とある雑多な思考錯語

無地

光が走った、ように見えた。
そのとき私は、あの人が私に何を言いたかったのかを悟った。
私とあの人の関係がどうなるかはわからないけれど……。
私にとってあの人は特別な人になるだろうという予感があった。
――あの人とまた会いたいな――
そう思ったとき、突然私の胸の中で何かが弾けた。
涙があふれた。
――あ……あーあ――
あとからあとから涙が流れて止まらない。
こんなふうに泣くのは久しぶりだった。
どうして泣いているのか自分でもわからなかった。
ただひたすら泣き続けた。
あの人の笑顔を思い出しながら……。
それから二週間ほどして、私はあの人に再会した。
いつものように街を歩いていたら、あの人が通りかかったのだ。
あまりに突然すぎる再開に、すぐには動けなかった。
でも……あの人は私を見て立ち止まった。そしてニッコリ笑って会釈した。
私も微笑んで小さく頭を下げた。
それが合図みたいに二人のあいだにあった距離がなくなった。
私たちは並んで歩きはじめた。
話したいことはたくさんあるのに言葉にならない。
なにも言わずに歩いているうちに喫茶店に着いた。
コーヒーを飲みながらいろんな話をした。
仕事のこととか、好きな音楽や食べ物の話なんかを……。
最後にあの人は言った。
――あなたはとてもきれいになったね――
って。
その言葉を私は待っていたような気がする。
あの人がそう言ってくれるのをずっと待ち続けていたように思う。
私は思わず聞き返した。
――ほんとう？――
するとあの人は照れくさそうな顔をしてうなずいた。
その瞬間、私の心の中になにかが生まれた。
それはゆっくりと時間をかけて大きくなっていった。
やがてそれが恋だとわかった。