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リリアン視点
「お嬢様…。」
レイモンド様からのドレスに困惑するメイド達。
「ブティックには…行かれますよね?」
「…やめよう。ドレスならあるし。」
ぱあっとメイド達の顔がほころぶ。
ここ三年近く誰かと付き合うわけでもなくイケメンウォッチングを続ける主を不憫に思っていたのね。
パーティー当日、
「さてと、めいいっぱいキレイにしてメリージェーン!
首都の流行りの髪型は押さえてあるわね?ケイト!」
「「もちろんでございます!」」
メイドも私も意気込みは十分だ。
授与式はお父様だけの出席。
パーティーではお父様にエスコートしてもらい会場に入る。
なんせ主役だから一番最後に一番目立って入場だ。
レイモンド様から贈られたドレスは淡い水色。
初めてもらったドレスに良くにた色だ。
覚えていてくれたのか偶然か。
どちらにしてもレイモンド様が好きな色だ。
お父様もステキに仕上がっている。
もーっ、会場中の女性がトキメクよ!
手を重ねて入場する。
沸き起こるざわめきとため息。
中央まて進み立ち止まりお辞儀をする。
恥ずかしがりやなお父様の挨拶は短めで、
「このような場に招待されたのも見に余る栄誉を与えられたのもすべて我が娘、リリアン・シュガー子爵の功績の賜物です。どうか皆様、我が娘に称賛の拍手を!」
会場が拍手で沸き上がる。
粛々とカーテシーをすると音楽が始まった。
お父様と向き合うが、
「どうやらファーストダンスは譲らなくてはいけないようだね。」
振り向くとレイモンド様がいた。
少しやつれたような気もするけれど、以前と同じく静かに落ち着いた声で、
「よろしければ私と一曲踊って頂けませんか?」
差し出された手にそっと手を重ね、
「喜んで。」
お父様に一礼して踊り出す。
何を話せばよいのか。
それは相手も同じようで。
しばらく沈黙は続く。
先に口を開いたのはレイモンド様のほう。
「ドレスを着てくれたのだね、ありがとう。」
「お礼を言うのはこちらですよ。」
「今日の君もとても綺麗だ。」
「ありがとうございます。」
また沈黙。
もう曲が終わってしまう。
お辞儀をするが、すぐに手を取られた。
こんな事をするのはマナー違反だけれど、
「あっ…すまない。もう一曲…。」
めったに見せないだろう焦った顔。
無言で手を重ねた。
私も、もう少し一緒にいたかったから。
「君にはもう私が買い与える物は不要だとわかっていたが、私にはこんな事しか出来ないのだ。
最後に君と踊った後に見た君は自分で買ったドレスに私の好みには合わせない髪とメイクをしていた。
そんな君は美しかった。
息を飲むほどに。
凛として意思の強さを感じさせるそんな美しさだった。
私は君に不必要どころか邪魔な存在になってしまった事を悟ったよ。
だからもう身を引こうと、もう忘れてしまおうと。
なのに邸では柱の陰から君が出てくるような気がするし、人混みではいつも君のピンクの髪を探してしまうのだ。
朝まで一緒だったのはたった一度だけだったのに、毎朝隣に君がいない事が切ないのだ。
愚かな私を少しでも哀れに思うなら、これからも私の贈り物は受けとってくれ。
見返りはいらない。
気に入らないものなら捨ててもかまわない。
何か欲しい物はあるか?」
この人は相変わらずね。
不器用で物を与える事でしか愛情表現が出来ないのね。
でもこんなに自分の気持ちを話す人じゃなかった。
「お嬢様…。」
レイモンド様からのドレスに困惑するメイド達。
「ブティックには…行かれますよね?」
「…やめよう。ドレスならあるし。」
ぱあっとメイド達の顔がほころぶ。
ここ三年近く誰かと付き合うわけでもなくイケメンウォッチングを続ける主を不憫に思っていたのね。
パーティー当日、
「さてと、めいいっぱいキレイにしてメリージェーン!
首都の流行りの髪型は押さえてあるわね?ケイト!」
「「もちろんでございます!」」
メイドも私も意気込みは十分だ。
授与式はお父様だけの出席。
パーティーではお父様にエスコートしてもらい会場に入る。
なんせ主役だから一番最後に一番目立って入場だ。
レイモンド様から贈られたドレスは淡い水色。
初めてもらったドレスに良くにた色だ。
覚えていてくれたのか偶然か。
どちらにしてもレイモンド様が好きな色だ。
お父様もステキに仕上がっている。
もーっ、会場中の女性がトキメクよ!
手を重ねて入場する。
沸き起こるざわめきとため息。
中央まて進み立ち止まりお辞儀をする。
恥ずかしがりやなお父様の挨拶は短めで、
「このような場に招待されたのも見に余る栄誉を与えられたのもすべて我が娘、リリアン・シュガー子爵の功績の賜物です。どうか皆様、我が娘に称賛の拍手を!」
会場が拍手で沸き上がる。
粛々とカーテシーをすると音楽が始まった。
お父様と向き合うが、
「どうやらファーストダンスは譲らなくてはいけないようだね。」
振り向くとレイモンド様がいた。
少しやつれたような気もするけれど、以前と同じく静かに落ち着いた声で、
「よろしければ私と一曲踊って頂けませんか?」
差し出された手にそっと手を重ね、
「喜んで。」
お父様に一礼して踊り出す。
何を話せばよいのか。
それは相手も同じようで。
しばらく沈黙は続く。
先に口を開いたのはレイモンド様のほう。
「ドレスを着てくれたのだね、ありがとう。」
「お礼を言うのはこちらですよ。」
「今日の君もとても綺麗だ。」
「ありがとうございます。」
また沈黙。
もう曲が終わってしまう。
お辞儀をするが、すぐに手を取られた。
こんな事をするのはマナー違反だけれど、
「あっ…すまない。もう一曲…。」
めったに見せないだろう焦った顔。
無言で手を重ねた。
私も、もう少し一緒にいたかったから。
「君にはもう私が買い与える物は不要だとわかっていたが、私にはこんな事しか出来ないのだ。
最後に君と踊った後に見た君は自分で買ったドレスに私の好みには合わせない髪とメイクをしていた。
そんな君は美しかった。
息を飲むほどに。
凛として意思の強さを感じさせるそんな美しさだった。
私は君に不必要どころか邪魔な存在になってしまった事を悟ったよ。
だからもう身を引こうと、もう忘れてしまおうと。
なのに邸では柱の陰から君が出てくるような気がするし、人混みではいつも君のピンクの髪を探してしまうのだ。
朝まで一緒だったのはたった一度だけだったのに、毎朝隣に君がいない事が切ないのだ。
愚かな私を少しでも哀れに思うなら、これからも私の贈り物は受けとってくれ。
見返りはいらない。
気に入らないものなら捨ててもかまわない。
何か欲しい物はあるか?」
この人は相変わらずね。
不器用で物を与える事でしか愛情表現が出来ないのね。
でもこんなに自分の気持ちを話す人じゃなかった。
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