姫宮瑠璃

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入学②

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私の入学した●●高校は、11年前までは女子校だった。
学科は、普通科と商業科、保育料、被服科がある。
その為、共学になっても、女子の比率が高い。
私は普通科だが、女子校だった頃の名残がまだ残っているのか、少し女子の人数が多く、私は女子だけのクラスに配属された。
棟も何故か他の共学クラスとは離れていて、保育料と被服科と一緒だ。
つまり、こちらの棟には男子生徒がほとんど居ない。
その所為か、入学当初は普通だったのに、1週間程経つと、スカートの下にジャージを履いてる人や、早弁をする人が出だした。
教室でメイクしたり、髪を巻いてたりするのは、当たり前の光景だ。
完全に女子校のノリだ。
よくこんな女子が多い学校で、お兄ちゃんは教育実習出来たなーと思う。

「はーい。席つけー。」

気怠い感じで、出席簿を持って入って来たのは、このクラスの担任の保科先生だ。
お兄ちゃんに菓子折を持って行くように頼まれた先生が、まさか入学してすぐにお世話になる先生になるとは思ってなかった。
お兄ちゃんに、「私の担任になるって知ってたんでしょう?」と聞いたが、「そんな訳あるか!」と一笑されてしまった。
まあ、個人情報の部類だし、親戚とはいえ、他校の教師に話す内容では無いのは確かなので、半分冗談のつもりで聞いたのだが。
お兄ちゃんが「とてもお世話になった」「挨拶に行かないと」と言っていたから、私はてっきりかなり年上だと思っていたのだが、お兄ちゃんと6歳しか違わない。
起き抜けの様な、二日酔いで怠い様な態度と、シワの目立つワイシャツやジャージでなければ、モテそうな整った顔の先生なのだが。
入学式の日こそ、ピシッとしたスーツでカッコ良く、クラスの子達は色めきだっていたが、3日4日と経つうちに、無精髭そのままだったり、寝癖でアホ毛が立っている状態だったりと、ガラガラと崩れていく現実に、「アレはないわー」と用事が無いのに先生に絡む女子生徒は居なくなった。

「・・・で、入学早々ではあるが、1-2がインフルエンザで学級閉鎖になった。
うちのクラスはまだ休む人はいないが、他のクラスではチラホラ出ている。
気をつけるように。」

通学の電車で、知ってる顔に会わなかったのは、てっきり時間帯が違う電車だからだと思っていたが、それだけでは無い様だ。
受験時にも流行っていたというのに、入学早々罹患してしまった人は可哀想なのか、受験の時かからなくてラッキーというべきなのか。
1-2は共学クラスだから、棟の違うこちらにはウイルスが来ないおかげで、私達の方はかからないのだろうか?
いやいや、電車で一緒になったりするし、関係ないか。

「部活の体験入学は来週末までだ。
入部届のいる人は、担任、もしくは部活の顧問か部長に申し出るように。」

淡々とHRを終えると、保科先生はさっさと退室して行った。
すぐにも1限が始まるから、授業の教室に急いでいるのだろう。

「ねえねえ、日下部くさかべさんは何部に入るか決めた?」

背中をちょんちょんと突かれて振り返ると、後ろの席の栗山さんに、そう聞かれた。

「まだ、決めてないよ。栗山さんは・・・。」
「あ!ユッコ!ユッコは何部に入るか決めた?サッチはもう決めたって!」

栗山さんは、私に聞いておきながら、私の言葉を踏みつけるように、私の前の席の加藤さんに話しかけ出した。
呼ばれて振り向いた加藤さんは、ニヤリと意地悪そうな顔を私に向けながら、私の頭の上で会話をする。

「ハルはどうするの?」
「私は男バスと男バレで迷っててー。」
「で、サッチは?」
「私は男バレ。ちょっと目を付けた人がいるんだよねー。」

サッチと声をかけられた私の隣の席の遠藤さんも、訳ありげな視線を私に向けながら、私の前後の席と会話し出した。
3人は、同じ中学の出身で、元々仲が良いらしい。
私は・・・非常に居辛い。
入学2日目から、何故かイジメ?なのか、絡まれている。
登下校の電車でも、変な視線を送ってきたり、私を見ながらコソコソ話したりしている。
卑屈になるのは性に合わないので、気にしないふりをしているが、早く席替えをして欲しい。

「日下部さん。まだ決まってないなら、放課後、私達と見学に行かない?
私達、バスケ部とバレー部とサッカー部に行く予定なんだけど、連れてってあげても良いわよ?」

栗山さんは、髪の毛を後ろに払いながら、また私に話しかけてきた。
その言い方とニヤついた意地悪そうな態度が、まるで上から目線で、気に食わない。

「ごめんなさい。私、その3つには興味ないから。」

私は、ニッコリと笑顔で断った。
栗山さんの片眉が引きつって、ニヤつき顔のまま固まっている。

「「は?」」

加藤さんと遠藤さんは、何故か「信じられない」というように、声をあげた。
何か問題でもあるのか?
私の事を馬鹿にしているくせに、一緒に行くとでも思っているのだろうか?

「・・・そう。せっかく声をかけてあげたのに。」

「フンッ!」とでも鼻息が聞こえそうに、栗山さんは髪を思いっきり後ろに払い上げた。
あなたは、ですか?

その日は、放課後まで絡まれる事なく、放課後も「せっかく誘ってやったのに、礼儀知らず」だのと離れた所から態と聞こえるように言われたくらいで済んだ。
席くらいしか接点が見当たらないのだが、彼女達は私の何が気にいらないのだろう?
中途半端な嫌がらせと、自分達の下っ端として取り込もうとする行動が、さっぱり分からない。

「栗山さん、何で日下部さんに絡んで来るんだろうね?」

反対隣の席の瀬戸さんが、ドアから出て行く3人を見ながら、そう言った。

「さあ?何が気に入らないのか知らないけど、3人共、私の事を嫌いみたい。」
「3人じゃないよ。
日下部さんを気に入らないのは、栗山さん。」
「え?でも、加藤さんも遠藤さんも、変な態度で接して来るんだけど?」
の機嫌を取ってるだけだよ。
にしたいみたいだからさ。
何でかは知らないけど。」
「奴隷⁈」

『奴隷』かは分からないけど、自分達の下に置きたいのは、うすうすどころかガッツリ分かっている。
まだ入学したばかりでクラスのカーストがハッキリしてない中でも、上の方と格下には何となく分かれている。
たぶん栗山さん達は、トップを目指しているのだ。
かという私は、まだ何処にも定着してないタンポポの綿毛のような物。
だから、気になるし、気に食わないのだろう。
それに・・・。
私は、瀬戸さんに目を向けた。
彼女も、まだ何処にも定着してないが、雰囲気は格下の物ではない。
そんな彼女と私がお弁当を一緒に食べる仲というのも、気に触っているのだろう。
私としては、必然的に仲良くならざるを得ない隣人だったというだけなのだが。

「で、日下部さんは、部活見学に行く?」
「文化部系を見に行こうかな。あの3人にかち合わないように。」

男狙いで男子運動部のマネージャーを目指しているあの3人に「興味ない」と言った手前、体育館やグラウンドに行けば、また煩くなる事だろう。

「じゃあ、私も一緒に行っても良い?」
「うん、良いけど、どこか気になっている部活があるの?」
「んー、ちょっとね。」

ニコッと笑う瀬戸さんの顔は、何かを企んでいる様だ。
まあ、これといってどの部活を見に行くか決めて無かった私は、「まあ、良いか」と、瀬戸さんに付いて行く事にした。








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