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しおりを挟む「あ、サボってる~悪いんだ~」
学校にはいくつかのサボりスポットがある。
その一つがこの体育準備室なる部屋だ。
そもそも体育という科目は騎士訓練という科目に代わってしまっているため、この学校には存在しない。
士官学校になる前の大昔の名残であるだけの空き教室だ。
とはいえ誰もかれもがそこに入れるというわけではない。
部屋に入るには鍵が必要だ。
今まで澄也以外の人間がこの部屋にいるのを見たことはなかった。
なぜって、澄也がカギを持っているからだ。
マスターキーと複製された鍵を三つ。
一年ほど前に、澄也をかわいがってくれていた先輩が卒業するからやるよとくれたものだ。
仲のいい友達と一緒に共有しようと思っていたこともあるが、やめた。
一人になれる場所というのはこの学校ではあまりない。
生徒数が多いためどこにいても誰かしらの目がある。
澄也はこの部屋を一人になるための部屋として位置付けた。
少々古めかしくはあるものの、二人掛けのソファがひとつとテーブルがひとつ。
書類棚が二つあって、ところどころさび付いている。
一応見てみたが、中身は空っぽだった。
幸い電源は生きていたので、電気ケトルを持ち込み、インスタントコーヒーと砂糖と紅茶とミルクを置けば憩いの空間と言える。
長持ちする菓子をいくつか置いておけば完璧。
古すぎるソファの上には家でもてあまされていたソファーカバーを拝借してきてかけた。親の趣味なので少し澄也の趣味とは外れているが、汚いままよりは断然いい。
澄也は頑張りすぎて嫌になったときや一人で考えたいときにはこの部屋に籠った。
何にもない部屋だ。
自分の思想に浸るにはもってこいだった。
なので、この部屋で自分以外の人間を見ることになるとは思っていなかった。
津島は俺の第一声で眉をしかめた。
授業中だというのをわかっているんだろう。俺の姿を見てなんだお前かよという顔をする。一応俺のことは認識していたらしいと分かって俺はなんだかうれしい気持ちになる。
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