天然だと思ったギルド仲間が、実は策士で独占欲強めでした

星乃和花

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後日談②「ギルド公認デート(※ただの買い出し)」

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その日の依頼は、戦闘じゃなかった。

「備品の買い出しです」
受付係が淡々と言う。「回復薬の材料、包帯、携帯食、あと……ロープ」

ガラムが眉をひそめる。

「ロープ?」

ミラが即答した。
「カイの独占用じゃない?」
カイ「違うよ」
リィナ「えっ!?」
カイ「違うよ(即答)」
ミラ「即答が怪しい」
ガラム「殴る」
カイ「殴らないで」

リィナは慌てて話題をそらした。

「か、買い出し、私も行きます!」
受付係が頷く。

「お願いします。……カイさん、同行で」
リィナ「えっ」
カイ「うん」
受付係「安全面のためです(にっこり)」

絶対、別の意味がある。

リィナは顔を赤くしながら、荷物袋を抱えた。

(これ、デートって言われるやつ……?)
(でも、買い出しだよね……?)

リィナが真面目に悩んでいる間に、ミラが背中を叩いた。

「いってらっしゃーい、ギルド公認」
「公認って何ですか!?」
「噂が確定したから」
ガラムが言う。「もう隠す意味ない」
「隠してないです!」
カイ「隠してる」
「隠してない!」
カイ「可愛い」
「今それ言うのやめて!」

ギルドの玄関が爆笑で揺れた。



市場は昼でも賑やかだった。

香辛料の匂い、焼き菓子の甘い匂い、魚の匂い。
声も大きい。人も多い。

リィナは、いつもの癖で鈴を握りしめる。

リン。

(落ち着いて……買い出しはお仕事)

そう思って歩き出した瞬間、肩が誰かに当たった。

「うわっ」
「危ないよ」

カイが即座にリィナを引いて、自分の後ろに置く。

(早い…)

リィナが息をのむと、カイはふわっと笑った。

「第六条」
「えっ」
「手、いつでも条項」

そう言って、当然みたいに手を差し出す。

リィナは赤くなる。

「こ、ここ、人いっぱい……」
「だから」
「……だから?」
「逃さない」

言い方が優しいのに、意味が独占。

リィナは観念して、そっと手を握った。

「……ぎゅってしないでね」
カイ「する」
「するの!?」
「転ぶから」
「転ばないよ!」
「転ぶ」
「転ばない!」
「……転ぶ」

負けた。

手を繋いだ瞬間、世界が少しだけ静かになった気がした。

(あ、安心する)

