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レイモンド視点
ワインを飲んだせいか椅子に座ったままリリアンはうとうとし始めた。
起こそうとするクラウディアを止め、ベッドへ運んだ。
「リリアンは特別な娘だな。」
「今頃お気づきになられましたの?」
なせかクラウディアが自慢気だ。
葡萄の栽培から携わっているという事は、ほとんどはリリアンが進めている事業なのだろう。さらに次の展開まで計画しているとは。
クランセン伯爵と私はまんまと利用されている訳だ。なんと愉快な。
それなりの地位がある男性ならばさぞかし成功しただろうに。
私は今までこの娘の何を見ていたのだろう。
学園での成績が良いのは知っていたが、それだけの可愛らしい娘だと思ってはいなかったか?
身分が低いと馬鹿にしてはいなかったか?
振り返れると恥ずべき態度をとっていたようで気になる。
もっと一人の人として尊重すべきだったのかもしれない。
「リリアンはいったいどこでこんな知識を?」
「…さあ?…図書館?」
歯切れが悪いな。
そう言えばクラウディアも度々突拍子もないアイデアを出してきたな。
そのほとんどは法律に関する事だか、それで父に認められている。
実は私は幼い頃からクラウディアに劣等感を感じていた。
言葉を発すると同じくして文字を覚え、本を読みあさり父に意見した。
父もこの娘は天才だと。
私も優秀だとは言われていたがクラウディアに比べれば凡人だ。
あれが弟でなくて良かった。
平静を装おってはいたがどす黒い感情が常に胸に渦巻いていた。
リリアンに感心を抱いたのも側妃にさせたくないのも、クラウディアに対する対抗心からだったのかもしれない。
「はぁ…むしろかわいいだけの女なら気を揉む事もなかったのに。」
「煩わしいならば手放して下さいませ。」
ニヤニヤと鼻に付く笑い方をする。
「…それよりもかわいいが勝る。」
クラウディアはこんなに表情の豊かな娘ではなかった。
生まれる前から皇太子妃になる事が決まっていたからか、いつも何かに追われているかのように自分を律していた。
笑顔はいつも作られたような微笑で、泣いたり怒ったり慌てる事も無かった。
学園に入り、リリアンと過ごすようになり変わった。これが本来の彼女なのかも知れない。
「クラウディア、リリアンを紹介してくれた礼を言って無かったな。感謝する。」
「後悔してるわ。ただの当て馬でしたのに。」
「当て馬か…本来の役目はメス馬の発情を促すためなのだが、成功したか?」
「最低!」
クッションを投げつけ席を立ち、部屋を出て行こうとしたが、
「お兄様も部屋から出て!」
ぐいぐいと背中を押す。
私に触れる事など一生無いと思っていたのに愉快だ。
妹をやっとかわいいと思えた。
ワインを飲んだせいか椅子に座ったままリリアンはうとうとし始めた。
起こそうとするクラウディアを止め、ベッドへ運んだ。
「リリアンは特別な娘だな。」
「今頃お気づきになられましたの?」
なせかクラウディアが自慢気だ。
葡萄の栽培から携わっているという事は、ほとんどはリリアンが進めている事業なのだろう。さらに次の展開まで計画しているとは。
クランセン伯爵と私はまんまと利用されている訳だ。なんと愉快な。
それなりの地位がある男性ならばさぞかし成功しただろうに。
私は今までこの娘の何を見ていたのだろう。
学園での成績が良いのは知っていたが、それだけの可愛らしい娘だと思ってはいなかったか?
身分が低いと馬鹿にしてはいなかったか?
振り返れると恥ずべき態度をとっていたようで気になる。
もっと一人の人として尊重すべきだったのかもしれない。
「リリアンはいったいどこでこんな知識を?」
「…さあ?…図書館?」
歯切れが悪いな。
そう言えばクラウディアも度々突拍子もないアイデアを出してきたな。
そのほとんどは法律に関する事だか、それで父に認められている。
実は私は幼い頃からクラウディアに劣等感を感じていた。
言葉を発すると同じくして文字を覚え、本を読みあさり父に意見した。
父もこの娘は天才だと。
私も優秀だとは言われていたがクラウディアに比べれば凡人だ。
あれが弟でなくて良かった。
平静を装おってはいたがどす黒い感情が常に胸に渦巻いていた。
リリアンに感心を抱いたのも側妃にさせたくないのも、クラウディアに対する対抗心からだったのかもしれない。
「はぁ…むしろかわいいだけの女なら気を揉む事もなかったのに。」
「煩わしいならば手放して下さいませ。」
ニヤニヤと鼻に付く笑い方をする。
「…それよりもかわいいが勝る。」
クラウディアはこんなに表情の豊かな娘ではなかった。
生まれる前から皇太子妃になる事が決まっていたからか、いつも何かに追われているかのように自分を律していた。
笑顔はいつも作られたような微笑で、泣いたり怒ったり慌てる事も無かった。
学園に入り、リリアンと過ごすようになり変わった。これが本来の彼女なのかも知れない。
「クラウディア、リリアンを紹介してくれた礼を言って無かったな。感謝する。」
「後悔してるわ。ただの当て馬でしたのに。」
「当て馬か…本来の役目はメス馬の発情を促すためなのだが、成功したか?」
「最低!」
クッションを投げつけ席を立ち、部屋を出て行こうとしたが、
「お兄様も部屋から出て!」
ぐいぐいと背中を押す。
私に触れる事など一生無いと思っていたのに愉快だ。
妹をやっとかわいいと思えた。
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