とある雑多な思考錯語

工事帽

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本戦開始

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カチ、カチ、カチ。
一つ一つ装備を確認する。事前準備などとうに終わっている。それでも直前の確認は必要だ。主に気持ちの問題とは言っても。
「時間だ」
時計が開始を告げ、本戦が始まる。

    ◆

『さあ始まりました! 第一回公式イベント予選トーナメントマッチ!! 実況はこの私、アイリスがお送りします!』
『解説は私、アジュ・サカガミでお送りします』
『この二人は初めてですねー』
『はい。よろしくお願いします』
『こちらこそよろしくねー』
なんか俺とリリアの声が聞こえるな。マイクっぽいやつから出ているのだろうか。
『ではルール説明です! まず参加者には全員初期エリアが与えられます! そして三十分以内にそのエリア内にいるプレイヤーを倒してください! 倒されたプレイヤーは失格となります!』
『はい、わかりやすかったです。ありがとうございます』
『いえいえ、どういたしまして』
『ちなみに倒した人数が一定以上になると上位四名が選ばれて決勝トーナメントに進むことになります。またバトルロイヤル形式なので、他のプレイヤーを倒したりすることでポイントが入ります。ただしキルされればマイナスになりますよ』
『なるほどー。つまり倒せば倒すほど有利になるけど、負ければ減点なんだね?』
『そうですね。キルされると減点です。倒した分のポイントが台無しになりますからご注意くださいね』
『あとは……まあいいか。それじゃあ早速始めようか!』
『えぇ……』
相変わらず自由人だな。実況なのに説明すっ飛ばしちゃったよこの子。
『予選ブロックA~Dの計四ブロックで行い、各ブロックごとに一位から三位までを決めてもらいます。そこから更に絞って決勝トーナメント進出者を決めるのです』
これだけでも決勝トーナメントに出れるのは少数だと分かるが、今日までに予備選と言われる足切りで十分の一以下になっている。そして今日からが本戦。ここからは公式放送に乗る本番の戦いだ。
『はい、了解しました。ではこれよりスタートです!!』
そんなこんなで始まった公式イベント予選トーナメントマッチ。
俺はどこにいるかというと……。
「ここどこだよ」
完全に迷子になっていた。
『はい、それでは第四ブロックのバトルを始めましょう! 参加人数は三十名! 多いなあ!』
『こっちにもカメラあるんですね……』
『そりゃあるよー。だって公式だし。視聴者もいるし』
『そっか。そうだよね。そりゃありますよね』
『あれ? あんまり乗り気じゃない感じかな?』
『そういうわけではありませんが、少し不安と言いますか』
『大丈夫大丈夫。なんとかなるって』
『……そうですね。頑張ります』
実況が不安がってどうする。不安なのは絶賛迷子中の俺のほうだよ。
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