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第3話「回復役、守られすぎ問題」
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ギルドの酒場は、夜になると“別の戦場”になる。
昼間は依頼の受付でざわついていた空間が、
夜は酒と笑い声と武勇伝でいっぱいになるのだ。
「おい聞いたか!今日の草原の魔獣、あのパーティが片付けたらしいぞ!」
「回復役連れてたって!」
「回復役いるのに死人出なかったって、それだけで勝ちだろ!」
リィナは、その“別の戦場”の入り口で、今日もひと呼吸置いた。
(うぅ……人が多い……)
音が大きい。
笑い声が大きい。
肩と肩がぶつかる距離。
苦手。
でも行かないと――情報が入らない。
“回復術師は孤立すると死ぬ。”
ギルドで先輩に言われた言葉が、いつも頭の片隅にある。
リィナは意を決して扉を開けた。
ガラン、と鈴。
そして――
すぐに視線が集まった。
(……え?)
なんか、見られてる。
リィナは心臓がきゅっとなって、無意識に鈴を握った。
すると、少し離れた席から声が飛んできた。
「おっ!噂の回復役だ!」
「え、あの子!?」
「ふわふわしてるのに強いってやつ!」
(噂……?)
リィナの頭が真っ白になる。
(えっ私、噂になってるの!?)
(やだ、恥ずかしい……!)
その瞬間――
「リィナ」
背後から、のんびりした声。
振り返ると、カイがいた。
今日もふわふわ笑顔で、片手にパン……ではなく、今度はなぜか肉串を持っている。
(ギルド酒場って、食べ歩きする場所だったっけ……)
カイは当たり前みたいに言った。
「こっち。席取ってある」
「えっ、あ、ありがとう……」
リィナがカイの後ろをついて歩くと、
人の流れが自然に割れた。
(……え?)
カイが進むだけで、周りが避ける。
避け方が“自然すぎる”。
リィナは首を傾げた。
(みんな、カイくんのこと好きなのかな……?)
席に着くと、そこにはミラとガラムがいた。
ガラムが腕を組んで、リィナを見た。
「お前、噂になってるぞ」
「えっ……やだ……」
「“ふわふわのくせに回復が正確”だとよ」
褒められているのか、変なあだ名を付けられているのか分からない。
リィナは両手で頬を押さえた。
「や、やめてください……」
「悪い噂じゃねぇ」
ミラが笑う。「むしろ羨ましい噂」
リィナは小さく震える。
「でも、目立つの怖い……」
本音がぽろっと出た。
その瞬間、カイが即座に言った。
「じゃあ目立たないようにする」
「えっ?」
「僕が全部引き受ける」
ミラが即ツッコミを入れた。
「どうやって?」
カイは平然と答える。
「リィナのことを僕の後ろに置く」
ガラム「過保護か?」
カイ「そうかも」
認めた。
リィナは慌てて首を振る。
「だ、大丈夫だよ!私、後ろで回復する係だし!」
「うん。だから前に出ないで」
「前に出ないよ!」
「出そうだった」
「出てない!」
「出そうだった」
言い合いが小学生みたいになって、ミラが吹き出した。
「なにそれ。夫婦喧嘩?」
「夫婦じゃないです!」
リィナが即答する。
ガラムが頷く。
「夫婦じゃねぇな」
「えっ、そうなの?」
ミラが首を傾げる。「じゃあ何?」
リィナが困っている間に、カイがのんびり言った。
「仲間」
リィナ「仲間です!」
ミラ「……仲間って便利ね」
ガラム「便利だな」
酒場の空気が、じわっと笑いに変わる。
(は、恥ずかしい……)
リィナは鈴を握りしめた。
その時、隣の席から声がした。
「おいおい、回復役ちゃん。今度うちのパーティ来ない?」
「えっ」
声をかけてきたのは、派手なマントの男だった。
笑顔は爽やかだけど、目が笑ってない。
(うわ……苦手……)
リィナが固まった瞬間、カイが笑顔のまま言った。
「……やめといた方がいいですよ」
「え?」
男が眉をひそめる。「なんで?」
カイは相変わらずふわふわした顔で、さらっと答えた。
「彼女、うちの固定回復役だから」
「固定?」
「うん。僕の」
その言葉が、リィナの脳内で一回転した。
(僕の……?)