悔しい。
でも安心する。



最初の店は薬草屋。

リィナがメモを見て、真面目に言う。

「えっと、回復薬の材料は……銀葉草と、赤い実と、乾燥した……」
「月苔」
カイが即答する。
「えっ、なんで知ってるの?」
「君が昨日、口に出してた」

見てる力が怖い。

薬草屋のおばちゃんがにこにこして言った。

「仲良しだねえ」
リィナ「な、なか……」
カイ「恋人です」

即答。

リィナが咳き込んだ。

「カイくん!?!?」
カイ「違う?」
リィナ「ち、違わないけど!今言うの!?」
カイ「言う」
「なんで!」
「言いたいから」

条項(番外編①)がここで発動してる。

おばちゃんが大笑いした。

「はいはい、若いねえ!おまけしとくよ!」
リィナ「えっ、すみません……!」
カイ「ありがとうございます」

リィナは小声でカイに言う。

「……おまけ目的?」
カイ「違う」
「じゃあ何」
カイ「事実を言っただけ」
「……言う場所考えて」
カイ「考えた」
「考えた結果これ!?」
「うん」

どうしてこうなる。



次は布屋。

包帯用の布を選ぶ。

リィナは真剣に布を触っていた。

「これ、肌に優しい……」
カイ「君の肌に?」
リィナ「えっ、ちが、包帯の……!」
カイ「じゃあ君用も買う」
「買わない!」
「買う」
「買わない!」
「買う」

押し問答している間に、店主が笑った。

「お嬢さん、顔赤いよ」
リィナ「うぅ……」
カイ「可愛い」
リィナ「店主さんの前で言わないで!!」

店主が肩を震わせた。

「いいねえ、若いって」

もうやめて。

リィナの心が溶ける。



次は携帯食の屋台。

干し肉とナッツと乾燥果物。

リィナが袋を受け取ろうとした瞬間、屋台の青年が言った。

「回復役さん、いつも頑張ってるね」
リィナ「えっ……ありがとうございます……」

青年は爽やかに笑う。

「この間の護衛、噂になってたよ。助かったって」
リィナは嬉しくて、頬がゆるんだ。

「……ほんとですか」
「ほんと。回復役がいるパーティは強いからね」

その瞬間。

リィナの手が、すっと引かれた。

カイだった。

「……彼女に近い」

青年が目を丸くする。

「え?俺、ただ――」
カイ「近い」
青年「いや、普通にお礼を……」
カイ「遠いとこで言って」

遠いとこで言って、は新しい。

青年は困り笑いした。

「……軍師さん、過保護すぎ」
カイ「うん」

認める。

リィナは慌てて言った。

「か、カイくん!大丈夫だよ!」
カイ「大丈夫じゃない」
「なにが!」
カイ「君が笑った」

意味が分からない。

リィナが固まると、カイは静かに言った。

「君が他の人に笑うの、嫌」

嫌。

その言葉が、鈍く胸を叩いた。

(え……)

甘いのに、重い。

リィナは顔を真っ赤にして、小声で言った。

「……私、笑っちゃだめ?」
カイがすぐに首を振る。

「だめじゃない」
「じゃあ……」
「でも、僕が欲しい」

欲しい。

言い方が真剣すぎる。

リィナは脳が真っ白になって、思わず握っていた手をぎゅっと握り返した。

「……ほ、欲しいなら……」
カイ「うん」
「……笑う」
カイ「え?」
リィナ「カイくんに笑う……」

言った瞬間、恥ずかしさで爆発しそうになる。

(私、何言ってるの!!)

でもカイは一拍止まってから、ものすごく静かに言った。

「……好き」

リィナ「やだ……」
カイ「好き」
リィナ「いま市場!」
カイ「好き」
リィナ「条項、増える!!」
カイ「増やす」

増えるの確定。



最後はロープ屋。

リィナがロープを手に取る。

「これ、丈夫そう」
カイ「うん」
リィナ「でも、何に使うんだろう」
カイ「君を逃がさない」
リィナ「えっ」
カイ「冗談」
リィナ「冗談に聞こえない!!」

店主が腹を抱えて笑った。

「いいねえ!縁起物だ!おまけする!」
リィナ「えっ、また!?」
カイ「ありがとうございます」

リィナは眉をひそめる。

「……おまけ目的?」
カイ「違う」
「じゃあ何」
カイ「恋人の特権」
「特権って何!?」
カイ「言いたいことを言える」
「言いすぎ!!」

リィナがぷんすかしていると、カイはふっと言った。

「怒ってるのも可愛い」
「それも条項にするの!?」
「する」

もう無限。



買い出しを終えて、ギルドへ戻る道。

荷物はカイが全部持っている。

リィナは申し訳なくて言った。

「半分持つよ」
「だめ」
「なんで!」
「手が塞がる」
「塞がったら?」
「繋げない」
「……それだけ?」
「それだけ」

重い荷物より、手を繋ぐ方が大事。

リィナは顔を赤くして、でも小さく笑った。

「……カイくん、変」
カイ「うん」
リィナ「認めるの?」
カイ「恋って、変になる」

素直すぎる。

ギルドが見えてきた。

すると入口で、ミラが腕を組んで待っていた。

「おかえり」
リィナ「ただいま……」
ミラ「デートどうだった?」
リィナ「デートじゃないです!」
ガラム「デートだろ」
カイ「デートだった」

リィナは照れてますます赤くなる。

ミラがニヤリと笑う。

「で?条項、増えた?」
カイ「増えた」
リィナ「増やしたの!?」
カイ「第八条」
ミラ「何?」
カイ「市場で他の男に褒められたら、僕の前で笑う」
リィナ「やめてぇぇ!!」

ギルドが爆笑した。

リィナは顔を覆って叫ぶ。

「買い出し、二度と行かない!!」

カイがさらっと言う。

「じゃあ、僕が全部買う」
「それも違う!」
カイ「一緒に行くのがいい」
リィナ「……もう……」

その「もう」は、怒ってるのに甘い。

リン、と鈴が鳴った。

嬉しい音。

カイが小さく言う。

「その音、好き」
リィナは小声で返す。

「……私も」

その瞬間、カイの顔が少しだけ崩れた。

(また、負けた)

そんな顔。

恋は、軍師でも勝てないらしい。
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