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第三章 時間を忘れる塔
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時計台は、王宮の端っこでひっそり背伸びをしている。
石段は外気をそのまま飲み込んで冷たく、足裏から小さな冬が伝う。
彼女は手すりに指を添え、ひと段ごとに白い息を置いていった。頭上では歯車がゆっくり噛み合い、粉砂糖みたいな埃が光の筋に舞う。月はここから見てもやっぱりそこにいて、時間が、少しだけ、ほどけていく。
踊り場に腰をおろす。
膝に頬をのせると、石の冷たさがちょうどいい。考えごとを眠らせておく敷布団みたいに。
朝、礼拝堂で小さなことがあった――誰かが「祈りの言葉はみんなと同じがいいね」と言ったのだ。責める響きではまったくなかった。むしろやさしい心配。
(わたしは、だいじょうぶ)
彼女は誰も責めない。代わりに、ここで気持ちを仕分けする。忘れていいもの、持って帰るもの。胸の神さまに、小声で相談する。
「すこしだけ、ここにいるね」
塔は頷きもしないけれど、風の通り道が少し広がった気がした。
⸻
礼拝堂では、彼が祭壇の銀の燭台を磨いていた。布を滑らせるたびに、尖った光が生まれては消える。
(今日は、塔)
思わなくてもわかった。温室に行く前の、彼女の寄り道の気配。鐘の綱に触れて“呼ばれた”感覚――理屈はなくても、届くものは届く。
彼は鍵束から、細長い一本を抜いた。
“星の梯子”。彼女がそう名づけた鍵。
掌で温度を確かめ、からん、と小さく鳴らしてポケットに落とす。管理人の巡回という名目は、今日もいくらでも用意できる。
外に出ると、月光が石畳の境界に淡い線を引いていた。
彼はその線を丁寧にまたぎ、塔の扉へ向かう。鍵穴に“星の梯子”を差し込み、ひと呼吸置いてから回した。金属の噛み合う音は、礼拝堂とは違う種類の正直さを持っている。
石段をのぼる。
一段ごとに過去の自分が置いていった手順が剥がれていくみたいだ、とふと思う。
彼が覚えているのは、式次第と、正しい角度と、決められた数の鐘の鳴らし方。
(でも今日は、決められていないものを、迎えに行く)
踊り場に出ると、彼女がいた。
膝を抱え、頬をのせ、目は開いているのに、どこか遠くのやさしいものを見ている顔。
「……こんにちは」
彼は温室で覚えた半音で言った。
彼女が顔を上げる。
「管理人さん」
「連れ戻しに来ました」
言ってみると、少し照れくさい。命令ではなくて、お願いの形をした言葉になった。
彼女は笑った。塔の風が、笑い声を一段押し上げて運んでいく。
「うん。少し、待ってて。仕分け中」
彼は彼女の隣に腰を下ろした。冷たい石が背中に抜けて、頭の中の雑音が薄くなる。歯車の音は、遠い雨に似ている。
「仕分けは、手伝えますか」
「ううん。見るだけ、で十分」
彼女は膝の上で空の箱をいくつも並べるような手つきをして、ひとつひとつ目に見えないものをそっと入れていく。
「これは、今日の“気をつけてね”。やさしい心配だけど、重さは半分置いていくね」
「半分」
「うん。全部持って帰ると、温室の子たちが窮屈になるから」
「……わかります」
彼は短く言って、歯車を見上げた。
(僕も、半分置いていけるだろうか)
期待のかたまりを。いい人であるための手順を。
彼女が指先で踊り場の石をなぞる。
「ねえ、管理人さん。塔の音、好き?」
「歯車の」
「うん。時間を忘れさせる音がする。忘れていいと、教えてくれる」
「忘れたら、困る人もいます」
「うん。だから、忘れたことを覚えておくの」
彼女の言い方は、やっぱり少し不思議で、でもよくわかる。
彼は息を吸い、素朴な側の声を出す。
「……僕も、ときどき、忘れたいです」
彼女は顔を向けた。
「なにを?」
「決められた“よい”の形を。誰かの祈り方に、僕が合わせないといけない気がするのを」
口にすると、胸の奥の灯りがゆっくり広がる。言葉は、出してみると、案外静かだ。
彼女は否定も肯定もしないで、ああ、と、とてもやさしく言った。
「じゃあ、半分置いていこう。…それから、半分は、温室に持っていって、土に混ぜよ?」
「土に」
「うん。重いものは、大きなところで軽くなるから。根っこが飲み込みやすくなるように」
