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秋晴れ
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急に朝晩が冷え込むようになり、ほんの数日でどこの山に雪が降っただの、あそこの峠には積もっただのとニュースが飛び交う。それでも、平地にある町の昼は暖かく、中には半袖のままウロウロしている人もいる。
そんな季節、昨日、今日と二日間かけて行われた文化祭の後片付けも終わり、生徒達は帰り支度を始めている。
俺はと言えば、教室の中で女子達に囲まれて身動きが取れなくなっていた。
皆でカラオケ行こうよ! という声や、ファミレス行かない? という声が聞こえてくる中、俺の前に座る唯奈が言う。
唯奈とは幼馴染みであり、小さい頃から一緒に遊んでいた仲でもある。高校に入ってからも相変わらず仲良くしてくれていて、こうしてよく話したりしていたりするのだけれど……。
今は、少しだけ困っていた。
それはなぜかというと――。…………。
さっきからずっと、胸を触られているからだ。それも両手を使って揉まれ続けている。
その犯人はもちろん唯奈であるのだが、今の状況では文句を言うことも出来ない。
なぜなら……、俺の手は後ろに回され、手首に手錠のようなものをかけられていたからだ。
どうしてこんなことになったのかといえば話は簡単で、文化祭最終日、クラス展示でやったお化け屋敷が原因だった。
俺たちのクラスの出し物は和風喫茶となっており、お化けに扮したメイド服姿の生徒達が接客をするというものだったのだが、その最中、突然唯奈が後ろから抱きついてきたのだ。そしてそのまま背中に押し付けられる大きな膨らみ。最初はびっくりしたけど、まぁいつものことだしなと思って気にしないようにしていたんだけど……。どうにも様子がおかしいことに気が付いた。
というのも、唯奈はその後も俺から離れることなくぴったりとくっついたまま離れなかったのだ。それでいて、耳元で囁くようにこう言ってきた。
――ねぇ、私、怖くて動けないの。だから手を引いてくれる? もちろん、俺だって男なので怖いと言われれば放っておくわけにはいかないし、そもそも断る理由もない。だから唯奈の手を取り、教室の外まで連れ出そうとしたんだ。だけど、その時すでに遅かったようで、他の男子達に見られてしまっていたらしい。それからというもの、廊下に出た瞬間、唯奈の周りにいた女子達が一斉に集まってきて、あっという間に俺は拘束されてしまったのだ。
ちなみに、唯奈自身はというと、今もなお俺の後ろにいる。つまり、今俺が手を掴んでいるのは唯奈ではなく、別の女子ということになる。
だがしかし、これは由々しき事態だぞ……! いくら幼馴染みとはいえ、女の子にここまで密着されるなんて普通じゃないもんな!? しかも相手は唯奈並みに大きな胸の持ち主なのだ。俺じゃなくてもドキドキしてしまうだろう。
それにしても、なぜ西日がスポットライトのように俺を照らしているのだろう。まるで舞台の上に立たされているみたいじゃないか。そんなことを思っていると、不意に後ろから声を掛けられる。
振り向くとそこには、腕を組んでこちらを見下ろす委員長の姿があった。
そういえば、今日は一日ずっと隣にいたような気がするな……。
委員長は俺のことを見下ろしながら言う。……。
あれ? なんか怒ってる? 委員長は組んでいた腕を解くと、そのまま自分の胸に手を当てた。
えっと……。あー……。
なんだろう、この胸がざわつく感じ。嫌な予感しかしないんですけど……。
すると、俺の考えを察してくれたのか、委員長が口を開く。
――あのね、実は私も怖いの。だから、手を握って欲しいわ。
まさかの言葉に驚く。いや、まぁ確かにそういうことなら仕方ないかなって思うところはあるんだけど、ここは廊下だ、お化け屋敷の中じゃない。
チラリと視線を向けると、委員長は目を瞑り頬を赤らめているように見えた。
