魔力を失い追放された聖騎士ですが、大陸最強の魔導師に拾われて極上に甘く「再教育」されています

たら昆布

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5話

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ヴィクトールの計らいにより、数日ぶりに魔塔の外へ出ることになった。
といっても、隣を歩く魔導師の指先は、エリオットの腰を抱き寄せるようにして片時も離れない。
首元には、例の白銀の首輪。服の襟で隠れてはいるが、そこから伝わる熱が「お前は私のものだ」と常に囁きかけてくる。


「……外の空気は、少し冷たいですね」


「私の側を離れなければ問題ない。……それとも、塔に戻りたいか?」


ヴィクトールが覗き込むように尋ねる。その独占欲を孕んだ視線に、エリオットは微かに頬を染めて首を振った。
彼に依存している自分を自覚するたび、胸の奥が疼く。


だが、その平穏は突如として破られた。


「……え? まさか、エリオット……なのか?」


聞き覚えのある、不快なほど高慢な声。
エリオットの身体が、氷を背負わされたように硬直した。


街の中央広場。そこには、豪奢な馬車を連ねた王女・イザベラと、彼女を護衛する騎士団長・ルカの姿があった。
かつて自分を泥の中に放り出した張本人たちだ。


「おやおや、どこへ消えたかと思えば。そんな薄汚い男に拾われていたのかい?」


ルカが軽蔑しきった笑みを浮かべて歩み寄ってくる。
イザベラもまた、扇で口元を隠しながら、ゴミを見るような目でエリオットを見つめた。


「無様に生き延びていたのね、エリオット。……ちょうどいいわ。隣国との魔物被害が深刻なの。あなたの『聖騎士』としての盾、もう一度だけ使わせてあげてもよくてよ」


あまりに勝手な言い分だった。
魔力を失ったからと捨て、住む場所も名誉も奪っておきながら、都合が悪くなればまた道具として使おうというのだ。


「……お断りします」


エリオットは震える拳を握りしめ、絞り出すように言った。


「今の僕は、もうあなたの騎士ではありません。魔力もなく、ただの……」


「黙れ! 誰に口を聞いている!」


ルカが激昂し、エリオットの胸ぐらを掴もうと手を伸ばした。
だが、その手がエリオットに触れる直前――。


バチィィッ!!


激しい紫電が走り、ルカの体が後方へと吹き飛ばされた。


「ぎゃああああああっ!!」


「ルカ!? 何よ、今の……!」


驚愕に目を見開くイザベラたちの前に、ヴィクトールが静かに一歩踏み出した。
その瞬間、広場全体の空気が凍りついたかのように重くなる。
圧倒的な魔圧。並の人間であれば、立っていることすら困難なほどの威圧感だ。


「私のものに、汚い手を伸ばすなと言ったはずだが?」


ヴィクトールの声は低く、地を這うような殺気に満ちていた。
紅い瞳が、獲物を屠る獣のように冷酷に光る。


「ひっ……あ、あなたは……『魔塔の隠者』……!?」


イザベラが顔を真っ青にして後退りした。
大陸最強と謳われ、一国を滅ぼす力を持つと言われる伝説の魔導師。その彼が、なぜ追放された元騎士を連れているのか。


「エリオットは私の所有物だ。お前たちのような羽虫が、二度とその名を呼ぶことは許さん」


ヴィクトールは怯える王女たちを視線だけで圧し潰すと、怯えるエリオットを抱き寄せ、その耳元でわざとらしく唇を寄せた。


「帰るぞ、エリオット。こんな汚泥の匂いがする場所、お前には相応しくない」


「……ヴィクトール、様……」


エリオットは、ヴィクトールの胸に顔を埋めた。
かつて忠誠を誓った王女の叫びも、自分を裏切ったルカの呻きも、今はもう遠い雑音にしか聞こえない。


自分を守ってくれる、この大きくて残酷なほど温かい腕。
それだけが、今のエリオットにとっての真実だった。


「ああ、そうだ。その顔でいい。私だけを見ていればいいのだ」


ヴィクトールは満足げに、エリオットの首元の隠れた首輪を服の上から愛撫した。
ざまぁを見せつけられたカタルシスよりも、さらに深い執着の闇が、二人を包み込んでいく。


魔塔へ戻る道すがら、ヴィクトールの腕はさらに強くエリオットを縛り付けた。
それは、絶対に獲物を離さないという、最強の捕食者の誓いだった。
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