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第13話 星市の結果と、灯りを分け合う家族
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星市の翌朝。
王都支店の空気には、まだ昨日の熱気が少しだけ残っていた。
星見の広場には、人波の代わりに、
空っぽになった箱と、減りかけのPOPだけが残っている。
「……終わったんだなあ」
ミラは、片づけ用のかごを抱えながら、
棚の前でしみじみと呟いた。
“誰かといっしょ”側も、“わたしへ”側も、
前日までぎゅうぎゅうに詰まっていた商品が、すっかり減っている。
特に、“生き延びた”と“寄りかかりたい日”のPOPの前は、
棚板の木目が見えてしまうほど、空きが目立っていた。
(数字にしたら、きっと全体から見たら小さなものかもしれないけど)
それでも、
昨日ベンチから見ていた「顔」が、全部ここに残っている気がした。
「ミラ」
背後から呼ばれて振り向くと、
リオンが帳簿の束を片手に立っていた。
「本部から連絡が入った。
星市の速報値だ」
「そ、速報……!」
ミラの心臓が跳ねる。
(ついに、結果が……)
「バックヤードに来い。
みんな揃ってから話す」
リオンは、それだけ告げると踵を返した。
ミラは慌てて片づけを切り上げ、
星見の広場をあとにした。
◇
バックヤードの大きなテーブルには、
部門責任者たちがすでに集まっていた。
青果、精肉、惣菜、日用品。
そして、星見の広場担当として、ミラも隅の席に腰を下ろす。
リオンはテーブルの端に立ち、
手元の紙から視線を上げた。
「本部からの速報を伝える」
一瞬、空気がぴんと張りつめる。
「まず、純粋な星市売上――総売上額では、
王都支店は“二位”だった」
ざわ、と小さなどよめきがわき、すぐに静まる。
(……二位)
ミラの胸に、わずかな悔しさがよぎる。
けれど、リオンの声は揺れなかった。
「一位は、本店。
ノエルの店だ」
「やっぱり兄さまかあ……」
惣菜担当が、どこか納得顔で肩をすくめる。
ノエル――陽気でイベント好きの兄は、
星市のたびに派手な企画を仕込んでくることで有名だ。
「ただし」
リオンは、紙を持つ指先に、ほんの少しだけ力を込めた。
「客単価の伸長率、リピーター率、星市期間中の新規客登録数。
それらを総合して算出される“星灯指標”では――」
視線が、一瞬だけミラのほうをかすめる。
「王都支店が“一位”だった」
テーブルのあちこちから、わっと声が上がる。
「やった!」
「うそ、マジで?」
「“星灯指標”って、あの……?」
「本部が最近作った、新しい評価軸だ」
カイが補足するように口を挟む。
「“売上だけでなく、灯りの届き方も測る”っていうやつですね。
簡単に言うと、“この店にまた来たいか”の総合点です」
ミラは、思わず両手を握りしめた。
(“また来たいか”)
その指標で一位になれた。
星見の広場の「おつかれさま棚」も、
きっとどこかで役に立てたのだと思うと、胸がじんと熱くなる。
「そして、もう一つ」
リオンは、新しい紙を取り出した。
「本部から、“特別賞”が届いた」
「特別賞?」
誰かが聞き返す。
「“星灯バザール・星見賞”。
“顔の見える灯り”を実現した売場に贈られる賞だ」
ミラの心臓が、また跳ねた。
「今年は王都支店――
“星見の広場とおつかれさま棚”に対して、授与される」
視線が、一斉にミラへ向けられる。
「~~っ」
何か言おうとしても、言葉にならなかった。
「ミラさんじゃん!」
「棚精、おめでとう!」
「ほら、あの“来てもいい”の看板から入ってくる人、多かったもんね」
次々と飛んでくる言葉に、
耳の奥がじんわり熱くなる。
「……あの、その。わたしひとりの力じゃなくて」
どうにか絞り出した言葉は、
いつものように控えめなものだった。
「みなさんが“来てもいい”って空気を作ってくれたからで」
「それを言い出したらキリがない」
リオンが、静かに遮った。
「これは、王都支店全体の結果だ。
そのうえで、“星見の広場と棚精”が、象徴として名前を挙げられただけだ」
「象徴……」
ミラは、胸に手を当てた。
前の店では、一度もそんな呼ばれ方をしたことがなかった。
(“余計なことしないで”って言われてた手が――
今は、“象徴”としてここにいていいって言われてるんだ)
こみ上げてくるものを堪えようとして、
視界がにじむ。
「泣くのは、あとにしろ」
リオンが、さらりと言った。
「これから、もう一仕事ある」
「……もう一仕事?」
「家族会議だ」
その言葉に、空気が一瞬変わる。
「星灯一族の後継レースは、まだ終わっていない。
星市の結果をもとに、父上と兄弟たちが集まる」
リオンの瞳には、
いつもの冷静さと、わずかな闘志が灯っていた。
「王都支店は、“灯りの店”として何を選んだか。
それを、星見賞と一緒に見せに行く」
◇
その日の午後。
星灯一族の本家一室には、
アストレア一族の兄弟たちが顔をそろえていた。
「いやあ~、今年も俺の本店が売上トップ!
