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第2話 最適解が通じない人
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翌日も、アリアは王立図書館の扉の前に立っていた。
(……二日続けて来るなんて、我ながら必死ね)
自嘲めいた思いを胸の奥に押し込みながら、扉に手をかける。
重厚な木の扉は、今日もきちんと手入れされているのか、きぃ、と小さな音を立てただけでなめらかに開いた。
朝の図書館は、前日よりもさらに静かだった。
閲覧室にいるのは、仕事前に新聞を読み込んでいる紳士と、教本を抱えた学生が数人。
——集中度68。
——眠気32。
ざわざわした社交界に比べれば、なんと穏やかな数字だろう。
(ここは、わたくしの神経に優しい場所かもしれないわ)
受付の司書と挨拶を交わしながら、アリアは視線だけで司書用カウンターを探した。
昨日の青年の姿を見つけた瞬間、胸の内で数字がぴょこんと跳ねる。
——期待度40。
——警戒度25。
——自覚したくない好奇心53。
(落ち着きなさい、わたくし)
アリアはいつもの「愛され令嬢」の仮面を、そっとかぶり直した。
笑顔は五分咲き。顎を引き、視線は少しだけ下から。
声の高さは、相手が構えない程度に柔らかく。
(最適解は、いつもと同じ。まずは、相手の仕事を尊重して、ささやかな感謝を伝える)
「ユリウス様」
カウンターに近づきながら声をかけると、ユリウスは書類から顔を上げた。
眼鏡の奥の瞳が「あ、昨日の人だ」と言っているような、わずかな驚き。
……なのに、やっぱり数字は浮かばない。
「アリア様。おはようございます。本日もご利用ですか?」
「はい。昨日は、突然お邪魔したにもかかわらず、ご丁寧にご案内くださってありがとうございました。もしご迷惑でなければ、今日も少しだけ、お力をお借りしてもよろしいかしら?」
ふんわりと笑みを添えて言うと、たいていの相手は「光栄です」と、どこか誇らしげな数字を浮かべてくれる。
——承認欲求40↑。
——好感度+10~15。
……のはずなのだが。
「もちろんです。迷惑だなんて、とんでもない。図書館に来てくださるのは、いつでも嬉しいことですから」
ユリウスは、少しだけ口元を緩めただけだった。
頭上には、やっぱり何の数字も浮かんでいない。
(ん?)
好感度が上がったかどうかもわからない。
かと言って、不快にした様子もない。
アリアの中で、いつもの「計算」が空振りしたみたいな、妙な空洞感が生まれる。
「本日は、どのような資料をお探しでしょうか?」
「昨日お借りした古文書の続きも読みたいのですが……もし差し支えなければ、解説書のようなものはございますか? 専門用語が多くて、少し難しくて」
少しだけ「できない自分」を見せる。
これも、相手の庇護欲と親近感をそっと刺激する、アリア流の話法だ。
——庇護欲+15。
——優越感+5。
が、いつもの期待値。
ところが。
「そうですね。確かに、昨日の本は、初めて読むには少し難しいかもしれません」
ユリウスは淡々と認めただけで、そこに「俺が教えてあげよう」的な得意げな空気はひとつも浮かばない。
ただ、少し考えてから、冷静に提案した。
「基礎理論をまとめた入門書があります。少々お待ちいただければ、お持ちしますね」
「……あ、ありがとうございます」
(え? そこは、“よろしければ僕がご説明しましょうか”では?)
思わず計算が狂って、アリアは目を瞬いた。
ユリウスは気づく様子もなく、すっとカウンターの中から出てくる。
「閲覧室でお待ちになりますか? それとも、昨日と同じ特別閲覧室がよろしいでしょうか」
「では、特別閲覧室で……」
言いながら、アリアは内心で「なぜ?」を連発していた。
(おかしいわ。少しくらい、相手の優越感をくすぐれば、それが“距離を縮める”最適解のはずなのに)
もちろん、わざとらしくやりすぎれば逆効果だ。
でも、自分の「ちょっとできない面」を見せるのは、相手に安心してもらうための常套手段。
なのに、この青年は、そこを踏み台にしてこない。
ただ、「必要な本を持ってくる」という最低限かつ最善の役割を、淡々と果たそうとしているだけだった。
(……どう扱えばいいの、この人)
混乱しながらも、アリアは昨日と同じ特別閲覧室の椅子に腰を下ろした。
やがて、扉が控えめな音を立てて開く。
「お待たせしました」
ユリウスは、厚さの違う数冊の本を抱えて入ってきた。
「こちらが、先ほどの古文書の基礎になっている理論書です。専門的な箇所には、僕のほうで栞を挟んでおきました」
「栞を?」
「はい。アリア様が昨日、特に時間をかけて読んでおられた部分に対応する章です。そこだけでも先に目を通していただければ、理解しやすくなると思います」
アリアは、唖然とした。
——観察度?
