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十歳になって酒が解禁されたのをいいことに、壱成が部屋で酒盛りすることを目的にして訪ねてくるようになったのは別にいい。
自分だって一か月ほど前一足先にアルコールが解禁されたとの日には、一人ドラッグストアでありとあらゆる酒を買って帰って家族に呆れられたのは記憶に新しい。
今までできなかったことが出来るようになった、それがやけに嬉しいのは理解できた。
壱成は仁志が飲もうと思わないタイプの、いわゆる瓶に入った透明な日本酒を持ってくる。仁志は二十歳の初日で自分がアルコールに強くないタイプであることを認識しているため、もっぱらアルコ―ル度数低めのものしかもう手を出さない。
それはギリギリで梅酒ぐらいなものだ。
ビールの苦みは好きになれなかったし、日本酒のような酒はどれも度数が高すぎていけない。果実酒をソーダでジュースぐらいに薄くしてしまえばまだ飲めそうだが……それならもうジュースでよくねぇか? とう疑問を持ってしまいそれからアルコールへの興味は消え失せてしまった。
壱成は俺が飲まないのを知っていても、一人分の酒を手に俺の部屋に来る。
別段一人暮らしをしているというわけではないが、両親ともに働きに出ているため、日中は騒いでもいい環境だ。
インターホンが鳴ったので仕方なく開けてやると、約束もしていないのに壱成が当たり前のようにドアの前に立っていて、その手には近くのスーパーの袋があった。
中身は聞かずともわかる。
缶の形が袋ごしにもわかるからな。

「本日はお日柄もよく」

に、と歯を見せた壱成は今にも雨が降り出しそうな曇り空を背にしている。
湿気が多いと膨らむ壱成の癖っ毛は、もこもこと綿あめのように膨らんでいる。

「今日はちゃんと摘まみも買って来た」

今日は給料日だからとか言いながらずかずかと上がり込んでくる。
仁志の部屋は二階にのぼったすぐ突き当たりにある。
隣は6個年上の姉の部屋だが、結婚して家を出ているため空き部屋と言ってもいい。
そのドアには俺が勝手に部屋に入れないように鍵がかけてあった。
二階にはトイレついているが、使うのは仁志のみという状況のため、母親からは「自分で掃除しなさいね」と厳命されている。トイレットペーパーが切れているかどうかも自分で見ておかなければならない。これを忘れているとすっきりとした気分の時に「あれ、紙がないぞ」と焦ることになる。


「お前にはこれな」

部屋のローテーブルにどん、とおかれたのは炭酸飲料の1.5リットルのものだった。
仁志に酒を飲むモチベーションがないことをいつの間にか悟ったらしい。

「つまみは、珍味系と甘い系とポテト系な」

至れり尽くせりのいつもに比べて非常に豪華な酒盛りだ。
……今日はいったい何時間居座るつもりだ?

ちなみに今の時刻は午前10時30分だ。
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