とある雑多な思考錯語

Almost詐欺

「オレオレ詐欺って聞かなくなったね」
「まあ、ニュースにしてもインパクトがなくなったからな」
「じゃあ、詐欺自体がなくなったわけじゃないのね」
「当然だろ」
「そっかー。でもさ、この前テレビで見たんだけど、振り込め詐欺は年々減ってきてるんだって」
「へえ……」
「もう、ほとんどないらしいよ」
「そうなんだ……」
「だからさ、オレオレ詐欺もなくなるんじゃないかなぁ」
「かもしれないな。それでもオレオレ詐欺なんて振り込め詐欺の中の一つってだけだからな。すぐに新しいのが出るさ」
「そうかも……でもさ、オレオレ詐欺がなくならないとしても、少しぐらいは減ってほしいよね」
「そうだな……」
そんなことを話しながら、オレたちはいつものように一緒に家に帰った。
そして、その日を境にして、オレと彼女の関係に変化が訪れたのだ。
彼女はそれまでと同じように毎日学校に来ていたが、以前のように積極的に話しかけてくることはなくなっていた。ただ、たまに目が合うとニコッとはしてくれたけど……。
そんなある日のこと――。
昼休みのことだった。
オレが一人で廊下を歩いていると、後ろから誰かに声をかけられた。振り返ると彼女が立っていた。
「あの……ちょっといいかな？」
「うん？　ああ……」
なんだろうと思ってついて行くと、人気のない階段までやってきた。そこで立ち止まると、彼女が言った。
「あの……ごめんなさい！」
「えっ！？」
突然謝られて驚いた。
「いきなりこんなこと言われても困っちゃうと思うんだけど、どうしても言わなくちゃいけないと思ったから……」
「ど、どうしたんだよ？」
何が何だかわからず混乱していると、彼女は申し訳なさそうな顔で続けた。
「あのね、私、ずっとあなたのこと騙してたの……」
「はあっ！？」
ますます意味がわからなかった。
「実は私、あなたの妹じゃないの……」
「そりゃあ妹だったことなんてないからな」
「私はあなたの妹のフリをしてただけなの……」
「いや、そんな素振りしたことってあったっけ？」
「実は私、あなたのお父さんなの」
「余計に意味分からないんだけど」
「それで、仕事でミスしちゃって急にお金が必要なの」
「オレオレ詐欺じゃねーか」
「代わりに生前贈与で資産を全部上げるから。そのために手数料のお金を」
「生前贈与詐欺じゃねーか」
「電子マネーでもいいわ」
「ぜんぶ振り込め詐欺だよ。いい加減にしろよ」