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壱成は仁志に比べればまだ酒に強い方だ。
飲み会にも意欲的に参加してるみたいだし、そういう明るい場の雰囲気が好きなんだろうなと思う。

しかし壱成が買って来た量は壱成を酔わせるには十分な量だった。
毎度買いすぎて飲めなかったものは仁志の家に置き去りにされるため、残ったものは仁志の両親が飲むことになっている。家を使わせてもらっているなりの献上品とでもとらえていいだろう。

顔を真っ赤にした壱成は、でかめの缶チューハイを手にもって、前傾姿勢になってローテーブルにぐでっと頭を預けている。

「おい大丈夫か? もう今日はその辺でやめとけば?」

仁志にとってはただのお菓子パーティーと化しているため、完全に素面のままだ。
壱成はじと目で仁志のベッドの下を意味ありげに睨みつけている。

まさか仁志のお宝がそこに一冊伏せられているのに気付いているのか?

デジタルでそういうのは事足りるんだろうが、仁志はなぜか紙のものも手にしておきたいタイプだ。隠し場所に苦心してもどうせばれるんなら、とわかりやすいベッドの下に’よく使うおかず’を置いている。

 
「なぁ、俺まだ初えっちしてないんだけど」

壱成の目は座っている。

「え?」

いきなりの話題の提供に仁志はポテチを無限につまんでいた手を止めた。

「俺たちもう大学生よ⁉︎ 中学一年の頃から周りからもおしどり夫婦と揶揄られる程の公認カップルなのになんでだよ! 確かに急がす気はないって言ったけど! それって中学生の頃の話だし!? もうそろそろいくね? 俺が見た目通りの不真面目人間じゃないってそろそろわかってんだろうし! 親にもお互い紹介して完全に親公認なのに、絶対おかしい」

「いや、うん、はい」

中学生から同じ学校に通っている仁志は二人がからかわれているのを目の当たりにしてきていたため、その光景が目に浮かぶような気さえする。

「俺なんか、『ちゃんと避妊してるわよね?』てちょっと言いにくそうに母親に釘刺されたわ。避妊もなにも、なーんにもしてないんですけど、俺のオレくんなんにも活躍したことないまっさらな童貞くんなんだけど! 彼女いるのにそんなんって誰も思わねーからさぁ、当然のように彼女とヤリまくりの爛れた学生生活送ってるって思われてるし、もうヤダ……俺だってえっちしてぇよ!」

男子高校生としての悲鳴のような言葉を吐いて、壱成がぐびぐびと缶チューハイを呷った。

「お、おぅ」

カミングアウトが突然すぎる。
今までそういう話全くしてこなかったので、壱成は彼女の楓に気を使ってそういう性的な話を友達にしない義理堅い男なのかと思っていたが違ったらしい。
同じ中学に通っていたので楓と仁志も当然知り合いであり、壱成を通じて割と仲がいい部類に入る。

女友達のそういうのって想像するのなんか申し訳ないなと思って俺から話を振ることもなかった。
なんていうか善良なのだ仁志は。
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