彼は小さく笑った。彼女の比喩は、礼拝堂のどの説教よりも、自分に届く。
「僕は、君に、会いたかったです」
気づけば、いちばん短い本音が口をついた。彼は続けない。続けるとどこかが崩れてしまうから。
彼女は目を瞬かせ、頬をほのかに上気させて、小さく頷いた。
「わたしも」
鐘の縄が踊り場の隅を通っている。手入れされた麻の肌が、まっすぐ下へのびている。
彼は立ち上がり、縄に軽く触れた。
「点検を、してもいいですか」
「うん」
管理人の点検は、彼の逃げ道でもあり、戻り道でもある。
彼は彼女の手を見た。
「いっしょに」
差し出した手に、彼女がそっと重ねる。二人で縄を持つと、麻のざらりが掌に分け合われた。
ほんの少しだけ、引く。
鐘は、ひとつ。
塔の中で丸い音が生まれて、ゆっくり広がっていく。礼拝堂まで届くほどではない、塔の内緒の合図。
彼女の肩から、見えない何かがするするとほどけた。
「呼ばれてるみたい」
「呼びました」
彼は言った。これは点検で、同時に約束だ。
音が消えるまで、二人は縄に手を添えたまま立っていた。
彼女が手を離し、指先を見つめる。麻の小さな跡が白く残る。
「帰ろうか」
彼が言うと、彼女は頷き、立ち上がった。
「うん。…ね、管理人さん」
「はい」
「塔で忘れたこと、覚えててくれて、ありがとう」
「覚えてましたか」
「うん。管理人さんが、覚えていてくれるなら、わたしは忘れてもだいじょうぶ」
降りる階段は、のぼるときよりも短い。不思議だけれど、塔ではよくあることだ。
踊り場の冷たさが背中から離れ、代わりに懐に小さな温度が生まれる。彼女がマフラーを直す仕草に合わせて、彼は自分のコートの襟を上げた。
扉を開けると、外の空気が二人の頬に触れた。
月光は昼の顔をしながら、まだそこにいる。王国の風の匂いと、遠い礼拝堂の蝋の匂いが混じった。
「温室、寄っていく?」
彼女が聞く。
「もちろん」
彼は鍵束を確かめる。金属の重さはいつも通りなのに、不思議と足取りが軽い。
石畳を歩きながら、彼女がぽつりと言う。
「わたしね。祈りって“救われますように”って言うときもあるけど、“だいじょうぶだよ”って思い出すために言うときもあるの」
「思い出すため」
「うん。誰かの祈り方に合わせるのも、やさしいときがあるけど。自分の胸の神さまの言い方を、なくしたくない」
「……なくさなくて、いいと思います」
彼は素朴に言った。
「ありがとう」
彼女は笑って、歩幅を半歩だけ広げる。彼は自然とその歩幅に合わせた。
温室の前で足を止める。
ガラスの向こうに、名札が揺れている。“鐘のしずく”がちいさく踊った。
彼は扉の鍵を回しながら、横目で彼女を見る。彼女は扉に掌を当て、内側の温度をたしかめるいつもの所作。
中に入ると、土の匂いが二人の言葉をやわらかく受け止めた。
「ただいま」
彼女が言う。
「おかえりなさい」
彼は言ってから、少しだけ照れ笑いをした。言葉が家みたいに感じられるのは、ここだけだ。
二人でじょうろを満たし、いつもの順番で水を分ける。
“朝の涙”は葉から。“ことり”は根元へ。“鐘のしずく”は、ほんの少し多めに。
彼女が名札の空いた一本を取り出した。
「塔の踊り場で、半分置いてきたから」
書かれた文字は、素直でまっすぐ。
〈忘れていいもの〉
「忘れていい、って書いておくと、ほんとうに忘れていい気がするの」
「名付けると、力が出ますから」
「うん。鍵も、名付けると安心してた」
彼女が彼を見る。彼は鍵束を持ち上げ、一番よく擦れた一本を親指でなぞった。
“帰っておいで”。
その言葉は、さっき鐘が残した余韻と同じ場所で静かに光る。
作業を終え、二人でベンチに腰を下ろした。ガラス越しの月が、薄く笑っている。
「ねえ、管理人さん」
「はい」
「祭の日も、いっしょにここに来れる?」
彼は一拍だけ置き、素朴に答えた。
「来ます。…来たいです」
「よかった」
彼女は嬉しそうに息を吸い、胸の前で小さく指を組む。
「おはよう、胸のなかの神さま」
朝の始まりに言う言葉を、今は小さな声で。
彼は耳を澄ませる。その声が、彼の中のまだ名前のない灯りに水をやる音と重なる。
外は冷たい。月はまだいる。
でも温室の中には、忘れていいものと、持って帰るものと、半分こにした本音がある。