——気づき力?
——さりげないフォロー値?
何とラベリングしていいのかわからない数字たちが、どっと胸の内で溢れ出す。
(わたくしが、どこでページを止めていたかまで、見ていたの?)
それは決して「天然」などと言って軽く扱えるものではない。
むしろ、計算づくで人を観察している自分よりも、よほど丁寧で誠実な目だ。
「……驚きましたわ。そんなところまで、お気づきだったなんて」
感心を隠さずに言うと、ユリウスは少しだけ首をかしげた。
「ここに来る人が、どの本のどの辺りで手を止めるかは、その人が今、何に悩んでいるかを教えてくれますから。なるべく、読みやすい形にしたくて」
(悩んでいる、か)
アリアは胸の奥がきゅっとなるのを感じた。
ユリウスは、彼女が何に悩んでいるかまでは知らないはずだ。
それでも、「悩み」を前提に接してくる、その姿勢が優しい。
「アリア様が、昨日熱心に読んでおられたのは、心の動きと“見えない糸”に関する章でしたから」
「……」
図星だった。
自分の力のこと。
人の心が糸と数字で見える、この奇妙な感覚。
「もし、知りたいことが本に書かれていなかったら——」
ユリウスは、少しだけ躊躇してから言葉を継いだ。
「それは、それでいいのかもしれません」
「いい……?」
「本は、僕たちの世界を少し広げてくれます。でも、“全部”を教えてくれるわけではないでしょう? 書かれていない答えを、どうするかを考えるのも、大事なことだと思うんです」
アリアは、返す言葉を失った。
数字と理論で世界を埋め尽くそうとしていた自分とは、真逆の考え方だ。
「書かれていない部分」を、むしろ大切にするなんて。
「……あなたは」
気づけば、言葉が零れていた。
「あなたは、何でも数字や理屈に置き換えたりは、しないのですか?」
ユリウスは、少しだけ考え込むような表情を浮かべた。
「できることも、あると思います。たとえば、この図書館の蔵書数とか、貸し出し冊数とか。数字にすれば、便利なことは多いですね」
「えぇ、そうですわね」
「でも、人の気持ちについては——」
そこで言葉を切り、ふっと苦笑する。
「僕は、不器用なので。数字にするより、“その人がどう笑うか”のほうを覚えていたいです」
アリアの心臓が、どくん、と跳ねた。
——心拍数+20。
——混乱度45。
——防御本能60。
瞬時に立ち上がる数字を無視して、アリアはそっと視線を逸らした。
(だめだわ。この人の前では、いつもの“愛される最適解”が機能しない)
会話を誘導しようとしても、ユリウスは意図通りに動かない。
それどころか、ひょい、と軽やかに自分の外側へと歩いていってしまう。
計算が通じない。
だからこそ——やっかいだ。
(でも、だからこそ……)
心のどこかで、「もっと知りたい」という気持ちが膨らんでいく。
「アリア様?」
「あ……いえ。少し、驚いただけですわ。あなたの言葉が新鮮で」
「そうでしたか?」
ユリウスは首をかしげて、ほんの少しだけ笑った。
その笑顔が、また、数字にならないまま胸に刺さる。
アリアは、開きかけていた本をそっと閉じた。
(決めたわ)
この人のことが、気になる。
計算が通じないからこそ、放っておけない。
数字に置き換えられない誤差を、見過ごすことができない性格である以上——。
(最適解の外側も、確かめなくちゃ)
アリアは扇を握りしめながら、小さく息を吸った。
「ユリウス様。ひとつお願いがあるのですが……」
「何でしょう?」
「もし叶うのなら、わたくし、図書館のお手伝いをさせていただけないかしら?」
そうして、彼女の提案は、次の「誤差」を呼び込んでいく。
(……二日続けて来るなんて、我ながら必死ね)
自嘲めいた思いを胸の奥に押し込みながら、扉に手をかける。
重厚な木の扉は、今日もきちんと手入れされているのか、きぃ、と小さな音を立てただけでなめらかに開いた。
朝の図書館は、前日よりもさらに静かだった。
閲覧室にいるのは、仕事前に新聞を読み込んでいる紳士と、教本を抱えた学生が数人。
——集中度68。
——眠気32。