見えただけだった。
秋の西日は色白の委員長ですら赤く染めるらしい。
ところで唯奈、いい加減俺の胸を揉むのを止めてくれないか。
そんな季節、昨日、今日と二日間かけて行われた文化祭の後片付けも終わり、生徒達は帰り支度を始めている。
俺はと言えば、教室の中で女子達に囲まれて身動きが取れなくなっていた。
皆でカラオケ行こうよ! という声や、ファミレス行かない? という声が聞こえてくる中、俺の前に座る唯奈が言う。
唯奈とは幼馴染みであり、小さい頃から一緒に遊んでいた仲でもある。高校に入ってからも相変わらず仲良くしてくれていて、こうしてよく話したりしていたりするのだけれど……。
今は、少しだけ困っていた。
それはなぜかというと――。…………。
さっきからずっと、胸を触られているからだ。それも両手を使って揉まれ続けている。
その犯人はもちろん唯奈であるのだが、今の状況では文句を言うことも出来ない。
なぜなら……、俺の手は後ろに回され、手首に手錠のようなものをかけられていたからだ。
どうしてこんなことになったのかといえば話は簡単で、文化祭最終日、クラス展示でやったお化け屋敷が原因だった。
俺たちのクラスの出し物は和風喫茶となっており、お化けに扮したメイド服姿の生徒達が接客をするというものだったのだが、その最中、突然唯奈が後ろから抱きついてきたのだ。そしてそのまま背中に押し付けられる大きな膨らみ。最初はびっくりしたけど、まぁいつものことだしなと思って気にしないようにしていたんだけど……。どうにも様子がおかしいことに気が付いた。
というのも、唯奈はその後も俺から離れることなくぴったりとくっついたまま離れなかったのだ。それでいて、耳元で囁くようにこう言ってきた。
――ねぇ、私、怖くて動けないの。だから手を引いてくれる? もちろん、俺だって男なので怖いと言われれば放っておくわけにはいかないし、そもそも断る理由もない。だから唯奈の手を取り、教室の外まで連れ出そうとしたんだ。だけど、その時すでに遅かったようで、他の男子達に見られてしまっていたらしい。それからというもの、廊下に出た瞬間、唯奈の周りにいた女子達が一斉に集まってきて、あっという間に俺は拘束されてしまったのだ。
ちなみに、唯奈自身はというと、今もなお俺の後ろにいる。つまり、今俺が手を掴んでいるのは唯奈ではなく、別の女子ということになる。
だがしかし、これは由々しき事態だぞ……! いくら幼馴染みとはいえ、女の子にここまで密着されるなんて普通じゃないもんな!? しかも相手は唯奈並みに大きな胸の持ち主なのだ。俺じゃなくてもドキドキしてしまうだろう。
それにしても、なぜ西日がスポットライトのように俺を照らしているのだろう。まるで舞台の上に立たされているみたいじゃないか。そんなことを思っていると、不意に後ろから声を掛けられる。
振り向くとそこには、腕を組んでこちらを見下ろす委員長の姿があった。
そういえば、今日は一日ずっと隣にいたような気がするな……。
委員長は俺のことを見下ろしながら言う。……。
あれ? なんか怒ってる? 委員長は組んでいた腕を解くと、そのまま自分の胸に手を当てた。
えっと……。あー……。
なんだろう、この胸がざわつく感じ。嫌な予感しかしないんですけど……。
すると、俺の考えを察してくれたのか、委員長が口を開く。
――あのね、実は私も怖いの。だから、手を握って欲しいわ。
まさかの言葉に驚く。いや、まぁ確かにそういうことなら仕方ないかなって思うところはあるんだけど、ここは廊下だ、お化け屋敷の中じゃない。
チラリと視線を向けると、委員長は目を瞑り頬を赤らめているように見えた。
見えただけだった。
秋の西日は色白の委員長ですら赤く染めるらしい。
ところで唯奈、いい加減俺の胸を揉むのを止めてくれないか。
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