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   レティシア視点

 レイモンド様があんなにもそっけないなんて。
 小説では侯爵家に預けられる前の描写はあまり詳しく書かれていなかったからよくわからなかったけど、先日のパーティーではわたくしの話などろくに聞いてもいないような返事。
 でもこれからが話の本筋。
 アステローゼ公爵家は養子夫婦が継いで、わたくしは家を出された。
 ボストンバッグ一つでザカリー侯爵家に訪れると、レイモンド様の恋人であるリリアン・シュガー男爵が我が物顔で邸にいた。原作では令嬢だったのに、本人が爵位を持っていた。
 執事は体裁が悪いと思ったらしくすぐにリリアンを下がらせてくれたみたい。
 客間でレイモンド様を待つ。
 どうせ歓迎はされないのはわかっているが、公爵令嬢であるわたくしを追い出す事は出来ない。
 賓客として部屋を与える事になるはず。
 それにしても遅い。
 先ほどザカリー宰相は多忙の為、レイモンド様に任せるとの連絡があった。
 あ、やっと帰ってきたみたい。
「レイモンド様!お待ちしておりましたわ。」
「ああ、ご挨拶申し上げます。」
「あの、あの…わたくし、ご迷惑をおかけしてしまって…。」
「まったくです。
 ヒューイ!急ぎ、離れを令嬢の住まいとして与えるので、用意しなさい。
 アステローゼ公爵令嬢、あくまでも落ち着き先が見つかるまでてます。
 それまで衣食住はお貸しいたします。
 客人として離れにお住まい下さい。
 メイドはどうされますか?
 要りようならばお貸しいたしますが?」
「お、お願いいたします。」
 矢継ぎ早に言いはなつ。
 こんなに冷たいなんて…今だけだとわかっていてもこたえるわ。
 それに本館ではなくて離れ?ちょっと違う。
「あ、あの離れの準備は大変でしょうからお部屋を一つお貸しいただければ…。」
「いいえ、離れに住まい、本館には関与されませんように。用があるならばメイドを使いに出して下さい。」
 何それ?
 取りつく島もないまま離れに案内されてしまった。
 まあまあの内装だわ。
 メイドは二人つけてもらった。
 本当は執事が良かったけど、しょうがないわね。
 まずはこの二人のメイドを手なずけなきゃ。
「どうぞよろしくお願いいたしますわ。」
「なんなりとお申し付けくださいませ。」
 次の日の朝、わたくしは学園へと行かなくてはならない。
「あの…馬車は?」
「え?あ…申し訳ございません。」
 あわてて用意しにいった。
 まあしょうがないわ。
 用意された馬車は使用人が使う馬車。
「どういう事?」
 さっそく始まったわ、使用人達の嫌がらせが。
「あの、侯爵家の家紋付きの馬車はさすがにお貸し出来ません。」
「だから、それはどういう事かと聞いているの。」
「恋人でも婚約者でも無いアステローゼ公爵令嬢がザカリー邸に留まっていると世間に知られればお嬢様の体裁に傷がつきますわ。」
 それが狙いなのに。
「今日のところはこちらでお許し願えませんか?なるべく早くアステローゼ公爵家の馬車をご用意いたしますので。」
 どうしてもザカリー侯爵家の馬車は使わせないつもりね。
 しかたないわ。
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