やっぱり本店を任されるだけあるよね!」
一番大きな声を上げているのは、陽気な長兄ノエルだ。
空気を一気に明るくするような、
眩しい笑顔。
「売上だけで喜んでいるうちは、まだまだですね、お兄さま」
隣でやんわり釘を刺しているのは、
冷静な次男ユリウス。
「“星灯指標”では、王都支店に抜かれたんでしょう?」
「おいやめろ、そこは触れない優しさってもんが――」
「ノエル兄さま」
柔らかい声が割って入る。
過保護な長女、マリアンヌだ。
「星市の間、従業員さんたちにちゃんと“おつかれさま”は言いましたか?
売上だけ伸ばして、本店の子たちが倒れていたら意味がありませんわよ」
「もちろんもちろん! そこは愛と笑顔でフォローしてるから!」
「……ノエル兄、愛と笑顔では労働時間は短くならない」
のんびりした調子で茶を啜りながら、
四男フェリオがぼそりと言う。
「だから君のところは毎年、星市のあとに欠勤が増えるんだよ……」
「お前までつっこむなフェリオ~!」
わいわいした空気の中、
三男リオンは静かに席についた。
その隣に、ミラも少し緊張しながら座っている。
(和やかなのに、すごい競争心を感じる……)
いつもリオンの口から聞いていた「兄弟」の顔ぶれ。
以前、視察に来た時も優しかった人たち。
こうして揃っているのを見るのは初めてで、
胸の鼓動が少し早くなる。
「揃ったな」
低い声が部屋をおさめた。
頭首オルフェが、ゆっくりと席につく。
「星市の結果は、先ほど伝えた通りだ。
売上一位、ノエル。
星灯指標一位、リオン」
兄弟たちの視線が、一斉にリオンへ向かう。
「さすがリオンだね」
フェリオが、にこにこと笑いながら言う。
「王都って人も多いから大変そうなのに」
「俺なんか、去年と同じことちょっと派手にしただけだしな~」
ノエルが頭をかく。
「“来てもいい”の看板見たときは、びっくりしたけど」
「見たのですか?」
マリアンヌが目を丸くする。
「見た見た。本店でも話題になってたよ。
“星灯バザールが、ついにそんな優しいこと言い出した”って」
ノエルの「そんな」の言い方に、
どこか懐かしさが混じる。
「……まあ、うちの父上は昔、“数字以外の言葉”を店頭に置くのが大嫌いだったからな」
ユリウスが、わずかに口元を緩める。
「それが今や、“来てもいい”とは。
時代というやつですね」
オルフェは、静かに兄弟たちの言葉を聞いていた。
やがて、ミラのほうに視線を移す。
「星見の広場の棚精」
「は、はいっ」
緊張で声が裏返りそうになる。
「星市で、“顔の見える灯り”を作ったのは、
王都支店だけだった」
オルフェは、簡潔にそう言った。
「それを真似るかどうかは、各支店の判断に任せる。
だが、星灯一族の店の選択肢として、
“こういう灯し方”があることは、共有しておきたい」
「“来てもいい”って、書くの?」
フェリオが、興味深そうに身を乗り出す。
「僕の北支店でもやっていいかな。
山のほうから出てくる人たち、けっこう緊張してるから」
「フェリオ、それは良いかもしれませんわね」
マリアンヌが微笑む。
「都心とは違う“来てもいい”が、きっとあるはずですわ」
「おいおい、そうやって王都方式を広げると、
俺の派手さが霞んじゃうだろ~」
ノエルが冗談めかして言うと、
ユリウスがすかさず返す。
「大丈夫です。ノエル兄さまの派手さは、霞みようがありませんから」
「褒めてる? それ褒めてるよな?」
笑いが広がるなか、
ミラは少しだけ肩の力を抜いた。
(店長の家族、
みんな優しくて賑やかだけど)
店のことを真剣に考えているのが伝わってくる。
「……星市の“勝敗”については」
沈黙が戻ったところで、
オルフェがゆっくりと口を開いた。
「例年通り、“今年の結果のひとつ”として扱う」
リオンの肩に、わずかな緊張が走る。