(え?今、私、所有物みたいに……!?)
でもカイの声は柔らかい。
優しい。
だから怒れない。
派手マント男が笑った。
「お前の回復役?お前、そんな独占するタイプだっけ?」
「するよ」
カイはにこっとしたまま言った。
ミラが小声で言う。
「……今のカイ、天然じゃない」
ガラム「圧あるな」
リィナは息を止めた。
(圧……?)
(え、カイくん……圧あるの?)
派手マント男が肩をすくめる。
「まぁいいや。回復役ちゃん、困ったら声かけて」
「は、はい……」
その男が去った瞬間、リィナは小さく息を吐いた。
「……こわかった……」
「分かる」
カイが短く言う。いつもより声が低い。
(え、カイくん、今……ちょっと怒ってる?)
リィナが恐る恐る見上げると、カイはすぐにふわっと笑って言った。
「ごめんね。変な人多いから」
「ううん……助けてくれてありがとう」
「当然」
当然。
その言い方が――
“仲間”の距離じゃない気がして、リィナは胸が熱くなる。
ミラが頬杖をついて、リィナを見た。
「リィナ、気づいてないの?」
「え?」
「カイ、あんたの前だと変だよ」
リィナは首を傾げた。
「変……?」
「うん。過保護。独占。あと――」
ミラが笑う。「妙に楽しそう」
リィナは顔が赤くなる。
「そ、そんな……私、普通だよ……」
「普通じゃないよ」
ガラムが淡々と言う。
リィナが固まると、カイがのんびり口を挟んだ。
「リィナは普通だよ。ちょっと可愛いだけ」
「えっ」
また可愛い。
酒場の熱気のせいじゃなく、リィナの顔が熱くなる。
「か、かわいくないよ……!」
「可愛いよ」
「……なんでそんなに言うの?」
リィナがぽろっと聞いてしまった。
その瞬間。
カイの動きが止まった。
肉串を持った手が、宙で止まる。
まばたきが遅れる。
笑顔が一拍遅れて戻る。
(あれ?)
リィナが不安になった時、カイはふわっと言った。
「言いたいから」
「えっ」
「褒めたいから」
「……えっ」
シンプルすぎて、逆に破壊力がある。
ミラが天井を仰いだ。
「ほらね。変」
ガラムが頷く。
「変だな」
リィナは頭の中がぐるぐるする。
(褒めたいから……?)
(言いたいから……?)
そんな理由で、可愛いって言うものなの?
リィナは分からない。
分からないけど、嬉しい。
嬉しいから笑ってしまう。
そして、笑った瞬間。
カイの目が、ほんの少しだけ“揺れた”。
(……この顔)
(これが見たいから言ってる?)
(いや、違う。俺はただ――)
(……やばい)
カイは心の中で、じわっと自覚してしまう。
(天然演技で安全圏にいるはずなのに)
(この子の笑顔、刺さりすぎる)
(“仲間”って言葉の盾が薄い)
(……薄いのに、本人だけが気づいてない)
――その時。
酒場の別の席から、誰かが叫んだ。
「おーい!カイ!お前、今日、回復役ちゃん守りすぎだろ!」
「見た見た!前に出て庇ってたぞ!」
「軍師が前出るなよ!」
一気に笑いが起きる。
リィナは縮こまった。
(やだ……また噂……)
でもカイは涼しい顔で返した。
「だって転ぶから」
「転ばないです!」
リィナが反射で返す。
酒場が爆笑した。
「回復役ちゃん、本人否定してるぞ!」
「かわいい!」
「固定回復役決まったな!」
リィナは顔を覆いたくなる。
でも――
その中で、カイだけが静かに言った。
「……決まってる」
聞こえるか聞こえないかの声で。
リィナの胸が、どくん、と鳴った。
(え……)
今の、何?
