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第4話「ギルドの噂『カイ、恋してる説』」
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次の日の朝。
ギルドの掲示板前は、いつもより人が多かった。
依頼票の紙が揺れて、誰かの笑い声が弾けている。
リィナは人混みの外側で、そっと背伸びをした。
(見えない……)
背が低いわけじゃない。
でも押しの強い冒険者たちは遠慮を知らない。
(私もぐいぐい行けばいいのに……)
そう思って一歩前へ出た瞬間、肩が誰かにぶつかった。
「あっ、ごめんなさ――」
言い終わる前に、手が伸びてきて、リィナの肩をやさしく引いた。
「危ないよ」
カイだった。
(あ、カイくんだ)
それだけで、胸がすとんと落ち着く。
カイは自然にリィナを自分の後ろに置く。
そして、ぎゅうぎゅうの人混みの隙間を、すいっと作った。
(……え?)
人が避けた。
昨日と同じだ。
カイがそこにいるだけで、空気が割れていく。
(……やっぱり、すごい)
リィナが呆然としている間に、カイは掲示板の依頼票を一枚引き抜いた。
「これ、良さそう」
「えっ、私、まだ見えて……」
「読んであげる」
カイはゆっくり、でも迷いなく読み上げる。
「“街道の荷馬車護衛。魔獣出没。回復役必須”」
「……護衛」
「うん。討伐より危険は少ないけど、人を守る依頼」
「……私、向いてるかも」
リィナが言うと、カイはふわっと笑った。
「うん。向いてる」
その笑顔が優しくて、リィナはつい笑ってしまう。
――その時。
背後から、ひそひそ声が聞こえた。
「見た?また守ってる」
「絶対あれ、恋だろ」
「カイが恋って……ギルドが崩れる」
(え?)
リィナの笑顔が固まる。
恋?
今、恋って言った?
リィナは耳を疑った。
でも声は確かに言っていた。
「恋」
「恋」
「恋」
カイは気づいていないふりをして、リィナの手元に依頼票を渡した。
「これ、受ける?」
「えっ、えっと……」
リィナの頭の中は、依頼ではなく“恋”でいっぱいだった。
(恋って……え?)
(カイくんが?)
(誰に?)
答えは出ないのに、心だけが忙しい。
(まさか……)
(いやいや、そんな……)
(私は仲間で……)
リィナが固まっていると、カイが首を傾げる。
「どうしたの?」
「えっ!?な、なんでもないよ!」
「顔赤い」
「赤くない!」
「赤い」
「……赤いかも」
負けた。
カイは満足そうに微笑む。
「可愛い」
「……もうっ」
リィナは頬を押さえた。
(可愛いって、今日も言う……)
それがもう“普通”になっているのが怖い。
慣れたくないのに、慣れてしまう。
・
依頼受領の手続きを終え、パーティの集合場所へ向かう途中。
ギルドの廊下で、ミラが腕を組んで待っていた。
「おはよ」
「お、おはようございます……!」
「うん。元気そうね」
ミラはリィナを見て笑う。
次にカイを見る。
笑う。
「カイ、噂が加速してるよ」
「噂?」
「“恋してる説”」
カイがぴたりと止まった。
(あ、止まった)
リィナも止まった。
(止まった……?)
ミラが淡々と言う。
「カイが回復役に恋してるって噂」
「……へぇ」
カイの返事が、微妙に遅い。
ふわふわが、一瞬だけ薄くなった。
リィナは心臓が跳ねた。
(え、え、え……)
(恋してる説……)
(回復役って……私……?)
頭の中で計算が始まる。
でもリィナは算数が苦手だ。
気持ちの計算はもっと苦手だ。
ミラがリィナに顔を寄せる。
「リィナ、知らないの?」
「えっ」
「カイ、あんたのこと――」
言いかけた瞬間、カイがふわっと割り込んだ。
「ミラ、今日も元気だね」
「誤魔化した」
「誤魔化してない」
「誤魔化した」
ミラがニヤリと笑う。
「カイ、動揺すると語尾が硬くなる」
「……動揺してない」
「してる」
ガラムが通りかかって一言。
「してるな」
即答だった。
リィナは胸が熱くなる。
(動揺……)
(カイくんが……?)