二人で分け合った鐘の跡が、掌にうっすら残っている。
それで十分、今日の続きに間に合う気がした。
石段は外気をそのまま飲み込んで冷たく、足裏から小さな冬が伝う。
彼女は手すりに指を添え、ひと段ごとに白い息を置いていった。頭上では歯車がゆっくり噛み合い、粉砂糖みたいな埃が光の筋に舞う。月はここから見てもやっぱりそこにいて、時間が、少しだけ、ほどけていく。
踊り場に腰をおろす。
膝に頬をのせると、石の冷たさがちょうどいい。考えごとを眠らせておく敷布団みたいに。
朝、礼拝堂で小さなことがあった――誰かが「祈りの言葉はみんなと同じがいいね」と言ったのだ。責める響きではまったくなかった。むしろやさしい心配。
(わたしは、だいじょうぶ)
彼女は誰も責めない。代わりに、ここで気持ちを仕分けする。忘れていいもの、持って帰るもの。胸の神さまに、小声で相談する。
「すこしだけ、ここにいるね」
塔は頷きもしないけれど、風の通り道が少し広がった気がした。
⸻
礼拝堂では、彼が祭壇の銀の燭台を磨いていた。布を滑らせるたびに、尖った光が生まれては消える。
(今日は、塔)
思わなくてもわかった。温室に行く前の、彼女の寄り道の気配。鐘の綱に触れて“呼ばれた”感覚――理屈はなくても、届くものは届く。
彼は鍵束から、細長い一本を抜いた。
“星の梯子”。彼女がそう名づけた鍵。
掌で温度を確かめ、からん、と小さく鳴らしてポケットに落とす。管理人の巡回という名目は、今日もいくらでも用意できる。
外に出ると、月光が石畳の境界に淡い線を引いていた。
彼はその線を丁寧にまたぎ、塔の扉へ向かう。鍵穴に“星の梯子”を差し込み、ひと呼吸置いてから回した。金属の噛み合う音は、礼拝堂とは違う種類の正直さを持っている。
石段をのぼる。
一段ごとに過去の自分が置いていった手順が剥がれていくみたいだ、とふと思う。
彼が覚えているのは、式次第と、正しい角度と、決められた数の鐘の鳴らし方。
(でも今日は、決められていないものを、迎えに行く)
踊り場に出ると、彼女がいた。
膝を抱え、頬をのせ、目は開いているのに、どこか遠くのやさしいものを見ている顔。
「……こんにちは」
彼は温室で覚えた半音で言った。
彼女が顔を上げる。
「管理人さん」
「連れ戻しに来ました」
言ってみると、少し照れくさい。命令ではなくて、お願いの形をした言葉になった。
彼女は笑った。塔の風が、笑い声を一段押し上げて運んでいく。
「うん。少し、待ってて。仕分け中」
彼は彼女の隣に腰を下ろした。冷たい石が背中に抜けて、頭の中の雑音が薄くなる。歯車の音は、遠い雨に似ている。
「仕分けは、手伝えますか」
「ううん。見るだけ、で十分」
彼女は膝の上で空の箱をいくつも並べるような手つきをして、ひとつひとつ目に見えないものをそっと入れていく。
「これは、今日の“気をつけてね”。やさしい心配だけど、重さは半分置いていくね」
「半分」
「うん。全部持って帰ると、温室の子たちが窮屈になるから」
「……わかります」
彼は短く言って、歯車を見上げた。
(僕も、半分置いていけるだろうか)
期待のかたまりを。いい人であるための手順を。
彼女が指先で踊り場の石をなぞる。
「ねえ、管理人さん。塔の音、好き?」
「歯車の」
「うん。時間を忘れさせる音がする。忘れていいと、教えてくれる」
「忘れたら、困る人もいます」
「うん。だから、忘れたことを覚えておくの」
彼女の言い方は、やっぱり少し不思議で、でもよくわかる。
彼は息を吸い、素朴な側の声を出す。
「……僕も、ときどき、忘れたいです」
彼女は顔を向けた。
「なにを?」
「決められた“よい”の形を。誰かの祈り方に、僕が合わせないといけない気がするのを」
口にすると、胸の奥の灯りがゆっくり広がる。言葉は、出してみると、案外静かだ。
彼女は否定も肯定もしないで、ああ、と、とてもやさしく言った。
「じゃあ、半分置いていこう。…それから、半分は、温室に持っていって、土に混ぜよ?」
「土に」
「うん。重いものは、大きなところで軽くなるから。根っこが飲み込みやすくなるように」
彼は小さく笑った。彼女の比喩は、礼拝堂のどの説教よりも、自分に届く。
「僕は、君に、会いたかったです」
気づけば、いちばん短い本音が口をついた。彼は続けない。続けるとどこかが崩れてしまうから。