聞き返そうとした時、ガラムがどん、と机に肘をついた。
「よし、明日も依頼だ」
ミラ「賛成」
「リィナ、来れるか?」
「は、はい……!」
返事をした瞬間、リィナは思った。
(私……怖いのに)
(目立つの嫌なのに)
(……でも)
(この人たちと一緒なら、頑張れる)
そう思えたのは、
きっと隣に“仲間”がいるから――
……だと、思いたい。
カイがリィナの手元をちらっと見た。
「鈴、鳴ってない?」
「えっ?」
リィナは気づく。
自分の指が、鈴をきゅっと握りしめすぎて、
小さく鳴っていた。
リン。
それは緊張の音じゃなく――
どこか、嬉しさの音だった。
カイは微笑んだ。
「……その音、好き」
「えっ」
リィナが固まる。
(また好きって言った!?)
ミラが呆れたように笑う。
「カイ、もう自分で何言ってるか分かってる?」
カイはふわっと言った。
「分かってるよ」
「じゃあやめなさい」
「やだ」
即答。
ガラムが飲み物を飲み干して言った。
「もう付き合え」
「付き合ってません!!」
リィナが叫ぶ。
酒場がまた爆笑した。
カイは笑わなかった。
笑う代わりに、リィナを見て――
とても静かに言った。
「……まだ、仲間」
「うん、仲間!」
リィナは頷く。
その言葉に安心してしまう。
でもカイは、ほんの少しだけ寂しそうに目を伏せた。
(……まだ)
(まだ、っていつまでだ)
・
その夜。
リィナが宿へ帰る道で、ふと立ち止まる。
胸が熱い。
顔が熱い。
(仲間って……こんなに心が忙しいの?)
自分に問いかけても、答えは出ない。
でも一つだけ分かる。
――明日も、カイに会いたい。
リィナは小さく鈴を鳴らして、歩き出した。
リン。
その音の先に、何が待っているかも知らずに。
=======
次回、
第4話「ギルドの噂『カイ、恋してる説』」
噂が確信に変わり、カイの“天然”が崩れ始めます♡
昼間は依頼の受付でざわついていた空間が、
夜は酒と笑い声と武勇伝でいっぱいになるのだ。
「おい聞いたか!今日の草原の魔獣、あのパーティが片付けたらしいぞ!」
「回復役連れてたって!」
「回復役いるのに死人出なかったって、それだけで勝ちだろ!」
リィナは、その“別の戦場”の入り口で、今日もひと呼吸置いた。
(うぅ……人が多い……)
音が大きい。
笑い声が大きい。
肩と肩がぶつかる距離。
苦手。
でも行かないと――情報が入らない。
“回復術師は孤立すると死ぬ。”
ギルドで先輩に言われた言葉が、いつも頭の片隅にある。
リィナは意を決して扉を開けた。
ガラン、と鈴。
そして――
すぐに視線が集まった。
(……え?)
なんか、見られてる。
リィナは心臓がきゅっとなって、無意識に鈴を握った。
すると、少し離れた席から声が飛んできた。
「おっ!噂の回復役だ!」
「え、あの子!?」
「ふわふわしてるのに強いってやつ!」
(噂……?)
リィナの頭が真っ白になる。
(えっ私、噂になってるの!?)
(やだ、恥ずかしい……!)
その瞬間――
「リィナ」
背後から、のんびりした声。
振り返ると、カイがいた。
今日もふわふわ笑顔で、片手にパン……ではなく、今度はなぜか肉串を持っている。
(ギルド酒場って、食べ歩きする場所だったっけ……)
カイは当たり前みたいに言った。
「こっち。席取ってある」
「えっ、あ、ありがとう……」
リィナがカイの後ろをついて歩くと、
人の流れが自然に割れた。
(……え?)
カイが進むだけで、周りが避ける。
避け方が“自然すぎる”。
リィナは首を傾げた。
(みんな、カイくんのこと好きなのかな……?)