(噂で……?)
カイはリィナを見ずに、依頼票をひらひらさせた。
「ほら、行こ。護衛だし」
「う、うん!」
リィナは頷いた。
頷いたけど――
足がふわふわしている。
(私……今……)
(何に頷いたの……?)
・
街道へ向かう荷馬車の横。
依頼主の商人が、汗を拭きながら頭を下げた。
「いやぁ助かります!最近この辺り、魔獣が出るんです!」
「分かった。俺が前を走る」
ガラムが言う。
ミラが弓を背負い直す。
「後ろは任せて」
リィナも鈴を握った。
「私は……回復、頑張ります」
そう言った瞬間、カイがリィナの頭をぽん、と撫でた。
ぽん。
軽いのに、心臓が跳ねる。
(な、な、なに!?)
リィナが固まると、カイは普通の顔で言った。
「うん、偉い」
「……え、えへへ……」
笑ってしまう。
笑ってしまう自分が怖い。
(これは……仲間の距離……?)
(え、仲間って、撫でる……?)
ミラが後ろで小声で言った。
「仲間の距離じゃないよ」
ガラムも小声で言った。
「仲間の距離じゃねぇな」
リィナは聞こえないふりをした。
聞こえないふりをしないと、心が落ち着かない。
・
護衛は順調だった。
順調すぎて、リィナは逆に緊張する。
(何か起きそう……)
その“何か”は、案外すぐ来た。
草むらが揺れた。
小型の魔獣が二匹、飛び出してくる。
「来た!」
ガラムが叫ぶ。
ミラが矢を放つ。
戦闘は短い。
カイが補助魔法で足場を止め、ガラムが切り、ミラが仕留める。
リィナは回復を構えるまでもなかった。
(……役に立ててない)
その思いが胸に刺さった時。
カイが小さく言った。
「役に立ってるよ」
「えっ」
「君がいるだけで、みんな安心して前に出れる」
その言い方が、妙に真剣だった。
リィナの喉がきゅっとなる。
(そんなの……ずるい)
褒められるだけじゃなくて、
存在を肯定されると、涙が出そうになる。
リィナが俯いた瞬間、
カイが少しだけ距離を詰めた。
「リィナ」
「……なに?」
「……噂、聞こえた?」
「えっ」
噂。
恋してる説。
リィナの心臓が跳ねた。
(え、カイくんが話題にするの!?)
リィナは正直に答えてしまった。
「……聞こえた」
カイは一瞬黙った。
風が草を揺らす。
「……どう思った?」
「えっ……」
どう思ったって――
(どう思えばいいの!?)
リィナは頭が真っ白になりながら、でも逃げられなくて、言葉を探した。
「……変な噂だなって……」
「変?」
「うん……だって、カイくんは天然で……優しくて……みんなに……」
途中で自分の言葉が止まった。
(……みんなに?)
(カイくんって、みんなに優しい?)
本当?
リィナの中で、昨日のことが蘇る。
“固定回復役だから”
“僕の”
“独占するよ”
――あれは、みんなにじゃない。
リィナは混乱したまま、最後に小さく付け足した。
「……優しいから」
カイは息を吐いた。
「……そっか」
「……うん」
沈黙。
リィナが耐えきれず、慌てて言う。
「でも、そういう噂って、すぐ消えるよ!」
カイが静かに言った。
「……消えたら困る」
「えっ」
リィナの耳が、いま確かに拾った。
消えたら困る?
困る?
(え、え、え……)
リィナが固まると、カイはふわっと笑って、いつもの声に戻った。
「……なんてね」
「えっ、冗談?」
「冗談」
でも目が、冗談じゃない。
リィナは胸が苦しくなる。
(冗談……?)