「星灯の次期頭首は、
単年の勝敗だけで決めるつもりはない」
オルフェの視線が、兄弟たちをゆっくりと横断する。
「売上も見る。
指標も見る。
灯りの届き方も見る」
そして、
ほんの一瞬、ミラのほうにも視線が寄り道する。
「“この家の灯りを、どう分け合いたいか”。
それを、あと何年かかけて見ていく」
「……はい」
リオンは、短く答えた。
悔しさも、安堵も、
全部飲み込んだ返事だった。
(“今すぐ決まる”わけじゃないんだ)
ミラは、胸の奥でそっと息をつく。
でも――
(今日の“星見賞”は、
この店の灯りが、ちゃんと見つけてもらえた印なんだ)
それは、
リオンにとっても、自分にとっても、
小さくはない一歩に思えた。
◇
会議が終わり、
兄弟たちは三々五々、部屋をあとにしていった。
「ミラちゃん」
扉の近くで、ノエルがひょいと顔を出す。
「王都支店、また遊びに行っていい?
“来てもいい”って書いてあったからさあ」
「も、もちろんです。来ていただけたら……」
「お、ちゃんと“来てくれてありがとう”って言ってくれそうだ」
ノエルは満足げに笑う。
「じゃ、近いうちに“おつかれさま”言われに行くわ。
本店からのお土産持ってくから、覚悟しててね」
「土産で場所を占拠するのはほどほどにな」
ユリウスが眉をひそめる。
「ミラさん」
今度はマリアンヌが柔らかく近づいてきた。
「星市の間、リオンを支えてくれてありがとう。
あの子は、つい自分を詰めすぎてしまうところがあるから」
「あ……いえ、わたしは、
お店に居させてもらっているだけで」
「“居させてもらっているだけ”なんて、
簡単に言ってはいけませんわ」
マリアンヌは、どこかお姉さんらしい目でミラを見る。
「そこにいてくれる人がいるから、
誰かが“背負いすぎずに済む”のですから」
ミラは、胸がじんとした。
(……居るだけ、でも)
それが、
誰かの「生き延びる」を支えていることがあるのだとしたら。
「またゆっくり、お茶でもしましょうね」
マリアンヌはそう言って、
ひらりと手を振って部屋を出ていった。
◇
夕刻。
王都支店に戻ると、
星見の広場はいつもの静けさを取り戻していた。
星市の装飾は半分ほど片づけられ、
「星市開催!」の看板もすでに外されている。
入口の上に残ったのは、
ただ一行――
『今日がどんな日でも、あなたはここに来ていい。』
その文字だけは、
リオンの判断で残されていた。
(星市が終わっても、
この言葉は残したいって言ってくれた)
ミラは、胸の奥があたたかくなる。
星見の広場のベンチには、
先客がひとり座っていた。
「……約束は守る主義だからな」
星空を見上げる横顔。
制服の襟元をゆるめたリオンだ。
「おつかれさまです」
ミラは、隣に立って会釈した。
「今日も、生き延びましたね」
「そうだな」
リオンは、ゆっくりと立ち上がり、
“おつかれさま棚”の前に歩み寄る。
『今日も、生き延びたあなたへ。
それだけでも、じゅうぶんです』
指先で、その一行をなぞる。
「星市に勝てたかどうかを決めるのは、本当は――」
リオンは、ぽつりと言った。
「兄弟でも、父上でもなく。
ここに来た客の数と、顔のほうだ」
ミラは、自然と微笑んだ。
「……リオン店長」
「なんだ」
「今日も、生き延びたリオン店長へ」
POPを真似るように、
そっと言葉を投げる。
「未来永劫、君にはたくさん働いてもらう予定だ、そのために今日は休め――って、
さっきノエル兄さまが真似してました」
「……あいつ」
リオンが、少し顔をしかめる。
「余計なことを吹き込むなと、あれほど」
「でも」
ミラは、くすりと笑った。
「わたし、ちょっと嬉しかったです。
“未来永劫、働いてほしい”って、
“ここにいていい”って言ってもらえたみたいで」
