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第8話 業務外手当の誓い — 婚約から恋へ、「楽しいから達成だ!」
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◇俺 — 春灯 佑真
庁舎前広場。
“寄付箱の日”として人が集まる朝を、今日はもう一つの名前で呼ぶ。
E-01:Extra Allowance Oath(業務外手当の誓い)。
公務じみた私事を、正面からやる。
壇上は質素だ。D-01(定義更新台)に札が一枚、横にT-12(迷子札)の小箱。星形クリップは手帳で上向き、猫監査(二匹)は待機。
俺は深呼吸し、手順を開く。
「手順確認。
1)L-33(灯り落とし:今日は朝なので“音量落とし”)
2)K-07(休むのは任務:宣言版)
3)E-01(誓いの読み上げ)
4)R-00(袖きゅの権利・相互確認)
5)S-11(必要なら、しゃべらない休戦)」
視線を上げる。
りらが保温壺を抱えて、てちと上がってくる。髪に留めた小さな鈴が、朝の光でちりと鳴った。
◇わたし — 夕星 りら
胸の奥がぽわ。——でも暴れない。
今日は“誓い”の日。暴発は、お休み……のつもり。
でも、もしが起きたら大丈夫。S-90(配布式)もC-22(猫回廊)も、ちゃんと棚にある。
春灯さんと目が合う。袖、きゅ。
きゅが返ってきて、安心が喉の奥に溶けた。
「それでは、K-07:休むのは任務を先に」
「今日は、やわらかく始めます」
宣言は、風鈴より静かに広場へ落ちた。
◇俺
「E-01、読み上げる」
札を掲げ、短く、はっきり。
E-01:業務外手当の誓い
① R-00:互いの“袖きゅ”を、いつでも有効とする。
② R-12:手帳の“休む”に星形クリップが挟まれていたら、おやすみ三回を履行する。
③ K-07:台所休憩は“任務”。甘味投与(M-33)+必要に応じM-34(ミント)で余白を作る。
④ A-01とA-02:悲しみの棚とうれしさの棚を並べて開く。ひとりで開けない。
⑤ C-01:いっしょに条項——“ちゃんと”より“いっしょに”を優先する。
⑥ DI(Delight Index)は、1以上を目安に。事故は福祉、制度はやさしさの保管庫。
⑦ S-11:星が出たら、しゃべらない休戦を宣言する。
⑧ 定義は更新可能。更新の合図は、楽しいから達成だの一言。
読み終えて、彼女に向き直る。
「以上を、君と運用したい。計画は、二人で“楽しく”到達だ」
◇わたし
胸の石が、ころん、と返事をした。
「わたしも、E-01に賛成します。——“恋”はまだ勉強中です。でも、好きになるって、こういうことの積み重ね。“いっしょに”はもう知っています。達成も」
言うと、ぽちゃん。
ぽと……レモンが一粒、足もとへ。
(やってしまった)と見上げたら、春灯さんがもう拾って、小箱にすっと滑らせた。S-90、発動。
広場の子どもたちが拍手する。事故は福祉。胸が、すうっと軽くなる。
「それから、交換したいものが」
カバンからT-12の空白札を二枚。
「“迷子札”、互いに、名前を書きませんか。——“あなたに帰る”って」
春灯さんの目が、やわらかくほどけた。
◇俺
木札に、ゆっくり書く。
〈春灯佑真——夕星りらに帰る〉
手が震えないように、深呼吸。
彼女の札には**〈夕星りら——春灯佑真に帰る〉。
鈴を付け、結び目をちょこん火**で蝋封。火は今日も誠実だ。
「指輪の前に、道順を」
「はい。R-05:Rescue & Reunionの最短ルートです」
俺は片方を胸ポケットに、彼女は襟元に結ぶ。猫監査がにゃで承認し、C-22(猫回廊)が自然発生して、人の輪がやわらかく広がった。