ざわざわした社交界に比べれば、なんと穏やかな数字だろう。
(ここは、わたくしの神経に優しい場所かもしれないわ)
受付の司書と挨拶を交わしながら、アリアは視線だけで司書用カウンターを探した。
昨日の青年の姿を見つけた瞬間、胸の内で数字がぴょこんと跳ねる。
——期待度40。
——警戒度25。
——自覚したくない好奇心53。
(落ち着きなさい、わたくし)
アリアはいつもの「愛され令嬢」の仮面を、そっとかぶり直した。
笑顔は五分咲き。顎を引き、視線は少しだけ下から。
声の高さは、相手が構えない程度に柔らかく。
(最適解は、いつもと同じ。まずは、相手の仕事を尊重して、ささやかな感謝を伝える)
「ユリウス様」
カウンターに近づきながら声をかけると、ユリウスは書類から顔を上げた。
眼鏡の奥の瞳が「あ、昨日の人だ」と言っているような、わずかな驚き。
……なのに、やっぱり数字は浮かばない。
「アリア様。おはようございます。本日もご利用ですか?」
「はい。昨日は、突然お邪魔したにもかかわらず、ご丁寧にご案内くださってありがとうございました。もしご迷惑でなければ、今日も少しだけ、お力をお借りしてもよろしいかしら?」
ふんわりと笑みを添えて言うと、たいていの相手は「光栄です」と、どこか誇らしげな数字を浮かべてくれる。
——承認欲求40↑。
——好感度+10~15。
……のはずなのだが。
「もちろんです。迷惑だなんて、とんでもない。図書館に来てくださるのは、いつでも嬉しいことですから」
ユリウスは、少しだけ口元を緩めただけだった。
頭上には、やっぱり何の数字も浮かんでいない。
(ん?)
好感度が上がったかどうかもわからない。
かと言って、不快にした様子もない。
アリアの中で、いつもの「計算」が空振りしたみたいな、妙な空洞感が生まれる。
「本日は、どのような資料をお探しでしょうか?」
「昨日お借りした古文書の続きも読みたいのですが……もし差し支えなければ、解説書のようなものはございますか? 専門用語が多くて、少し難しくて」
少しだけ「できない自分」を見せる。
これも、相手の庇護欲と親近感をそっと刺激する、アリア流の話法だ。
——庇護欲+15。
——優越感+5。
が、いつもの期待値。
ところが。
「そうですね。確かに、昨日の本は、初めて読むには少し難しいかもしれません」
ユリウスは淡々と認めただけで、そこに「俺が教えてあげよう」的な得意げな空気はひとつも浮かばない。
ただ、少し考えてから、冷静に提案した。
「基礎理論をまとめた入門書があります。少々お待ちいただければ、お持ちしますね」
「……あ、ありがとうございます」
(え? そこは、“よろしければ僕がご説明しましょうか”では?)
思わず計算が狂って、アリアは目を瞬いた。
ユリウスは気づく様子もなく、すっとカウンターの中から出てくる。
「閲覧室でお待ちになりますか? それとも、昨日と同じ特別閲覧室がよろしいでしょうか」
「では、特別閲覧室で……」
言いながら、アリアは内心で「なぜ?」を連発していた。
(おかしいわ。少しくらい、相手の優越感をくすぐれば、それが“距離を縮める”最適解のはずなのに)
もちろん、わざとらしくやりすぎれば逆効果だ。
でも、自分の「ちょっとできない面」を見せるのは、相手に安心してもらうための常套手段。
なのに、この青年は、そこを踏み台にしてこない。
ただ、「必要な本を持ってくる」という最低限かつ最善の役割を、淡々と果たそうとしているだけだった。
(……どう扱えばいいの、この人)
混乱しながらも、アリアは昨日と同じ特別閲覧室の椅子に腰を下ろした。
やがて、扉が控えめな音を立てて開く。
「お待たせしました」
ユリウスは、厚さの違う数冊の本を抱えて入ってきた。
「こちらが、先ほどの古文書の基礎になっている理論書です。専門的な箇所には、僕のほうで栞を挟んでおきました」
「栞を?」
「はい。アリア様が昨日、特に時間をかけて読んでおられた部分に対応する章です。そこだけでも先に目を通していただければ、理解しやすくなると思います」
アリアは、唖然とした。
——観察度?
