待ち合わせなんかしない

染西 乱

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「ぅわ。……寝てる」

体育準備室で寝入っている津島を見て、澄也はもの珍しさにその寝顔を覗き込んだ。
いつも見るたびにイカっている眉がすっと左右に伸びている。
穏やかな顔をした津島は意外と男前の顔をしている。
いつもは怖い雰囲気といかついヤバそうな男という印象しか得られないが、こうしておとなしくしていれば案外「イける」。

日本人にしては鼻が高い。外国の血が混じっているのかもしれない。

何の手入れもしていないのが丸わかりの唇はかさかさに乾燥していて、皮をめくれば今すぐにでも血が吹き出そうだ。
びりっと思いきり皮を引っ張って起こしてやろうか。
血で真っ赤になった唇は紅を引いたみたいに鮮烈だろう。

開けられた第一ボタンと第二ボタンの間からは太い鎖骨が見える。

「いいなぁ」

生まれながらの天才。
天に与えられた均整の取れた肉体美。

俺は津島の鎖骨を指でなぞった。骨が太い。
どうせならと思って、津島のシャツのボタンをはずしていく。

タンクトップのインナーもえいやと上にずらす。
そこには圧倒的な『美」があった。
彫刻の見本のような身体は、脈動して温かい。

しかしその胸の頂にある乳首は鍛え抜かれて曝すところなどない完ぺきな身体の中で浮ていている。

薄ピンクのきれいな色をした処女乳首だった。

「うわぁ、なにコレ」

ドン引きするぐらい綺麗な乳首だ。

いや、これだけ肌が白いのだから乳首だって色素が薄くても不思議はない。
が、そのピンク色は男ならば誰もが夢見るほどの可憐さだ。
この部屋が寒いのかつん、と立ち上がっている。

「あは、かわいい」

無意識に手を伸ばして指で捏ねる。
乳輪もきれいな形をしている。男の乳首しておくのがもったいないぐらいだ。

乳輪をくるくるとなぞって、寒さに少し硬くなっている乳首を押しつぶす。
ぐりぐりとつぶしていると、芯を持ってきた乳首は勃起するかのように硬くなった。
感じてるのかな、と思いながらかりかりと乳首のぎりぎりをカリカリと爪でひっかくようにして刺激していく。血行が良くなり、先ほどまでより赤くなってきたそこは優しく丁寧に指の腹ですりすりと撫でてやると、「ン」と津島の口から声が漏れた。

「わぁーもしかして感じてる?」

くすくす笑いながら、固く勃起した乳首を根元から引っ張りぐりぐり苛める。
こりこりした触感を楽しみながら、それを続けていると、「ぁ」と小さく悩まし気な声がした。

「乳首が弱点かぁ」

愉快だ。
頭が冴えている。

「ぁ……ァ、はぁ」

津島は俺の指の動きに合わせて悩まし気な息をついている。

もう起きちゃうかな。津島の呼吸が浅くなってきた。
俺は乳首を引っ張るのをやめて、シャツを元に戻した。

何食わぬ顔をして、起きてしまった津島の顔を覗き込む。
いつも顔色が悪いが今は、少し頬に赤みがさしていて人間味がある。

「起きた?」

俺は軽く微笑みを浮かべて津島の前に、スペアキーを差し出した。

「今度からはこれ使って入ってきていいよ。鍵穴ぐちゃぐちゃになったら困るしねー」

津島は寝起きの顔をしたままそれを受け取った。
ごつごつした骨の目立つ手だ。

「俺いま気分いーからさ、コーヒーいれてあげよっか?」

「いらねぇ」

起きているとほんとに強面だ。

「ふーん、あ、もしかしてコーヒー苦手とか?」

図星なのか津島は黙った。

「あー、苦いもんね? じゃぁ紅茶」

「別に……」

「俺の分のお湯沸すついでだからさ」

俺は機嫌よくマグカップを並べた。
相変わらずくそダサい津島のカップと百円で買って来た俺の適当なカップ。

俺は鼻歌交じりにゆっくりと沸騰した湯を注ぎ入れた。
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