「最後に、R-00」
互いに袖を差し出し、きゅ。
いち、に、さん、よん、ご。
G-05が、広場の騒がしさをほどいていく。
◇わたし
「春灯さん」
「うん」
「こわくなったら、A-01の鍵を一緒に持ってください。——わたし、A-02(うれしさの棚)から“今日”も登録します」
指で、空に文字を書く。
〈庁舎前で“迷子札の誓い”をした〉
登録、完了。
胸の奥に、星がひとつ点いた感じがした。
出ない。今日は、満天じゃなくていい。点がひとつで、充分。
そのとき。
空から、ぽと。——一粒だけ、ミント。
(新種じゃない、いつもの“がまん”)
「緊張、した?」
「少し」
春灯さんが苦笑する。「だが、DI=1.8(体感)」
「高い!(嬉)」
◇俺
式を締める。
「S-00:やわらかさの宣言」
「今日は、やわらかく続けます」
彼女が続ける。「——やわらかく、帰ります」
拍手。猫監査は尻尾で捺印。子どもが「おめでとう!」と叫び、商人たちが口々に「砂糖は平和だ」と笑う。
俺は手帳を開き、赤で一行。
付記:婚約=条文の開始。恋=条文を“いっしょに”運用すること。
星形クリップを、彼女の目の前でぱちと留める。合図だ。
「夕星りら」
「はい」
「計画通りにならないが——」
「——楽しいから、達成だ!」
声が重なった瞬間、広場の上にきらっと星がひと粒、昼の空で意地を張った。
可愛いは、やっぱり、強い。
◇わたし
式が終わると、寄付箱の列ができ、迷子台は“名前交換会”に早変わり。団子さんとコショウさん(猫)も来て、にゃで祝辞。
春灯さんが小声で言う。
「今日のK-07、台所じゃなくて“ベンチ版”でやろう。橋の中央、ラテ一口交換」
「B-05(半歩近く)、G-10(ぎゅっと10秒)も」
「もちろん」
合図して、袖、きゅ。
世界はさっきより、やわらかい。
俯かない。
顔を上げたら、昼なのに、空はちゃんと広かった。
——完——
庁舎前広場。
“寄付箱の日”として人が集まる朝を、今日はもう一つの名前で呼ぶ。
E-01:Extra Allowance Oath(業務外手当の誓い)。
公務じみた私事を、正面からやる。
壇上は質素だ。D-01(定義更新台)に札が一枚、横にT-12(迷子札)の小箱。星形クリップは手帳で上向き、猫監査(二匹)は待機。
俺は深呼吸し、手順を開く。
「手順確認。
1)L-33(灯り落とし:今日は朝なので“音量落とし”)
2)K-07(休むのは任務:宣言版)
3)E-01(誓いの読み上げ)
4)R-00(袖きゅの権利・相互確認)
5)S-11(必要なら、しゃべらない休戦)」
視線を上げる。
りらが保温壺を抱えて、てちと上がってくる。髪に留めた小さな鈴が、朝の光でちりと鳴った。
◇わたし — 夕星 りら
胸の奥がぽわ。——でも暴れない。
今日は“誓い”の日。暴発は、お休み……のつもり。
でも、もしが起きたら大丈夫。S-90(配布式)もC-22(猫回廊)も、ちゃんと棚にある。
春灯さんと目が合う。袖、きゅ。
きゅが返ってきて、安心が喉の奥に溶けた。
「それでは、K-07:休むのは任務を先に」
「今日は、やわらかく始めます」
宣言は、風鈴より静かに広場へ落ちた。
◇俺
「E-01、読み上げる」
札を掲げ、短く、はっきり。
E-01:業務外手当の誓い
① R-00:互いの“袖きゅ”を、いつでも有効とする。
② R-12:手帳の“休む”に星形クリップが挟まれていたら、おやすみ三回を履行する。
③ K-07:台所休憩は“任務”。甘味投与(M-33)+必要に応じM-34(ミント)で余白を作る。
④ A-01とA-02:悲しみの棚とうれしさの棚を並べて開く。ひとりで開けない。
