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  リリアン視点

 学園を卒業し、クラウディア様は結婚して私は本格的に事業を展開するようになった。
 葡萄畑での栽培は現地の農民にまかせ養父であるクランセン伯爵に管理してもらい報告を受ける。
 ワイナリーは主にクランセン伯爵の管轄。
 そして販売は私が請け負う。
 ヴィニョーブル一号店はまずまずの出だしだ。
 現在はワインの販売とレストランを一階でしている。
 今後は二階でワインバーと上位貴族向けの個室レストランを始める予定。
 バーは落ち着いてゆっくり楽しめるように会員制にしよう。
 レナード、ミッシェル、フランツは三人ともソムリエっぽく仕上がった。
 実は私はワインの味自体はよくわからないので助かる。
 クランセンワインの他にもヴィンテージの良い輸入品を取り揃えた。これはレイモンド様の輸入事業のお世話になって。
 スタッフもかなり増やした。
 首都の他の都市にも出店予定だから。
 ミッシェルやフランツにはそちらの店を任せられるようになってほしい。
 その他にも相変わらずザカリー侯爵家の仕事もしている。
 侯爵様は宰相のお仕事がお忙しく、レイモンド様も政務官の仕事をなさっている。
 侯爵家の財務管理は侍従長であるヒューイ・セティア子爵が任されている。トゥーイのお父上だ。
「ヒューイさん、申し訳ございません。ご子息のトゥーイさんが辞表をだされたそうですね。」
「ああ、リリアン様はお気になさらず。
 気に入らなければお雇いにならなくても結構ですよ。」
 ヒューイさんはロマンスグレーにモノクルの上品な紳士でいつも優しい。
「気に入らないなんてとんでもない!
 ただ、お給料をいかほどお出ししたらよいのか…。」
 帳簿の整理もしているので、ザカリー家の使用人の給料も把握しているけれど、普通の貴族の使用人の三倍ほどだ。
「あれが望んでお嬢様にお仕えしたのですから、通常の男爵家執事の給料で十分でございますよ。ほほほ。」
 お父上がそう言うんだったらいいか。
 勘当されちゃうんじゃないかと心配してたけど大丈夫そう。
 そんな話をしながら領地からの要望書に目を通していた。
 こちらで処理できるものはして、レイモンド様の意見が必要なものだけを整理してお見せするのだ。
 なんだか玄関ホールのほうが騒がしいみたい。
「ヒューイさん、大変です!あっ…。」
 駆け込んできたメイドが私がいる事に気がつき言葉につまる。
「内々の事のようですので席を外します。」
「あ、違うんです。その…わたくし達も聞いてないおかしな事をおっしゃる方がいらして…。
 その方がおっしゃるにはレイモンド様の婚約者だと…。ヒューイさんは聞いていらっしゃいます?」
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