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   リリアン視点

 おばあ様の持っていた荒地は私が畑として買い取ったが、首都の庭付き一軒家を買えるほどでは無い。使用人を増やす事などとてもじゃないが出来ませんよ。すべてレイモンド様のおかげなのに。
「あの、土地を売ったお金ならおばあ様の預金に入っているはずですよ。」
「その件ですが。」
 トゥーイさんが遮る、
「大奥様が生前にわたくしに頼まれたのですが、土地を売ったお金は長く仕えてくれた執事のセバスさんとメイドのステラさんの退職金を前払いしたいとの事でわたくしが手続きいたしました。
 残りは孤児院に寄付したいとのご意向もそのように計らいいたしました。」
「なんですって!」
 そんなにお怒りになられても、おばあ様のお金なんだからどうしようとおばあ様の勝手だよ。
 結果、相続できる財産は領地にある小さな農場と、以前住んでいた小さな家と生活の為の貯金が少し。
「この邸は?この邸は私の物にならないっていうの?」
「さようでございます。」
 トゥーイさんが静かに答える。
「仕方ないよお母様、あきらめなよ?」
 ジルベルトがなだめる。
「あんた!」
 私を指差し、  
「あんたは今まで世話になったんだから、この邸よこしなさいよ!」
 それは無茶じゃない?
 私の物だけど借りてるようなもんだし。
 トゥーイさんが困った顔をしている。
 それに叔母様に世話になった覚えは無い。
 そこへメイドがあわてて客間のドアを開けた。
「トゥーイさん、助けて下さい!お嬢様のお部屋が大変なんです!」
 何事かと皆で二階に上がると叔母様の二人の娘が私のドレスや宝石を勝手に引っ張り出して着ていた。
 ベッドやドレッサーも荒らされている。強盗?
「あっ、お母様!見てこれ~マダムサフランのドレスよ!」
「宝石もこんなに沢山!これみんな自由に使っていいなんて夢みたい!」
 いや、人のもの勝手にって夢でもありえないでしょ。
 ドレスは丈が足りないしぱっつんぱっつんだし。
「…叔母様。どういう事ですか?」
「どうもこうも無いわよ。この邸は母の物であんたの持ってる物は全部私達の物になるはずだったんだから。」
 どうしてそうなる?
 トゥーイさんが低く怒りを込めた口調で、
「あなた方はザカリー侯爵家の恐ろしさをご存知無いようですね。」
 それよりさらに低い声で、
「まったくだ。」
 あきれた様子でいつの間にか背後にレイモンド様が立っていた。
「リリアンが心配で来てみれば、これはどういう事だ?トゥーイ!お前がついていながらこの有り様はなんだ!」
「申し訳ございません!」
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