リオンは、言葉を失ったようにミラを見る。
沈黙が、星見の広場に落ちる。
やがて、
ほんの少しだけ、視線をそらすようにして呟いた。
「……図々しいくらいが、ちょうどいいんじゃないか」
ミラは、目を瞬いた。
「図々しい……?」
「“ここにいたい”と思うなら。
“ここにいていいか”と遠慮するより、
“ここにいる前提で動く”くらいが、ちょうどいい」
リオンは、棚のPOPを一枚、一枚眺めていく。
「俺も、そうする」
静かな声だった。
「次期頭首の座も、
“いていいか”と伺いを立てるんじゃなくて。
“そこに立つ前提で、どう灯りを分けるか”を考える」
“勝ちたい”という言葉が、
少し形を変えているのがわかった。
「だから、ミラ」
「はい」
「君にも、図々しくいてほしい」
その言葉に、
胸がきゅっとなる。
「“ここにいていいですか”じゃなくて。
“ここで、こうしたいです”と、言い続けろ」
「……そんな、図々しく」
「棚精は、それくらいでちょうどいい」
リオンの口元が、わずかに緩む。
「未来永劫、君にはたくさん働いてもらう予定だ。
そのために――」
言葉を切り、
星見の広場の天井を見上げる。
「今日は、休め」
星灯の星空が、ふわりと瞬いた。
ミラは、胸の奥がじんわりあたたかくなるのを感じながら、
目を細める。
「……ありがとうございます。
もっと頑張ります」
「そこだ」
即座に突っ込まれた。
「今の流れは、“頑張ります”じゃなくて
“よく頑張りました”だ」
「う……」
言い返せずに口ごもる。
「“忘れられない棘”があるのは、知っている」
リオンは、穏やかな目でミラを見る。
「その棘ごと、ここで生き延びろ。
数字も、言葉も、顔も抱えながら」
ミラは、ゆっくりと頷いた。
前の店で受け取った「必要ない」という言葉も、
星灯で受け取った「必要だ」という言葉も。
どちらも、消えはしない。
でも――
(どっちを、何度思い出すかは、
自分で選べる)
星市を通して、
ようやくそのことを、身体ごと信じられそうな気がした。
「……じゃあ今日は、“よく頑張りました”って言っても、いいですか?」
「誰にだ」
「わたしに、です」
そう言うと、
リオンは少しだけ目を丸くした。
そして、
星見の広場の星空を見上げながら、静かに言う。
「図々しいくらいが、ちょうどいい」
その言葉に背中を押されながら、
ミラは小さく息を吸い込んだ。
「――今日も、生き延びたミラへ。
よく、ここまで来ました」
ぽつりと、
自分に向かって「おつかれさま」を言う。
星灯バザールの魔灯が、
それに応えるように、ひときわ強く瞬いた。
星市は終わった。
けれど、
顔の見える灯りをともす日々は、
これからも続いていく。
図々しいくらいの「ここにいていい」が、
ミラとリオンのいるこの店で、
静かに、しかし確かに、広がっていくのだった。
王都支店の空気には、まだ昨日の熱気が少しだけ残っていた。
星見の広場には、人波の代わりに、
空っぽになった箱と、減りかけのPOPだけが残っている。
「……終わったんだなあ」
ミラは、片づけ用のかごを抱えながら、
棚の前でしみじみと呟いた。
“誰かといっしょ”側も、“わたしへ”側も、
前日までぎゅうぎゅうに詰まっていた商品が、すっかり減っている。
特に、“生き延びた”と“寄りかかりたい日”のPOPの前は、
棚板の木目が見えてしまうほど、空きが目立っていた。
(数字にしたら、きっと全体から見たら小さなものかもしれないけど)
それでも、
昨日ベンチから見ていた「顔」が、全部ここに残っている気がした。
「ミラ」
背後から呼ばれて振り向くと、
リオンが帳簿の束を片手に立っていた。
「本部から連絡が入った。
星市の速報値だ」
「そ、速報……!」
ミラの心臓が跳ねる。
(ついに、結果が……)
「バックヤードに来い。