——気づき力?
——さりげないフォロー値?
何とラベリングしていいのかわからない数字たちが、どっと胸の内で溢れ出す。
(わたくしが、どこでページを止めていたかまで、見ていたの?)
それは決して「天然」などと言って軽く扱えるものではない。
むしろ、計算づくで人を観察している自分よりも、よほど丁寧で誠実な目だ。
「……驚きましたわ。そんなところまで、お気づきだったなんて」
感心を隠さずに言うと、ユリウスは少しだけ首をかしげた。
「ここに来る人が、どの本のどの辺りで手を止めるかは、その人が今、何に悩んでいるかを教えてくれますから。なるべく、読みやすい形にしたくて」
(悩んでいる、か)
アリアは胸の奥がきゅっとなるのを感じた。
ユリウスは、彼女が何に悩んでいるかまでは知らないはずだ。
それでも、「悩み」を前提に接してくる、その姿勢が優しい。
「アリア様が、昨日熱心に読んでおられたのは、心の動きと“見えない糸”に関する章でしたから」
「……」
図星だった。
自分の力のこと。
人の心が糸と数字で見える、この奇妙な感覚。
「もし、知りたいことが本に書かれていなかったら——」
ユリウスは、少しだけ躊躇してから言葉を継いだ。
「それは、それでいいのかもしれません」
「いい……?」
「本は、僕たちの世界を少し広げてくれます。でも、“全部”を教えてくれるわけではないでしょう? 書かれていない答えを、どうするかを考えるのも、大事なことだと思うんです」
アリアは、返す言葉を失った。
数字と理論で世界を埋め尽くそうとしていた自分とは、真逆の考え方だ。
「書かれていない部分」を、むしろ大切にするなんて。
「……あなたは」
気づけば、言葉が零れていた。
「あなたは、何でも数字や理屈に置き換えたりは、しないのですか?」
ユリウスは、少しだけ考え込むような表情を浮かべた。
「できることも、あると思います。たとえば、この図書館の蔵書数とか、貸し出し冊数とか。数字にすれば、便利なことは多いですね」
「えぇ、そうですわね」
「でも、人の気持ちについては——」
そこで言葉を切り、ふっと苦笑する。
「僕は、不器用なので。数字にするより、“その人がどう笑うか”のほうを覚えていたいです」
アリアの心臓が、どくん、と跳ねた。
——心拍数+20。
——混乱度45。
——防御本能60。
瞬時に立ち上がる数字を無視して、アリアはそっと視線を逸らした。
(だめだわ。この人の前では、いつもの“愛される最適解”が機能しない)
会話を誘導しようとしても、ユリウスは意図通りに動かない。
それどころか、ひょい、と軽やかに自分の外側へと歩いていってしまう。
計算が通じない。
だからこそ——やっかいだ。
(でも、だからこそ……)
心のどこかで、「もっと知りたい」という気持ちが膨らんでいく。
「アリア様?」
「あ……いえ。少し、驚いただけですわ。あなたの言葉が新鮮で」
「そうでしたか?」
ユリウスは首をかしげて、ほんの少しだけ笑った。
その笑顔が、また、数字にならないまま胸に刺さる。
アリアは、開きかけていた本をそっと閉じた。
(決めたわ)
この人のことが、気になる。
計算が通じないからこそ、放っておけない。
数字に置き換えられない誤差を、見過ごすことができない性格である以上——。
(最適解の外側も、確かめなくちゃ)
アリアは扇を握りしめながら、小さく息を吸った。
「ユリウス様。ひとつお願いがあるのですが……」
「何でしょう?」
「もし叶うのなら、わたくし、図書館のお手伝いをさせていただけないかしら?」
そうして、彼女の提案は、次の「誤差」を呼び込んでいく。
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