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    リリアン視点

 もう融資はしてもらったから私が関わっていると知られてもいいか。
「畑では葡萄が育たないようになってるの。
 クラウディア様は連作障害って知ってる?」
「聞いたことあるような気はするけど、農業の事はさっぱり。」
「まあ、知らなくてもいいんだけど、この世界じゃ野菜は毎年同じ場所で同じように取れるよね?」
「それくらいなら私でも知っている常識だ。」
 レイモンド様の知っているこの世界の常識は前世ではありえない。
 この世界では連作障害が無いのだ。
 逆にジャガイモはジャガイモ畑、キャベツはキャベツ畑と決まった場所でしか育たない事に気がついた。
 つまり葡萄畑の無い帝国では葡萄は育たない。
 ではどうして荒地では育ったのか。
 多分、あの荒地は「野菜が育たない」設定の場所。そしてたまたまその野菜に葡萄は含まれなかったという事だろう。
 例のろくでもない神様に感謝しちゃうよ。
「あのおばあ様の荒地は葡萄を育ててもいい土地だったのよ。」
 クラウディア様はまだよくわからないという顔だ。
「…リリアン、クランセン伯爵の共同経営者というのは君だったのか?」
「はい。
 と、いう訳で追加融資をお願いしたいのですが。」
「何が「と、いう訳」なのかわからないが、どれくらいだ。」
「首都の一等地にお店を出せるくらいです。」
「…出せない事はないが。」
「突然の事で資料が手元に無いのですが、近いうちにお見せいたします。
 かいつまんでお話するならば、直営店で販売したいのです。そうする事で流通コストをさげれます。
 お店では料理も出したいです。
 今までは高価で料理にワインなどは使えませんでしたが、安価なクランセンワインならばふんだんに使えます。
 赤ワインで煮込んだビーフシチューやワインビネガーを使ったソースのステーキにサラダ、デザートにはゼリーやシャーベットなど、肉にはワインが合うと発信したいのです。」
 ちょっとがらにもなく熱く語っちゃったかも。
 でももっと稼ぎたい。
 一人でも生きていけるように。
「…あの資料は君が作ったのか?」
「クランセン伯爵がお持ちしたものですか?
 私が作りました。」
 何か考え込んでいる。やはり女が事業に関わるなど気に入らなかったか。打ち明けたのはまだ早かったかな。
「いいだろう。」
「ありがとうございます。」
 良かった。
「楽しそうね。わたくしも応援するわ。」
 クラウディア様がワインをグラスに注ぎ、
「乾杯。」
 少し飲んだだけなのに、今の身体は酒に弱い。
 すぐに眠くなってしまう。
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