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9.衛士と那岐
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「あ……っ、はあ」
貫かれ、那岐は声を漏らした。
「や、やば……。もう、イキそ……っ」
限界が近いことを素直に伝えると、衛士に激しく体を揺さぶられ何度目かの刺激で那岐は達した。
布団の上で体が弛緩する。開かれた脚が、ずるりと布の上を滑った。
「どうだった? ナンバー2のテクは」
まるで褒めて欲しそうに衛士が覗き込む。那岐は乱れた呼吸を整えながら、衛士を見上げた。
初めて男に抱かれた。
認めたくない心はさておき、体は気持ちが良かった。
那岐の反応を見れば、衛士にも一目瞭然だ。尋ねる顔も、どうだ悦かっただろうと言いたげだ。
だが正直に答えるのは、強姦された側としては癪だった。
「……トップの俺の方が上手い」
むすっとした表情で那岐は答えた。
衛士は一瞬驚いた顔をしたが、ぷっと笑った。
「さっきまで色っぽい顔してたくせに、ホント子供みたいだな。突っ込まれながら言うセリフじゃねーよ」
衛士はまだ達していなかったので、那岐の体に熱を埋めたままだった。
「じゃあ、口技も試してみるか? 上手いって言っただろ」
「それも俺の方が上手い」
即答すると、可笑しそうに衛士は笑う。挿れられたままなので、笑うと内側から体に伝わり妙な感覚だった。
ふぅん、と衛士は楽しそうな笑みを浮かべる。
「那岐の超絶口技テクも気になるけど、やっぱオレはこっちだな」
衛士はにやりと微笑み、予告なく腰を動かした。
「ん……っ」
まだ挿れられたままだったので予想はしていたが、衛士はまだ続けるつもりだ。
那岐は着崩れた衛士の襦袢を掴んだ。
「まだ、やんのか……っ」
「たりめーだ。オレがまだイッてねーだろ」
「今夜の客はどうするんだ。勃たなくて商売になら……っあ」
ほぼ毎日の営業となると、一日に一度が限界だ。達してしまえば、夜に差し支える。
「ご心配なく。今日の客は虐められるのが好きなど変態だから、玩具でたっぷり可愛がってやるさ。それよりも、こっちのが楽しめる」
まるで新しい玩具を見つけた子供のように、衛士は笑った。
「ふざけ……っん、あ」
そこが弱いのだと知ってしまった場所を、衛士に突かれる。
文句を言いたいのに、出てくるのは甘えるような吐息だけだ。
「く……っ。とっととイケ! 馬鹿!」
「ここじゃ簡単にイカないようになっちまってるから、時間かかるって分かってるだろ」
「あっ、あ」
また快感が高まっていくから、長引くのは困る。無様な姿は見せたくはない。那岐にはまだ、橘宮のトップとしてのプライドがある。
けれど、心とは裏腹に、体はもっととせがむように与えられる熱を求めてしまう。
「あ、衛っ……」
「那岐……っ」
熱を埋め込みながら、胸の小さな突起に舌が絡められた。普段は何も感じないのに、体が熱を持っているせいか、そんな場所まで気持ちいいと感じてしまった。
「んっ……」
びくりと体が震え、那岐は喉を反らせた。
また、イッてしまう。
高まっていく射精感に、那岐は求めるように衛士の襦袢を掴んだ。
「衛……士っ、また、イク……っ」
皺がつくほどに襦袢を握ると、衛士の熱が体から抜け腹の上にかけられた。
嫌なことに、体から衛士の熱が抜けた時にも体がじわりと疼いた。
「はぁ……。那岐……」
衛士の手が伸ばされ、そっと那岐の頬に触れる。
思わずどきりとしたが、衛士が身を崩したことで、ただそこに手を置いただけだと分かった。
勘違いした自分の馬鹿さに恥ずかしくなり、那岐は手で顔を覆った。
「何、顔隠してんだ?」
那岐のことなどお構いなしで、衛士は那岐の手を外した。