⑤ C-01:いっしょに条項——“ちゃんと”より“いっしょに”を優先する。
⑥ DI(Delight Index)は、1以上を目安に。事故は福祉、制度はやさしさの保管庫。
⑦ S-11:星が出たら、しゃべらない休戦を宣言する。
⑧ 定義は更新可能。更新の合図は、楽しいから達成だの一言。
読み終えて、彼女に向き直る。
「以上を、君と運用したい。計画は、二人で“楽しく”到達だ」
◇わたし
胸の石が、ころん、と返事をした。
「わたしも、E-01に賛成します。——“恋”はまだ勉強中です。でも、好きになるって、こういうことの積み重ね。“いっしょに”はもう知っています。達成も」
言うと、ぽちゃん。
ぽと……レモンが一粒、足もとへ。
(やってしまった)と見上げたら、春灯さんがもう拾って、小箱にすっと滑らせた。S-90、発動。
広場の子どもたちが拍手する。事故は福祉。胸が、すうっと軽くなる。
「それから、交換したいものが」
カバンからT-12の空白札を二枚。
「“迷子札”、互いに、名前を書きませんか。——“あなたに帰る”って」
春灯さんの目が、やわらかくほどけた。
◇俺
木札に、ゆっくり書く。
〈春灯佑真——夕星りらに帰る〉
手が震えないように、深呼吸。
彼女の札には**〈夕星りら——春灯佑真に帰る〉。
鈴を付け、結び目をちょこん火**で蝋封。火は今日も誠実だ。
「指輪の前に、道順を」
「はい。R-05:Rescue & Reunionの最短ルートです」
俺は片方を胸ポケットに、彼女は襟元に結ぶ。猫監査がにゃで承認し、C-22(猫回廊)が自然発生して、人の輪がやわらかく広がった。
「最後に、R-00」
互いに袖を差し出し、きゅ。
いち、に、さん、よん、ご。
G-05が、広場の騒がしさをほどいていく。
◇わたし
「春灯さん」
「うん」
「こわくなったら、A-01の鍵を一緒に持ってください。——わたし、A-02(うれしさの棚)から“今日”も登録します」
指で、空に文字を書く。
〈庁舎前で“迷子札の誓い”をした〉
登録、完了。
胸の奥に、星がひとつ点いた感じがした。
出ない。今日は、満天じゃなくていい。点がひとつで、充分。
そのとき。
空から、ぽと。——一粒だけ、ミント。
(新種じゃない、いつもの“がまん”)
「緊張、した?」
「少し」
春灯さんが苦笑する。「だが、DI=1.8(体感)」
「高い!(嬉)」
◇俺
式を締める。
「S-00:やわらかさの宣言」
「今日は、やわらかく続けます」
彼女が続ける。「——やわらかく、帰ります」
拍手。猫監査は尻尾で捺印。子どもが「おめでとう!」と叫び、商人たちが口々に「砂糖は平和だ」と笑う。
俺は手帳を開き、赤で一行。
付記:婚約=条文の開始。恋=条文を“いっしょに”運用すること。
星形クリップを、彼女の目の前でぱちと留める。合図だ。
「夕星りら」
「はい」
「計画通りにならないが——」
「——楽しいから、達成だ!」
声が重なった瞬間、広場の上にきらっと星がひと粒、昼の空で意地を張った。
可愛いは、やっぱり、強い。
◇わたし
式が終わると、寄付箱の列ができ、迷子台は“名前交換会”に早変わり。団子さんとコショウさん(猫)も来て、にゃで祝辞。
春灯さんが小声で言う。
「今日のK-07、台所じゃなくて“ベンチ版”でやろう。橋の中央、ラテ一口交換」
「B-05(半歩近く)、G-10(ぎゅっと10秒)も」
「もちろん」
合図して、袖、きゅ。
世界はさっきより、やわらかい。
俯かない。
顔を上げたら、昼なのに、空はちゃんと広かった。
——完——
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