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しおりを挟む「お前もサボりだろうが」
「俺は自習。課題も出したし問題ない。津島、……どうやって入った?」
我が物顔でソファに寝そべっている津島は、不機嫌そうに澄也を見ると、自分のポケットに入っていた妙な形に曲がったクリップを机の上に放り投げた。
「まさかこれで?」
掌の上で歪な形のそれをしげしげと見る。
「へぇ~~~、泥棒の才能もあるのか」
別に嫌みを言ったわけではない。いろんなことが出来るんだな、というそういう意味だ。
「てめぇこそなんだ」
津島は身体を起こさない。
寝そべったままで澄也と会話をしている。
「はぁ? この部屋の主は俺なんですけど~! その津島が食い散らかした菓子も、ソファも俺が整えたんだけど!」
どけ、俺が座る!とでかい足を引っ張ったがびくともしない。
今度は腕を引っ張り、最後には背中を押した。ソファの上から転がり落してやろうとしたのに全く動かない。
こいつの体重何キロだ?
「はぁ、はぁ。今回はこれぐらいにしておいてやる」
力いっぱい押して押して押しまくった俺は諦めて、簡易椅子に座りとりあえずコーヒーを淹れることにする。
別にソファに座らずともくつろぐことはできる。
個包装されたドーナツが置いてあったはずだがすべて無くなっている。
机の上にほったらかされたごみの数はドーナツの数と同じだ。
一人でどんだけ食ってんだ。
よく太らないな。そういう体質か?
「……ドーナツ後で補充しとけよ」
俺はどっかりとソファーに陣取っている津島を軽く睨んだ。
「あぁ?」
「いや、ドーナツ! 新しく買ってまたそこに置いとけって言ってんの! 人のもん勝手に食べておいてなんで偉そう? 別にドーナツじゃなくてもいいけど~焼き菓子がいいんだよな、日持ちするしコーヒーにも紅茶にも合う」
「気が向いたらな」
思ったよりも素直な反応が返ってきて拍子抜けしてしまう。
見た目がすでに貫禄があるため同じ年というのが信じされないが、話してみると妙な気安さがあった。
「絶対な」
「……ウルせぇ」
俺は熱々のお湯をマグカップに注ぐ。
そういえばカップは俺用の一つしかなかった。
使っていないという事は一応遠慮したのか?
俺はすぐに香りの飛んでしまう安いコーヒーに舌鼓を打った。
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