席に着くと、そこにはミラとガラムがいた。
ガラムが腕を組んで、リィナを見た。
「お前、噂になってるぞ」
「えっ……やだ……」
「“ふわふわのくせに回復が正確”だとよ」
褒められているのか、変なあだ名を付けられているのか分からない。
リィナは両手で頬を押さえた。
「や、やめてください……」
「悪い噂じゃねぇ」
ミラが笑う。「むしろ羨ましい噂」
リィナは小さく震える。
「でも、目立つの怖い……」
本音がぽろっと出た。
その瞬間、カイが即座に言った。
「じゃあ目立たないようにする」
「えっ?」
「僕が全部引き受ける」
ミラが即ツッコミを入れた。
「どうやって?」
カイは平然と答える。
「リィナのことを僕の後ろに置く」
ガラム「過保護か?」
カイ「そうかも」
認めた。
リィナは慌てて首を振る。
「だ、大丈夫だよ!私、後ろで回復する係だし!」
「うん。だから前に出ないで」
「前に出ないよ!」
「出そうだった」
「出てない!」
「出そうだった」
言い合いが小学生みたいになって、ミラが吹き出した。
「なにそれ。夫婦喧嘩?」
「夫婦じゃないです!」
リィナが即答する。
ガラムが頷く。
「夫婦じゃねぇな」
「えっ、そうなの?」
ミラが首を傾げる。「じゃあ何?」
リィナが困っている間に、カイがのんびり言った。
「仲間」
リィナ「仲間です!」
ミラ「……仲間って便利ね」
ガラム「便利だな」
酒場の空気が、じわっと笑いに変わる。
(は、恥ずかしい……)
リィナは鈴を握りしめた。
その時、隣の席から声がした。
「おいおい、回復役ちゃん。今度うちのパーティ来ない?」
「えっ」
声をかけてきたのは、派手なマントの男だった。
笑顔は爽やかだけど、目が笑ってない。
(うわ……苦手……)
リィナが固まった瞬間、カイが笑顔のまま言った。
「……やめといた方がいいですよ」
「え?」
男が眉をひそめる。「なんで?」
カイは相変わらずふわふわした顔で、さらっと答えた。
「彼女、うちの固定回復役だから」
「固定?」
「うん。僕の」
その言葉が、リィナの脳内で一回転した。
(僕の……?)
(え?今、私、所有物みたいに……!?)
でもカイの声は柔らかい。
優しい。
だから怒れない。
派手マント男が笑った。
「お前の回復役?お前、そんな独占するタイプだっけ?」
「するよ」
カイはにこっとしたまま言った。
ミラが小声で言う。
「……今のカイ、天然じゃない」
ガラム「圧あるな」
リィナは息を止めた。
(圧……?)
(え、カイくん……圧あるの?)
派手マント男が肩をすくめる。
「まぁいいや。回復役ちゃん、困ったら声かけて」
「は、はい……」
その男が去った瞬間、リィナは小さく息を吐いた。
「……こわかった……」
「分かる」
カイが短く言う。いつもより声が低い。
(え、カイくん、今……ちょっと怒ってる?)
リィナが恐る恐る見上げると、カイはすぐにふわっと笑って言った。
「ごめんね。変な人多いから」
「ううん……助けてくれてありがとう」
「当然」
当然。
その言い方が――
“仲間”の距離じゃない気がして、リィナは胸が熱くなる。
ミラが頬杖をついて、リィナを見た。
「リィナ、気づいてないの?」
「え?」
「カイ、あんたの前だと変だよ」
リィナは首を傾げた。
「変……?」
「うん。過保護。独占。あと――」
ミラが笑う。「妙に楽しそう」
リィナは顔が赤くなる。
「そ、そんな……私、普通だよ……」
「普通じゃないよ」
ガラムが淡々と言う。
リィナが固まると、カイがのんびり口を挟んだ。
「リィナは普通だよ。ちょっと可愛いだけ」
「えっ」
また可愛い。
酒場の熱気のせいじゃなく、リィナの顔が熱くなる。
「か、かわいくないよ……!」
「可愛いよ」
「……なんでそんなに言うの?」
リィナがぽろっと聞いてしまった。
その瞬間。
カイの動きが止まった。
肉串を持った手が、宙で止まる。
まばたきが遅れる。
笑顔が一拍遅れて戻る。
(あれ?)