みんな揃ってから話す」
リオンは、それだけ告げると踵を返した。
ミラは慌てて片づけを切り上げ、
星見の広場をあとにした。
◇
バックヤードの大きなテーブルには、
部門責任者たちがすでに集まっていた。
青果、精肉、惣菜、日用品。
そして、星見の広場担当として、ミラも隅の席に腰を下ろす。
リオンはテーブルの端に立ち、
手元の紙から視線を上げた。
「本部からの速報を伝える」
一瞬、空気がぴんと張りつめる。
「まず、純粋な星市売上――総売上額では、
王都支店は“二位”だった」
ざわ、と小さなどよめきがわき、すぐに静まる。
(……二位)
ミラの胸に、わずかな悔しさがよぎる。
けれど、リオンの声は揺れなかった。
「一位は、本店。
ノエルの店だ」
「やっぱり兄さまかあ……」
惣菜担当が、どこか納得顔で肩をすくめる。
ノエル――陽気でイベント好きの兄は、
星市のたびに派手な企画を仕込んでくることで有名だ。
「ただし」
リオンは、紙を持つ指先に、ほんの少しだけ力を込めた。
「客単価の伸長率、リピーター率、星市期間中の新規客登録数。
それらを総合して算出される“星灯指標”では――」
視線が、一瞬だけミラのほうをかすめる。
「王都支店が“一位”だった」
テーブルのあちこちから、わっと声が上がる。
「やった!」
「うそ、マジで?」
「“星灯指標”って、あの……?」
「本部が最近作った、新しい評価軸だ」
カイが補足するように口を挟む。
「“売上だけでなく、灯りの届き方も測る”っていうやつですね。
簡単に言うと、“この店にまた来たいか”の総合点です」
ミラは、思わず両手を握りしめた。
(“また来たいか”)
その指標で一位になれた。
星見の広場の「おつかれさま棚」も、
きっとどこかで役に立てたのだと思うと、胸がじんと熱くなる。
「そして、もう一つ」
リオンは、新しい紙を取り出した。
「本部から、“特別賞”が届いた」
「特別賞?」
誰かが聞き返す。
「“星灯バザール・星見賞”。
“顔の見える灯り”を実現した売場に贈られる賞だ」
ミラの心臓が、また跳ねた。
「今年は王都支店――
“星見の広場とおつかれさま棚”に対して、授与される」
視線が、一斉にミラへ向けられる。
「~~っ」
何か言おうとしても、言葉にならなかった。
「ミラさんじゃん!」
「棚精、おめでとう!」
「ほら、あの“来てもいい”の看板から入ってくる人、多かったもんね」
次々と飛んでくる言葉に、
耳の奥がじんわり熱くなる。
「……あの、その。わたしひとりの力じゃなくて」
どうにか絞り出した言葉は、
いつものように控えめなものだった。
「みなさんが“来てもいい”って空気を作ってくれたからで」
「それを言い出したらキリがない」
リオンが、静かに遮った。
「これは、王都支店全体の結果だ。
そのうえで、“星見の広場と棚精”が、象徴として名前を挙げられただけだ」
「象徴……」
ミラは、胸に手を当てた。
前の店では、一度もそんな呼ばれ方をしたことがなかった。
(“余計なことしないで”って言われてた手が――
今は、“象徴”としてここにいていいって言われてるんだ)
こみ上げてくるものを堪えようとして、
視界がにじむ。
「泣くのは、あとにしろ」
リオンが、さらりと言った。
「これから、もう一仕事ある」
「……もう一仕事?」
「家族会議だ」
その言葉に、空気が一瞬変わる。
「星灯一族の後継レースは、まだ終わっていない。
星市の結果をもとに、父上と兄弟たちが集まる」
リオンの瞳には、
いつもの冷静さと、わずかな闘志が灯っていた。
「王都支店は、“灯りの店”として何を選んだか。
それを、星見賞と一緒に見せに行く」
◇
その日の午後。
星灯一族の本家一室には、
アストレア一族の兄弟たちが顔をそろえていた。
「いやあ~、今年も俺の本店が売上トップ!
