とある雑多な思考錯語

工事帽

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小春日和

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『昨日の寒さとは打って変わって、小春日和となった本日は……』
「なあなあ」
「どしたよ」
「なんで『春』なんだか知ってる? 今、秋だろ」
「そりゃお前、旧暦の八月が秋だからじゃねえのか?」
「違うんだって。もっと昔は二月にもなって雪が降ったら大騒ぎだったらしいぜ」
「……ああ、そういやそうだっけか」
「そうさ。それに、桜だって咲いてないじゃないか」
「うーん……」
「ま、いいけどね。どうせ俺らは関係ない話だし」
「そいつは言えるなぁ。……お、また鳴ったぞ」
「へえ、今日は早いじゃん。誰から?」
「お袋だよ。珍しいこともあんもんだよな」
「…………」
「…………」
「出ないのかい?」
「出て欲しいのかよ」
「まさか」
「ほれみろ」
「…………」
「…………」
「……あ、もしもし、オレだけど」
「はいはい。ちょっと待っててねぇ」
「……もしもし、母さん?」
「なによ、アンタから電話かけてくるなんて珍しいじゃないの」
「え? 今かけてきたの母さんのほうだろ?」
「いきなり何を言い出すの。そんなわけないでしょ、今は食器洗ってたんだから」
「いや、でもいま確かに着信音が聞こえたんだけど……」
「そんなことより、早く用件を言ってちょうだい」
「うん……。あのさ、秋でも『小春日和』っていうのなんで?」
「知らないわよ。辞書引けば載ってるんじゃない?」
「あ、やっぱりそうなのかな……」
「当たり前でしょう? 馬鹿なこと言わずに宿題やりなさい」
「あ、はい……」
「あ、それと、父さんからの伝言よ」
「……なんて?」
「『小春日和』って言葉が気に入ってしまったらしいわ」
「……」
「それだけ」
「ああ、うん……。ありがと、じゃあね」
「ええ。それじゃ」
「……」
「おい、今の聞いたか?」
「もちろん聞いたさ」
「なんで『小春日和』なんだ?」
「辞書引けば載ってるんじゃないか?」
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