(冗談なのに……苦しい……?)
リィナは鈴を握りしめた。
リン、と小さく鳴る。
カイがその音を聞いて、微笑んだ。
「その音、やっぱり好き」
「……もう、からかわないで」
「からかってない」
「からかってる」
「本音」
本音。
その言葉が、胸に落ちた。
・
荷馬車は無事に目的地へ着いた。
商人が何度も頭を下げる。
「ありがとうございました!本当に助かりました!」
報酬を受け取った帰り道。
ギルドへ戻る途中、リィナはぽつりと言った。
「私……目立つの、怖かった」
カイが頷く。
「うん」
「でも……今日、少しだけ大丈夫だった」
「うん」
「仲間がいるから……」
リィナがそう言った瞬間。
カイの歩みが、一拍遅れた。
「……仲間」
「うん、仲間」
「……仲間、ね」
その声が、少しだけ――
苦しそうだった。
リィナは立ち止まる。
「カイくん?」
カイは笑う。
「なんでもない」
「……ほんと?」
「ほんと」
でも、リィナは気づいてしまった。
カイの“ふわふわ”は、
時々、薄くなる。
その薄くなったところに、
“本当の顔”が隠れている気がする。
そしてその本当の顔は――
少しだけ、寂しそうだった。
・
ギルドの扉が見えた頃。
ミラが追いついてきて、リィナの耳元で囁いた。
「リィナ」
「えっ」
「噂、消えないよ」
「えっ」
「だってカイが、消す気ないもん」
リィナの顔が真っ赤になる。
(消す気ない……)
(恋してる説……)
(私……?)
答えはまだ出ない。
でも、胸はずっと忙しい。
リィナは鈴を握りしめて、扉を開けた。
ガラン、と鈴が鳴る。
その音はきっと――
“恋”の始まりの音に、少し似ていた。
=======
次回、
第5話「おっとりは“弱さ”じゃない回」
リィナが自分を責めたとき、カイが“策士”じゃなく“本音”で支えます。甘さが一気に増える回です♡
ギルドの掲示板前は、いつもより人が多かった。
依頼票の紙が揺れて、誰かの笑い声が弾けている。
リィナは人混みの外側で、そっと背伸びをした。
(見えない……)
背が低いわけじゃない。
でも押しの強い冒険者たちは遠慮を知らない。
(私もぐいぐい行けばいいのに……)
そう思って一歩前へ出た瞬間、肩が誰かにぶつかった。
「あっ、ごめんなさ――」
言い終わる前に、手が伸びてきて、リィナの肩をやさしく引いた。
「危ないよ」
カイだった。
(あ、カイくんだ)
それだけで、胸がすとんと落ち着く。
カイは自然にリィナを自分の後ろに置く。
そして、ぎゅうぎゅうの人混みの隙間を、すいっと作った。
(……え?)
人が避けた。
昨日と同じだ。
カイがそこにいるだけで、空気が割れていく。
(……やっぱり、すごい)
リィナが呆然としている間に、カイは掲示板の依頼票を一枚引き抜いた。
「これ、良さそう」
「えっ、私、まだ見えて……」
「読んであげる」
カイはゆっくり、でも迷いなく読み上げる。
「“街道の荷馬車護衛。魔獣出没。回復役必須”」
「……護衛」
「うん。討伐より危険は少ないけど、人を守る依頼」
「……私、向いてるかも」
リィナが言うと、カイはふわっと笑った。
「うん。向いてる」
その笑顔が優しくて、リィナはつい笑ってしまう。
――その時。
背後から、ひそひそ声が聞こえた。
「見た?また守ってる」
「絶対あれ、恋だろ」
「カイが恋って……ギルドが崩れる」
(え?)
リィナの笑顔が固まる。
恋?
今、恋って言った?
リィナは耳を疑った。
でも声は確かに言っていた。
「恋」
「恋」
「恋」
カイは気づいていないふりをして、リィナの手元に依頼票を渡した。
「これ、受ける?」
「えっ、えっと……」
リィナの頭の中は、依頼ではなく“恋”でいっぱいだった。
(恋って……え?)