やっぱり本店を任されるだけあるよね!」
一番大きな声を上げているのは、陽気な長兄ノエルだ。
空気を一気に明るくするような、
眩しい笑顔。
「売上だけで喜んでいるうちは、まだまだですね、お兄さま」
隣でやんわり釘を刺しているのは、
冷静な次男ユリウス。
「“星灯指標”では、王都支店に抜かれたんでしょう?」
「おいやめろ、そこは触れない優しさってもんが――」
「ノエル兄さま」
柔らかい声が割って入る。
過保護な長女、マリアンヌだ。
「星市の間、従業員さんたちにちゃんと“おつかれさま”は言いましたか?
売上だけ伸ばして、本店の子たちが倒れていたら意味がありませんわよ」
「もちろんもちろん! そこは愛と笑顔でフォローしてるから!」
「……ノエル兄、愛と笑顔では労働時間は短くならない」
のんびりした調子で茶を啜りながら、
四男フェリオがぼそりと言う。
「だから君のところは毎年、星市のあとに欠勤が増えるんだよ……」
「お前までつっこむなフェリオ~!」
わいわいした空気の中、
三男リオンは静かに席についた。
その隣に、ミラも少し緊張しながら座っている。
(和やかなのに、すごい競争心を感じる……)
いつもリオンの口から聞いていた「兄弟」の顔ぶれ。
以前、視察に来た時も優しかった人たち。
こうして揃っているのを見るのは初めてで、
胸の鼓動が少し早くなる。
「揃ったな」
低い声が部屋をおさめた。
頭首オルフェが、ゆっくりと席につく。
「星市の結果は、先ほど伝えた通りだ。
売上一位、ノエル。
星灯指標一位、リオン」
兄弟たちの視線が、一斉にリオンへ向かう。
「さすがリオンだね」
フェリオが、にこにこと笑いながら言う。
「王都って人も多いから大変そうなのに」
「俺なんか、去年と同じことちょっと派手にしただけだしな~」
ノエルが頭をかく。
「“来てもいい”の看板見たときは、びっくりしたけど」
「見たのですか?」
マリアンヌが目を丸くする。
「見た見た。本店でも話題になってたよ。
“星灯バザールが、ついにそんな優しいこと言い出した”って」
ノエルの「そんな」の言い方に、
どこか懐かしさが混じる。
「……まあ、うちの父上は昔、“数字以外の言葉”を店頭に置くのが大嫌いだったからな」
ユリウスが、わずかに口元を緩める。
「それが今や、“来てもいい”とは。
時代というやつですね」
オルフェは、静かに兄弟たちの言葉を聞いていた。
やがて、ミラのほうに視線を移す。
「星見の広場の棚精」
「は、はいっ」
緊張で声が裏返りそうになる。
「星市で、“顔の見える灯り”を作ったのは、
王都支店だけだった」
オルフェは、簡潔にそう言った。
「それを真似るかどうかは、各支店の判断に任せる。
だが、星灯一族の店の選択肢として、
“こういう灯し方”があることは、共有しておきたい」
「“来てもいい”って、書くの?」
フェリオが、興味深そうに身を乗り出す。
「僕の北支店でもやっていいかな。
山のほうから出てくる人たち、けっこう緊張してるから」
「フェリオ、それは良いかもしれませんわね」
マリアンヌが微笑む。
「都心とは違う“来てもいい”が、きっとあるはずですわ」
「おいおい、そうやって王都方式を広げると、
俺の派手さが霞んじゃうだろ~」
ノエルが冗談めかして言うと、
ユリウスがすかさず返す。
「大丈夫です。ノエル兄さまの派手さは、霞みようがありませんから」
「褒めてる? それ褒めてるよな?」
笑いが広がるなか、
ミラは少しだけ肩の力を抜いた。
(店長の家族、