抱かれたことに恥じらいなど感じていなかったのに、勘違いをしたことの方が妙に照れる。衛士がじっと見てくるのも、余計に辛い。
「見んな、馬鹿」
ぽつりと呟くと、衛士は楽しそうにぷっと笑った。
強姦後のやり取りにしては、あまりにも普通だ。むしろ、いい雰囲気だ。
「何か、変な感じ……」
「変な感じって?」
衛士は那岐の髪を摘まみながら、首を傾げた。
那岐は上手く言葉にできず、少し迷った。
「だから、まるで……」
言いかけて、那岐は止まった。自分の思考に驚いた。
今、那岐は何を口にしようとした。
恋人っぽい、だなんて―――。
男相手だぞ、と自分に言い聞かせる。
ここは遊華楼で男同士でのセックスを楽しむ場所だが、体と心は別物だ。決して、男同士の関係に染まったわけではない。
「何でもない」
那岐は髪に触れる衛士の手を振り払った。
それにしても、と溜め息が出る。
「やっちまった……」
よりによって衛士と。
しかも、体を使うなと言われていたのに、使うどころか抱かれてしまった。
老人は、“新品”であることに拘っていた。これで那岐は、もう“お古”だ。
那岐が苦い笑みを浮かべると、衛士は不思議そうに首を傾げたが、小さく笑った。
「那岐、桃宮でもやっていけるぜ」
最後の憎まれ口が、いつもの衛士だと思った。
「その話はもういい」
どうせ、これからは爺さん専属になるだけなのだから。
途中から素直に抱かれてしまったのは、単に快楽を求めてしまったのもあるが、本当は老人の慰みものになるという現実から逃げたくて、衛士を利用してしまったのだ。
二日後に、那岐は遊華楼を出る。
次の橘宮のトップは衛士だ。売られて働き始めた場所ではあるが、七年もいれば思い入れもある。
「遊華楼の皆のこと、頼む」
上位の者は、入ったばかりの者の相談に乗ったり、営業の仕方を教えたり、色々と面倒を見てやらねばならないことがある。
トップになれば、衛士もこれまで以上に皆に頼られることになる。兄貴分として、遊華楼の皆を支えて欲しかった。
衛士は畳の上に落ちた腰紐を手に取ると、襦袢を着直した。
「安心しな。いい感じにしごいてやるからよ」
「優しくしてやれよ」
那岐は呆れた顔で衛士を見た。
衛士はもう少し優しさを覚えた方が、新規客も増える。顔も良いし、抱くのも上手いのだから。
那岐は脱げた襦袢を掻き寄せた。皺くちゃではあるが、行為での汚れはついていないので着れそうだ。
体の汚れを拭くと、下着を拾い上げ襦袢を着直した。
抱かれるのは初めてではあったが、普通に動けそうだ。ただ、挿れられた直後なせいか、尻に違和感が残る。
「最後に、いい思い出ができただろ」
衛士がにやりと笑った。
強姦しておいて、図々しいにも程がある。
那岐は呆れかえったが、衛士はまだにやにやとした表情を浮かべていた。
「まあ、じじいなんざ、どうせすぐぽっくり逝っちまうさ」
衛士らしいとも言えるが、慰めにしては老人に失礼で返事に困る。
「お前な……」
気が緩んだからか、腹がくぅと鳴った。
那岐は食堂に行こうとしていたことを思い出した。
「衛士、飯は?」
「もう食った。今何時だと思ってんだ」
布団の中でうじうじとしていたのは那岐であるが、さらに部屋に留めたのは衛士だ。那岐は軽く衛士を睨んだ。
「お前、結局何しに来たんだ?」
話があるのかと思い部屋に招いたら強姦された。最悪だ。
衛士は一瞬きょとんとした顔を浮かべた。
「あ? んだっけ……。飯の後、オーナーに呼ばれてよ。んで、すぐここに来て……」
腕組みをしながら首を傾げ、衛士は考え込む。
だがすぐに答えは出たようだ。笑いながら答えた。
「何で来たか忘れたわ」
「……」
那岐は深い溜め息をついた。
トップになるのだから、衛士にはもう少ししっかりとしてもらいたいと、少し行く末を心配した。