(カイくんが?)
(誰に?)
答えは出ないのに、心だけが忙しい。
(まさか……)
(いやいや、そんな……)
(私は仲間で……)
リィナが固まっていると、カイが首を傾げる。
「どうしたの?」
「えっ!?な、なんでもないよ!」
「顔赤い」
「赤くない!」
「赤い」
「……赤いかも」
負けた。
カイは満足そうに微笑む。
「可愛い」
「……もうっ」
リィナは頬を押さえた。
(可愛いって、今日も言う……)
それがもう“普通”になっているのが怖い。
慣れたくないのに、慣れてしまう。
・
依頼受領の手続きを終え、パーティの集合場所へ向かう途中。
ギルドの廊下で、ミラが腕を組んで待っていた。
「おはよ」
「お、おはようございます……!」
「うん。元気そうね」
ミラはリィナを見て笑う。
次にカイを見る。
笑う。
「カイ、噂が加速してるよ」
「噂?」
「“恋してる説”」
カイがぴたりと止まった。
(あ、止まった)
リィナも止まった。
(止まった……?)
ミラが淡々と言う。
「カイが回復役に恋してるって噂」
「……へぇ」
カイの返事が、微妙に遅い。
ふわふわが、一瞬だけ薄くなった。
リィナは心臓が跳ねた。
(え、え、え……)
(恋してる説……)
(回復役って……私……?)
頭の中で計算が始まる。
でもリィナは算数が苦手だ。
気持ちの計算はもっと苦手だ。
ミラがリィナに顔を寄せる。
「リィナ、知らないの?」
「えっ」
「カイ、あんたのこと――」
言いかけた瞬間、カイがふわっと割り込んだ。
「ミラ、今日も元気だね」
「誤魔化した」
「誤魔化してない」
「誤魔化した」
ミラがニヤリと笑う。
「カイ、動揺すると語尾が硬くなる」
「……動揺してない」
「してる」
ガラムが通りかかって一言。
「してるな」
即答だった。
リィナは胸が熱くなる。
(動揺……)
(カイくんが……?)
(噂で……?)
カイはリィナを見ずに、依頼票をひらひらさせた。
「ほら、行こ。護衛だし」
「う、うん!」
リィナは頷いた。
頷いたけど――
足がふわふわしている。
(私……今……)
(何に頷いたの……?)
・
街道へ向かう荷馬車の横。
依頼主の商人が、汗を拭きながら頭を下げた。
「いやぁ助かります!最近この辺り、魔獣が出るんです!」
「分かった。俺が前を走る」
ガラムが言う。
ミラが弓を背負い直す。
「後ろは任せて」
リィナも鈴を握った。
「私は……回復、頑張ります」
そう言った瞬間、カイがリィナの頭をぽん、と撫でた。
ぽん。
軽いのに、心臓が跳ねる。
(な、な、なに!?)
リィナが固まると、カイは普通の顔で言った。
「うん、偉い」
「……え、えへへ……」
笑ってしまう。
笑ってしまう自分が怖い。
(これは……仲間の距離……?)
(え、仲間って、撫でる……?)
ミラが後ろで小声で言った。
「仲間の距離じゃないよ」
ガラムも小声で言った。
「仲間の距離じゃねぇな」
リィナは聞こえないふりをした。
聞こえないふりをしないと、心が落ち着かない。
・
護衛は順調だった。
順調すぎて、リィナは逆に緊張する。
(何か起きそう……)
その“何か”は、案外すぐ来た。
草むらが揺れた。
小型の魔獣が二匹、飛び出してくる。
「来た!」
ガラムが叫ぶ。
ミラが矢を放つ。
戦闘は短い。
カイが補助魔法で足場を止め、ガラムが切り、ミラが仕留める。
リィナは回復を構えるまでもなかった。
(……役に立ててない)
その思いが胸に刺さった時。
カイが小さく言った。
「役に立ってるよ」
「えっ」
「君がいるだけで、みんな安心して前に出れる」
その言い方が、妙に真剣だった。
リィナの喉がきゅっとなる。
(そんなの……ずるい)
褒められるだけじゃなくて、
存在を肯定されると、涙が出そうになる。
リィナが俯いた瞬間、
カイが少しだけ距離を詰めた。
「リィナ」
「……なに?」
「……噂、聞こえた?」
「えっ」
噂。
恋してる説。
リィナの心臓が跳ねた。
(え、カイくんが話題にするの!?)
