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レッドライト
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近くにいた治癒院の人間の手を借りて全ての服を切ると、私は黙って治癒をはじめる。
誰が悪いなど、今考えても仕方のないことだった。
一度は彼から声をかけられ誘われていたのを断ったという罪悪感が少なからず胸に押し寄せてくる。私が彼の仲間だったならば、少なくとももう少し早く治癒してやれていただろう。
しかし私にも事情があるのだから仕方がない。
とめどなく流れている彼の血は当然ながら綺麗な赤い色だ。動脈からの出血がかなり多い。
自分の血の色とは全く違う。不思議なものだ。
勇者の容体は言葉を選ばずに言うなれば虫の息というのが1番適当な言葉だった。
ひゅーひゅーと喘鳴程度でも息をしているのが不思議なぐらいの怪我だ。
治癒してやると、その呼吸の乱れが治ってくる。
が、顔色は白を通り越して青ざめてしまっている。
体の損傷は治せても流れ出た血液を戻してやることはできない。
まっさらに治癒された彼の身体はとかく均整が取れていた。まだ身体にこびりついた血液は洗浄できていないが、近くにいた治癒士に毛布なり布団なりを持ってくるように指示する。
血液が不足すると身体を温める機能が低下するため、それを補うことが必要になってくる。
それに……人肌で温めればなお良い。
私は彼のパーティーメンバーの男の子を集めて、勇者が目覚めるまで彼の布団を温めた方が良いことを伝える。
彼らは話を聞くと、ハッとした顔をして互いに頷きあう。
毛布の準備が整う頃には勇者の身体は粗方綺麗になり、着ていたぼろい装備は全て取り除かれたため素っ裸の無防備な状態になっていた。
彼の身体には大きな古傷がいくつか残っている。
毛布を掛けていき、温め役の少年たちを呼び寄せた。
勇者の身体の回復力はすさまじく、マックスは恐ろしいことに二日で目覚めた。
目を開けたマックスはまわりが歓喜に溢れ騒ぎ立てる中、ひび割れた小さな声で一言だけ「なんだ、生きてるのか」と言った。
生きていることにまったく執着のない無味乾燥な一言。
まわりの声はかなり大きかったためその声を聞いたのは私だけだった。
「あんたは……ここは治癒院か……」
起き抜けでぼんやりとしているだろうに、あたりを見渡して状況を理解したらしいマックスは「そうか、生きてるのか」とだけ言い、私を見た。
「すまない。かなりの力を使ってもらったみたいだ」
自分の死亡時のありさまはわかっているらしく、腹にあった大きな傷が僅かな痕を残して塞がっていることを確認してから改めて頭を下げて礼を述べた。
そうして隣に寝ている少年たちの様子を見て、ほっと一安心した顔をする。
そうして、血の気の足りない青ざめた顔で「寒いな」と言う。
子供達に体を温めてもらっていたと言う話をすると、マックスは「そうか」と言い、少年たちの頭を順繰りに撫でた。
マックスの生に無頓着な様子は私を不安にさせた。
マックスはよかったと顔をくしゃくしゃにして泣きじゃくるパーティメンバーに、困ったような顔をして「心配かけて悪かったな」と言う。
「なにか胃に優しいものをお持ちします」
まずはやわらかく、消化の良いものが良いだろう。
それからというもの、私は黄桃を見るとマックスを思い出すようになった。
誰が悪いなど、今考えても仕方のないことだった。
一度は彼から声をかけられ誘われていたのを断ったという罪悪感が少なからず胸に押し寄せてくる。私が彼の仲間だったならば、少なくとももう少し早く治癒してやれていただろう。
しかし私にも事情があるのだから仕方がない。
とめどなく流れている彼の血は当然ながら綺麗な赤い色だ。動脈からの出血がかなり多い。
自分の血の色とは全く違う。不思議なものだ。
勇者の容体は言葉を選ばずに言うなれば虫の息というのが1番適当な言葉だった。
ひゅーひゅーと喘鳴程度でも息をしているのが不思議なぐらいの怪我だ。
治癒してやると、その呼吸の乱れが治ってくる。
が、顔色は白を通り越して青ざめてしまっている。
体の損傷は治せても流れ出た血液を戻してやることはできない。
まっさらに治癒された彼の身体はとかく均整が取れていた。まだ身体にこびりついた血液は洗浄できていないが、近くにいた治癒士に毛布なり布団なりを持ってくるように指示する。
血液が不足すると身体を温める機能が低下するため、それを補うことが必要になってくる。
それに……人肌で温めればなお良い。
私は彼のパーティーメンバーの男の子を集めて、勇者が目覚めるまで彼の布団を温めた方が良いことを伝える。
彼らは話を聞くと、ハッとした顔をして互いに頷きあう。
毛布の準備が整う頃には勇者の身体は粗方綺麗になり、着ていたぼろい装備は全て取り除かれたため素っ裸の無防備な状態になっていた。
彼の身体には大きな古傷がいくつか残っている。
毛布を掛けていき、温め役の少年たちを呼び寄せた。
勇者の身体の回復力はすさまじく、マックスは恐ろしいことに二日で目覚めた。
目を開けたマックスはまわりが歓喜に溢れ騒ぎ立てる中、ひび割れた小さな声で一言だけ「なんだ、生きてるのか」と言った。
生きていることにまったく執着のない無味乾燥な一言。
まわりの声はかなり大きかったためその声を聞いたのは私だけだった。
「あんたは……ここは治癒院か……」
起き抜けでぼんやりとしているだろうに、あたりを見渡して状況を理解したらしいマックスは「そうか、生きてるのか」とだけ言い、私を見た。
「すまない。かなりの力を使ってもらったみたいだ」
自分の死亡時のありさまはわかっているらしく、腹にあった大きな傷が僅かな痕を残して塞がっていることを確認してから改めて頭を下げて礼を述べた。
そうして隣に寝ている少年たちの様子を見て、ほっと一安心した顔をする。
そうして、血の気の足りない青ざめた顔で「寒いな」と言う。
子供達に体を温めてもらっていたと言う話をすると、マックスは「そうか」と言い、少年たちの頭を順繰りに撫でた。
マックスの生に無頓着な様子は私を不安にさせた。
マックスはよかったと顔をくしゃくしゃにして泣きじゃくるパーティメンバーに、困ったような顔をして「心配かけて悪かったな」と言う。
「なにか胃に優しいものをお持ちします」
まずはやわらかく、消化の良いものが良いだろう。
それからというもの、私は黄桃を見るとマックスを思い出すようになった。
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