魔力を失い追放された聖騎士ですが、大陸最強の魔導師に拾われて極上に甘く「再教育」されています

たら昆布

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14話

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かつては「死神の塔」と恐れられ、冷たい石壁と古書の匂いしかなかった魔塔。
だが今、そこはエリオットの銀色の魔力とヴィクトールの漆黒の魔力が溶け合い、奇跡のような光景が広がっていた。


「……ふふ、見てくださいヴィクトール様。また新しい芽が出てきました」


エリオットが中庭の土をなでると、そこからクリスタルのように輝く花々が次々と咲き誇る。
ヴィクトールの魔力を栄養とし、エリオットの意志で形を成す「共鳴の花」だ。
殺風景だった塔の周囲は、今や一年中花が絶えない幻想的な楽園へと姿を変えていた。


「お前の力が、この塔の呪いさえも塗り替えてしまったな」


背後からヴィクトールが歩み寄り、エリオットの細い腰を当然のように抱き寄せた。
ヴィクトールはエリオットの肩に顎を乗せ、その白い首筋に鼻先を寄せて深く呼吸する。


「あ……っ、くすぐったいです、ヴィクトール様」


「お前からは、いつも私の魔力と、この花の甘い香りがする。……たまらなく、私の独占欲を刺激するんだ」


ヴィクトールの声は、出会った頃の冷徹さが嘘のように、熱を帯びて甘い。
彼はエリオットを振り向かせると、その指先に付いた土をそっと拭い、代わりに自分の魔力を指先から流し込んだ。


「……っ、ん……。また、そんな風に……。今はお花に魔法をかけていたのに」


「花よりも、私を見ろ。……エリオット、最近のお前は、外の世界へ戻りたいとは微塵も思わないのか?」


ふと、ヴィクトールの瞳にわずかな不安がよぎった。
かつては「光の聖騎士」として大衆の憧憬を浴びていた男だ。こんな隠者のような生活に、いつか飽きてしまうのではないか。


そんな攻めの「愛ゆえの脆さ」に気づいたエリオットは、慈しむような微笑みを浮かべ、主の首に腕を回した。


「戻りたい場所なんて、どこにもありません。……僕は、あなたの隣にいる時が、一番自分らしくいられるんです。ヴィクトール様こそ、僕のような元騎士に、この塔を占領されて嫌ではありませんか?」


「嫌なものか。むしろ、この塔そのものをお前で満たし、お前を永遠にここに閉じ込めておきたいくらいだ」


ヴィクトールの唇が、エリオットの唇を深く、吸い付くように塞いだ。
共鳴する魔力が二人の周囲で渦を巻き、花々が祝福するように光り輝く。


二人の生活は、もはや「主と奴隷」ではなく、互いの欠けた魂を補い合う「つがい」そのものだった。


しかし、平和な楽園に、新たな影が忍び寄る。
王国を追放されたエリオットの「実家」の者たちが、落ちぶれた生活から脱却するために、エリオットを「家宝」として売り飛ばそうと画策を始めていたのだ。


「……エリオット、お前の過去の残滓が、まだ掃除しきれていなかったようだな」


ヴィクトールの紅い瞳が、不穏な魔力の接近を察知して鋭く光った。
エリオットは、もう怯えなかった。ヴィクトールの隣で、彼は自らの意志で戦う覚悟を決めていたからだ。
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