リィナは正直に答えてしまった。
「……聞こえた」
カイは一瞬黙った。
風が草を揺らす。
「……どう思った?」
「えっ……」
どう思ったって――
(どう思えばいいの!?)
リィナは頭が真っ白になりながら、でも逃げられなくて、言葉を探した。
「……変な噂だなって……」
「変?」
「うん……だって、カイくんは天然で……優しくて……みんなに……」
途中で自分の言葉が止まった。
(……みんなに?)
(カイくんって、みんなに優しい?)
本当?
リィナの中で、昨日のことが蘇る。
“固定回復役だから”
“僕の”
“独占するよ”
――あれは、みんなにじゃない。
リィナは混乱したまま、最後に小さく付け足した。
「……優しいから」
カイは息を吐いた。
「……そっか」
「……うん」
沈黙。
リィナが耐えきれず、慌てて言う。
「でも、そういう噂って、すぐ消えるよ!」
カイが静かに言った。
「……消えたら困る」
「えっ」
リィナの耳が、いま確かに拾った。
消えたら困る?
困る?
(え、え、え……)
リィナが固まると、カイはふわっと笑って、いつもの声に戻った。
「……なんてね」
「えっ、冗談?」
「冗談」
でも目が、冗談じゃない。
リィナは胸が苦しくなる。
(冗談……?)
(冗談なのに……苦しい……?)
リィナは鈴を握りしめた。
リン、と小さく鳴る。
カイがその音を聞いて、微笑んだ。
「その音、やっぱり好き」
「……もう、からかわないで」
「からかってない」
「からかってる」
「本音」
本音。
その言葉が、胸に落ちた。
・
荷馬車は無事に目的地へ着いた。
商人が何度も頭を下げる。
「ありがとうございました!本当に助かりました!」
報酬を受け取った帰り道。
ギルドへ戻る途中、リィナはぽつりと言った。
「私……目立つの、怖かった」
カイが頷く。
「うん」
「でも……今日、少しだけ大丈夫だった」
「うん」
「仲間がいるから……」
リィナがそう言った瞬間。
カイの歩みが、一拍遅れた。
「……仲間」
「うん、仲間」
「……仲間、ね」
その声が、少しだけ――
苦しそうだった。
リィナは立ち止まる。
「カイくん?」
カイは笑う。
「なんでもない」
「……ほんと?」
「ほんと」
でも、リィナは気づいてしまった。
カイの“ふわふわ”は、
時々、薄くなる。
その薄くなったところに、
“本当の顔”が隠れている気がする。
そしてその本当の顔は――
少しだけ、寂しそうだった。
・
ギルドの扉が見えた頃。
ミラが追いついてきて、リィナの耳元で囁いた。
「リィナ」
「えっ」
「噂、消えないよ」
「えっ」
「だってカイが、消す気ないもん」
リィナの顔が真っ赤になる。
(消す気ない……)
(恋してる説……)
(私……?)
答えはまだ出ない。
でも、胸はずっと忙しい。
リィナは鈴を握りしめて、扉を開けた。
ガラン、と鈴が鳴る。
その音はきっと――
“恋”の始まりの音に、少し似ていた。
=======
次回、
第5話「おっとりは“弱さ”じゃない回」
リィナが自分を責めたとき、カイが“策士”じゃなく“本音”で支えます。甘さが一気に増える回です♡
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