リィナが不安になった時、カイはふわっと言った。
「言いたいから」
「えっ」
「褒めたいから」
「……えっ」
シンプルすぎて、逆に破壊力がある。
ミラが天井を仰いだ。
「ほらね。変」
ガラムが頷く。
「変だな」
リィナは頭の中がぐるぐるする。
(褒めたいから……?)
(言いたいから……?)
そんな理由で、可愛いって言うものなの?
リィナは分からない。
分からないけど、嬉しい。
嬉しいから笑ってしまう。
そして、笑った瞬間。
カイの目が、ほんの少しだけ“揺れた”。
(……この顔)
(これが見たいから言ってる?)
(いや、違う。俺はただ――)
(……やばい)
カイは心の中で、じわっと自覚してしまう。
(天然演技で安全圏にいるはずなのに)
(この子の笑顔、刺さりすぎる)
(“仲間”って言葉の盾が薄い)
(……薄いのに、本人だけが気づいてない)
――その時。
酒場の別の席から、誰かが叫んだ。
「おーい!カイ!お前、今日、回復役ちゃん守りすぎだろ!」
「見た見た!前に出て庇ってたぞ!」
「軍師が前出るなよ!」
一気に笑いが起きる。
リィナは縮こまった。
(やだ……また噂……)
でもカイは涼しい顔で返した。
「だって転ぶから」
「転ばないです!」
リィナが反射で返す。
酒場が爆笑した。
「回復役ちゃん、本人否定してるぞ!」
「かわいい!」
「固定回復役決まったな!」
リィナは顔を覆いたくなる。
でも――
その中で、カイだけが静かに言った。
「……決まってる」
聞こえるか聞こえないかの声で。
リィナの胸が、どくん、と鳴った。
(え……)
今の、何?
聞き返そうとした時、ガラムがどん、と机に肘をついた。
「よし、明日も依頼だ」
ミラ「賛成」
「リィナ、来れるか?」
「は、はい……!」
返事をした瞬間、リィナは思った。
(私……怖いのに)
(目立つの嫌なのに)
(……でも)
(この人たちと一緒なら、頑張れる)
そう思えたのは、
きっと隣に“仲間”がいるから――
……だと、思いたい。
カイがリィナの手元をちらっと見た。
「鈴、鳴ってない?」
「えっ?」
リィナは気づく。
自分の指が、鈴をきゅっと握りしめすぎて、
小さく鳴っていた。
リン。
それは緊張の音じゃなく――
どこか、嬉しさの音だった。
カイは微笑んだ。
「……その音、好き」
「えっ」
リィナが固まる。
(また好きって言った!?)
ミラが呆れたように笑う。
「カイ、もう自分で何言ってるか分かってる?」
カイはふわっと言った。
「分かってるよ」
「じゃあやめなさい」
「やだ」
即答。
ガラムが飲み物を飲み干して言った。
「もう付き合え」
「付き合ってません!!」
リィナが叫ぶ。
酒場がまた爆笑した。
カイは笑わなかった。
笑う代わりに、リィナを見て――
とても静かに言った。
「……まだ、仲間」
「うん、仲間!」
リィナは頷く。
その言葉に安心してしまう。
でもカイは、ほんの少しだけ寂しそうに目を伏せた。
(……まだ)
(まだ、っていつまでだ)
・
その夜。
リィナが宿へ帰る道で、ふと立ち止まる。
胸が熱い。
顔が熱い。
(仲間って……こんなに心が忙しいの?)
自分に問いかけても、答えは出ない。
でも一つだけ分かる。
――明日も、カイに会いたい。
リィナは小さく鈴を鳴らして、歩き出した。
リン。
その音の先に、何が待っているかも知らずに。
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次回、
第4話「ギルドの噂『カイ、恋してる説』」
噂が確信に変わり、カイの“天然”が崩れ始めます♡
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