みんな優しくて賑やかだけど)
店のことを真剣に考えているのが伝わってくる。
「……星市の“勝敗”については」
沈黙が戻ったところで、
オルフェがゆっくりと口を開いた。
「例年通り、“今年の結果のひとつ”として扱う」
リオンの肩に、わずかな緊張が走る。
「星灯の次期頭首は、
単年の勝敗だけで決めるつもりはない」
オルフェの視線が、兄弟たちをゆっくりと横断する。
「売上も見る。
指標も見る。
灯りの届き方も見る」
そして、
ほんの一瞬、ミラのほうにも視線が寄り道する。
「“この家の灯りを、どう分け合いたいか”。
それを、あと何年かかけて見ていく」
「……はい」
リオンは、短く答えた。
悔しさも、安堵も、
全部飲み込んだ返事だった。
(“今すぐ決まる”わけじゃないんだ)
ミラは、胸の奥でそっと息をつく。
でも――
(今日の“星見賞”は、
この店の灯りが、ちゃんと見つけてもらえた印なんだ)
それは、
リオンにとっても、自分にとっても、
小さくはない一歩に思えた。
◇
会議が終わり、
兄弟たちは三々五々、部屋をあとにしていった。
「ミラちゃん」
扉の近くで、ノエルがひょいと顔を出す。
「王都支店、また遊びに行っていい?
“来てもいい”って書いてあったからさあ」
「も、もちろんです。来ていただけたら……」
「お、ちゃんと“来てくれてありがとう”って言ってくれそうだ」
ノエルは満足げに笑う。
「じゃ、近いうちに“おつかれさま”言われに行くわ。
本店からのお土産持ってくから、覚悟しててね」
「土産で場所を占拠するのはほどほどにな」
ユリウスが眉をひそめる。
「ミラさん」
今度はマリアンヌが柔らかく近づいてきた。
「星市の間、リオンを支えてくれてありがとう。
あの子は、つい自分を詰めすぎてしまうところがあるから」
「あ……いえ、わたしは、
お店に居させてもらっているだけで」
「“居させてもらっているだけ”なんて、
簡単に言ってはいけませんわ」
マリアンヌは、どこかお姉さんらしい目でミラを見る。
「そこにいてくれる人がいるから、
誰かが“背負いすぎずに済む”のですから」
ミラは、胸がじんとした。
(……居るだけ、でも)
それが、
誰かの「生き延びる」を支えていることがあるのだとしたら。
「またゆっくり、お茶でもしましょうね」
マリアンヌはそう言って、
ひらりと手を振って部屋を出ていった。
◇
夕刻。
王都支店に戻ると、
星見の広場はいつもの静けさを取り戻していた。
星市の装飾は半分ほど片づけられ、
「星市開催!」の看板もすでに外されている。
入口の上に残ったのは、
ただ一行――
『今日がどんな日でも、あなたはここに来ていい。』
その文字だけは、
リオンの判断で残されていた。
(星市が終わっても、
この言葉は残したいって言ってくれた)
ミラは、胸の奥があたたかくなる。
星見の広場のベンチには、
先客がひとり座っていた。
「……約束は守る主義だからな」
星空を見上げる横顔。
制服の襟元をゆるめたリオンだ。
「おつかれさまです」
ミラは、隣に立って会釈した。
「今日も、生き延びましたね」
「そうだな」
リオンは、ゆっくりと立ち上がり、
“おつかれさま棚”の前に歩み寄る。
『今日も、生き延びたあなたへ。
それだけでも、じゅうぶんです』
指先で、その一行をなぞる。
「星市に勝てたかどうかを決めるのは、本当は――」
リオンは、ぽつりと言った。
「兄弟でも、父上でもなく。
ここに来た客の数と、顔のほうだ」
ミラは、自然と微笑んだ。
「……リオン店長」
