生活をしていた。
私はこのままここに居てはいけないと思った。
なぜなら私は先妻であるおばあ様娘のリリアナに似ているらしいから。
マリローズ様はよく出来たお方で私を蔑むようなことは言葉にも態度にも出さなかったが、内心穏やかではなかったと思う。
二人の義姉達はいかに自分達が優れているかを伯爵にアピールしはじめた。
それでも私と同等に扱うのは気に入らなかったのだろう。誰も見ていない所で些細な嫌がらせをしてくるようになった。
使用人達も古くからいる保守的な人が多く、元々孤児を引き取るのも面白くなかったから侯爵家からの高貴な方々を尊重し、徐々に私を蔑むようになってきていた。
でもクランセン伯爵はそんな事には気がつかなかっただろう。
鈍感。というか人の良い面ばかり見ようとする善良な方なのだ。
体も回復し、おばあ様の男爵邸でお手伝いも出来るからと、自ら伯爵邸を出る事にした。
ワイン作りは恩返しになればと教えた。
前世でワインの輸入に携わったのがきっかけで製造過程も調べ覚えていたから。
葡萄は孤児院にいた頃、勝手に侵入していた荒地に自生していたのだ。
食べながらこれはワインの葡萄だと思っていた。おそらく鳥(フン)にでも運ばれて来たのだろう。
自生できるという事は栽培にも適した土地なのだろうという読み通り育った。
お腹がすいたら勝手に食べていた野イチゴや葡萄はおばあ様の土地だった。おばあ様は知っていたけれど、少しでもお腹が満たされるならと黙認していたらしい。
おばあ様は小さな農場も経営していて、そこで取れた野菜も孤児院に寄付していた。
寄付していたからこそ痩せ細った私を見てショックを受けたそうだ。
荒地はレイモンド様からの融資で私が買い取って、葡萄畑にした。
クランセン伯爵にレイモンド様から融資を受けるよう頼んだのも私。プレゼン資料は私が作ったから自信があった。
伯爵領はこれといった特産品もなく、他の領地から比べれば貧しい。土地や子供を捨て、首都や他の領地へ出ていく者もいる。
これも恩返しだけれど、自分の為でもある。
レイモンド様が私と約束してくださったのは学生の間だけだ。
その後は自分でなんとかしなくてはならない。
働き口がないなら自分で経営するしかない。
だけど信頼も信用もない女にはどうすることも出来ないから、クランセン伯爵とレイモンド様を利用し、伯爵との共同経営にしてもらった。
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