彼女は目を瞬かせ、頬をほのかに上気させて、小さく頷いた。
「わたしも」
鐘の縄が踊り場の隅を通っている。手入れされた麻の肌が、まっすぐ下へのびている。
彼は立ち上がり、縄に軽く触れた。
「点検を、してもいいですか」
「うん」
管理人の点検は、彼の逃げ道でもあり、戻り道でもある。
彼は彼女の手を見た。
「いっしょに」
差し出した手に、彼女がそっと重ねる。二人で縄を持つと、麻のざらりが掌に分け合われた。
ほんの少しだけ、引く。
鐘は、ひとつ。
塔の中で丸い音が生まれて、ゆっくり広がっていく。礼拝堂まで届くほどではない、塔の内緒の合図。
彼女の肩から、見えない何かがするするとほどけた。
「呼ばれてるみたい」
「呼びました」
彼は言った。これは点検で、同時に約束だ。
音が消えるまで、二人は縄に手を添えたまま立っていた。
彼女が手を離し、指先を見つめる。麻の小さな跡が白く残る。
「帰ろうか」
彼が言うと、彼女は頷き、立ち上がった。
「うん。…ね、管理人さん」
「はい」
「塔で忘れたこと、覚えててくれて、ありがとう」
「覚えてましたか」
「うん。管理人さんが、覚えていてくれるなら、わたしは忘れてもだいじょうぶ」
降りる階段は、のぼるときよりも短い。不思議だけれど、塔ではよくあることだ。
踊り場の冷たさが背中から離れ、代わりに懐に小さな温度が生まれる。彼女がマフラーを直す仕草に合わせて、彼は自分のコートの襟を上げた。
扉を開けると、外の空気が二人の頬に触れた。
月光は昼の顔をしながら、まだそこにいる。王国の風の匂いと、遠い礼拝堂の蝋の匂いが混じった。
「温室、寄っていく?」
彼女が聞く。
「もちろん」
彼は鍵束を確かめる。金属の重さはいつも通りなのに、不思議と足取りが軽い。
石畳を歩きながら、彼女がぽつりと言う。
「わたしね。祈りって“救われますように”って言うときもあるけど、“だいじょうぶだよ”って思い出すために言うときもあるの」
「思い出すため」
「うん。誰かの祈り方に合わせるのも、やさしいときがあるけど。自分の胸の神さまの言い方を、なくしたくない」
「……なくさなくて、いいと思います」
彼は素朴に言った。
「ありがとう」
彼女は笑って、歩幅を半歩だけ広げる。彼は自然とその歩幅に合わせた。
温室の前で足を止める。
ガラスの向こうに、名札が揺れている。“鐘のしずく”がちいさく踊った。
彼は扉の鍵を回しながら、横目で彼女を見る。彼女は扉に掌を当て、内側の温度をたしかめるいつもの所作。
中に入ると、土の匂いが二人の言葉をやわらかく受け止めた。
「ただいま」
彼女が言う。
「おかえりなさい」
彼は言ってから、少しだけ照れ笑いをした。言葉が家みたいに感じられるのは、ここだけだ。
二人でじょうろを満たし、いつもの順番で水を分ける。
“朝の涙”は葉から。“ことり”は根元へ。“鐘のしずく”は、ほんの少し多めに。
彼女が名札の空いた一本を取り出した。
「塔の踊り場で、半分置いてきたから」
書かれた文字は、素直でまっすぐ。
〈忘れていいもの〉
「忘れていい、って書いておくと、ほんとうに忘れていい気がするの」
「名付けると、力が出ますから」
「うん。鍵も、名付けると安心してた」
彼女が彼を見る。彼は鍵束を持ち上げ、一番よく擦れた一本を親指でなぞった。
“帰っておいで”。
その言葉は、さっき鐘が残した余韻と同じ場所で静かに光る。
作業を終え、二人でベンチに腰を下ろした。ガラス越しの月が、薄く笑っている。
「ねえ、管理人さん」
「はい」
「祭の日も、いっしょにここに来れる?」
彼は一拍だけ置き、素朴に答えた。
「来ます。…来たいです」
「よかった」
彼女は嬉しそうに息を吸い、胸の前で小さく指を組む。
「おはよう、胸のなかの神さま」
朝の始まりに言う言葉を、今は小さな声で。
彼は耳を澄ませる。その声が、彼の中のまだ名前のない灯りに水をやる音と重なる。
外は冷たい。月はまだいる。
でも温室の中には、忘れていいものと、持って帰るものと、半分こにした本音がある。
二人で分け合った鐘の跡が、掌にうっすら残っている。
それで十分、今日の続きに間に合う気がした。
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