「なんだ」
「今日も、生き延びたリオン店長へ」
POPを真似るように、
そっと言葉を投げる。
「未来永劫、君にはたくさん働いてもらう予定だ、そのために今日は休め――って、
さっきノエル兄さまが真似してました」
「……あいつ」
リオンが、少し顔をしかめる。
「余計なことを吹き込むなと、あれほど」
「でも」
ミラは、くすりと笑った。
「わたし、ちょっと嬉しかったです。
“未来永劫、働いてほしい”って、
“ここにいていい”って言ってもらえたみたいで」
リオンは、言葉を失ったようにミラを見る。
沈黙が、星見の広場に落ちる。
やがて、
ほんの少しだけ、視線をそらすようにして呟いた。
「……図々しいくらいが、ちょうどいいんじゃないか」
ミラは、目を瞬いた。
「図々しい……?」
「“ここにいたい”と思うなら。
“ここにいていいか”と遠慮するより、
“ここにいる前提で動く”くらいが、ちょうどいい」
リオンは、棚のPOPを一枚、一枚眺めていく。
「俺も、そうする」
静かな声だった。
「次期頭首の座も、
“いていいか”と伺いを立てるんじゃなくて。
“そこに立つ前提で、どう灯りを分けるか”を考える」
“勝ちたい”という言葉が、
少し形を変えているのがわかった。
「だから、ミラ」
「はい」
「君にも、図々しくいてほしい」
その言葉に、
胸がきゅっとなる。
「“ここにいていいですか”じゃなくて。
“ここで、こうしたいです”と、言い続けろ」
「……そんな、図々しく」
「棚精は、それくらいでちょうどいい」
リオンの口元が、わずかに緩む。
「未来永劫、君にはたくさん働いてもらう予定だ。
そのために――」
言葉を切り、
星見の広場の天井を見上げる。
「今日は、休め」
星灯の星空が、ふわりと瞬いた。
ミラは、胸の奥がじんわりあたたかくなるのを感じながら、
目を細める。
「……ありがとうございます。
もっと頑張ります」
「そこだ」
即座に突っ込まれた。
「今の流れは、“頑張ります”じゃなくて
“よく頑張りました”だ」
「う……」
言い返せずに口ごもる。
「“忘れられない棘”があるのは、知っている」
リオンは、穏やかな目でミラを見る。
「その棘ごと、ここで生き延びろ。
数字も、言葉も、顔も抱えながら」
ミラは、ゆっくりと頷いた。
前の店で受け取った「必要ない」という言葉も、
星灯で受け取った「必要だ」という言葉も。
どちらも、消えはしない。
でも――
(どっちを、何度思い出すかは、
自分で選べる)
星市を通して、
ようやくそのことを、身体ごと信じられそうな気がした。
「……じゃあ今日は、“よく頑張りました”って言っても、いいですか?」
「誰にだ」
「わたしに、です」
そう言うと、
リオンは少しだけ目を丸くした。
そして、
星見の広場の星空を見上げながら、静かに言う。
「図々しいくらいが、ちょうどいい」
その言葉に背中を押されながら、
ミラは小さく息を吸い込んだ。
「――今日も、生き延びたミラへ。
よく、ここまで来ました」
ぽつりと、
自分に向かって「おつかれさま」を言う。
星灯バザールの魔灯が、
それに応えるように、ひときわ強く瞬いた。
星市は終わった。
けれど、
顔の見える灯りをともす日々は、
これからも続いていく。
図々しいくらいの「ここにいていい」が、
ミラとリオンのいるこの店で、
静かに、しかし確かに、広がっていくのだった。
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