貫かれ、那岐は声を漏らした。
「や、やば……。もう、イキそ……っ」
限界が近いことを素直に伝えると、衛士に激しく体を揺さぶられ何度目かの刺激で那岐は達した。
布団の上で体が弛緩する。開かれた脚が、ずるりと布の上を滑った。
「どうだった? ナンバー2のテクは」
まるで褒めて欲しそうに衛士が覗き込む。那岐は乱れた呼吸を整えながら、衛士を見上げた。
初めて男に抱かれた。
認めたくない心はさておき、体は気持ちが良かった。
那岐の反応を見れば、衛士にも一目瞭然だ。尋ねる顔も、どうだ悦かっただろうと言いたげだ。
だが正直に答えるのは、強姦された側としては癪だった。
「……トップの俺の方が上手い」
むすっとした表情で那岐は答えた。
衛士は一瞬驚いた顔をしたが、ぷっと笑った。
「さっきまで色っぽい顔してたくせに、ホント子供みたいだな。突っ込まれながら言うセリフじゃねーよ」
衛士はまだ達していなかったので、那岐の体に熱を埋めたままだった。
「じゃあ、口技も試してみるか? 上手いって言っただろ」
「それも俺の方が上手い」
即答すると、可笑しそうに衛士は笑う。挿れられたままなので、笑うと内側から体に伝わり妙な感覚だった。
ふぅん、と衛士は楽しそうな笑みを浮かべる。
「那岐の超絶口技テクも気になるけど、やっぱオレはこっちだな」
衛士はにやりと微笑み、予告なく腰を動かした。
「ん……っ」
まだ挿れられたままだったので予想はしていたが、衛士はまだ続けるつもりだ。
那岐は着崩れた衛士の襦袢を掴んだ。
「まだ、やんのか……っ」
「たりめーだ。オレがまだイッてねーだろ」
「今夜の客はどうするんだ。勃たなくて商売になら……っあ」
ほぼ毎日の営業となると、一日に一度が限界だ。達してしまえば、夜に差し支える。
「ご心配なく。今日の客は虐められるのが好きなど変態だから、玩具でたっぷり可愛がってやるさ。それよりも、こっちのが楽しめる」
まるで新しい玩具を見つけた子供のように、衛士は笑った。
「ふざけ……っん、あ」
そこが弱いのだと知ってしまった場所を、衛士に突かれる。
文句を言いたいのに、出てくるのは甘えるような吐息だけだ。
「く……っ。とっととイケ! 馬鹿!」
「ここじゃ簡単にイカないようになっちまってるから、時間かかるって分かってるだろ」
「あっ、あ」
また快感が高まっていくから、長引くのは困る。無様な姿は見せたくはない。那岐にはまだ、橘宮のトップとしてのプライドがある。
けれど、心とは裏腹に、体はもっととせがむように与えられる熱を求めてしまう。
「あ、衛っ……」
「那岐……っ」
熱を埋め込みながら、胸の小さな突起に舌が絡められた。普段は何も感じないのに、体が熱を持っているせいか、そんな場所まで気持ちいいと感じてしまった。
「んっ……」
びくりと体が震え、那岐は喉を反らせた。
また、イッてしまう。
高まっていく射精感に、那岐は求めるように衛士の襦袢を掴んだ。
「衛……士っ、また、イク……っ」
皺がつくほどに襦袢を握ると、衛士の熱が体から抜け腹の上にかけられた。
嫌なことに、体から衛士の熱が抜けた時にも体がじわりと疼いた。
「はぁ……。那岐……」
衛士の手が伸ばされ、そっと那岐の頬に触れる。
思わずどきりとしたが、衛士が身を崩したことで、ただそこに手を置いただけだと分かった。
勘違いした自分の馬鹿さに恥ずかしくなり、那岐は手で顔を覆った。
「何、顔隠してんだ?」
那岐のことなどお構いなしで、衛士は那岐の手を外した。
抱かれたことに恥じらいなど感じていなかったのに、勘違いをしたことの方が妙に照れる。衛士がじっと見てくるのも、余計に辛い。
「見んな、馬鹿」
ぽつりと呟くと、衛士は楽しそうにぷっと笑った。
強姦後のやり取りにしては、あまりにも普通だ。むしろ、いい雰囲気だ。
「何か、変な感じ……」
「変な感じって?」
衛士は那岐の髪を摘まみながら、首を傾げた。
那岐は上手く言葉にできず、少し迷った。
「だから、まるで……」
言いかけて、那岐は止まった。自分の思考に驚いた。
今、那岐は何を口にしようとした。
恋人っぽい、だなんて―――。
男相手だぞ、と自分に言い聞かせる。
ここは遊華楼で男同士でのセックスを楽しむ場所だが、体と心は別物だ。決して、男同士の関係に染まったわけではない。
「何でもない」
那岐は髪に触れる衛士の手を振り払った。
それにしても、と溜め息が出る。
「やっちまった……」
よりによって衛士と。
しかも、体を使うなと言われていたのに、使うどころか抱かれてしまった。
老人は、“新品”であることに拘っていた。これで那岐は、もう“お古”だ。
那岐が苦い笑みを浮かべると、衛士は不思議そうに首を傾げたが、小さく笑った。
「那岐、桃宮でもやっていけるぜ」
最後の憎まれ口が、いつもの衛士だと思った。
「その話はもういい」
どうせ、これからは爺さん専属になるだけなのだから。
途中から素直に抱かれてしまったのは、単に快楽を求めてしまったのもあるが、本当は老人の慰みものになるという現実から逃げたくて、衛士を利用してしまったのだ。
二日後に、那岐は遊華楼を出る。
次の橘宮のトップは衛士だ。売られて働き始めた場所ではあるが、七年もいれば思い入れもある。
「遊華楼の皆のこと、頼む」
上位の者は、入ったばかりの者の相談に乗ったり、営業の仕方を教えたり、色々と面倒を見てやらねばならないことがある。
トップになれば、衛士もこれまで以上に皆に頼られることになる。兄貴分として、遊華楼の皆を支えて欲しかった。
衛士は畳の上に落ちた腰紐を手に取ると、襦袢を着直した。
「安心しな。いい感じにしごいてやるからよ」
「優しくしてやれよ」
那岐は呆れた顔で衛士を見た。
衛士はもう少し優しさを覚えた方が、新規客も増える。顔も良いし、抱くのも上手いのだから。
那岐は脱げた襦袢を掻き寄せた。皺くちゃではあるが、行為での汚れはついていないので着れそうだ。
体の汚れを拭くと、下着を拾い上げ襦袢を着直した。
抱かれるのは初めてではあったが、普通に動けそうだ。ただ、挿れられた直後なせいか、尻に違和感が残る。
「最後に、いい思い出ができただろ」
衛士がにやりと笑った。
強姦しておいて、図々しいにも程がある。
那岐は呆れかえったが、衛士はまだにやにやとした表情を浮かべていた。
「まあ、じじいなんざ、どうせすぐぽっくり逝っちまうさ」
衛士らしいとも言えるが、慰めにしては老人に失礼で返事に困る。
「お前な……」
気が緩んだからか、腹がくぅと鳴った。
那岐は食堂に行こうとしていたことを思い出した。
「衛士、飯は?」
「もう食った。今何時だと思ってんだ」
布団の中でうじうじとしていたのは那岐であるが、さらに部屋に留めたのは衛士だ。那岐は軽く衛士を睨んだ。
「お前、結局何しに来たんだ?」
話があるのかと思い部屋に招いたら強姦された。最悪だ。
衛士は一瞬きょとんとした顔を浮かべた。
「あ? んだっけ……。飯の後、オーナーに呼ばれてよ。んで、すぐここに来て……」
腕組みをしながら首を傾げ、衛士は考え込む。
だがすぐに答えは出たようだ。笑いながら答えた。
「何で来たか忘れたわ」
「……」
那岐は深い溜め息をついた。
トップになるのだから、衛士にはもう少ししっかりとしてもらいたいと、少し行く末を心配した。
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見つけ次第削除いたします。
自己判断で消しますので、悪しからず。
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