魔力を失い追放された聖騎士ですが、大陸最強の魔導師に拾われて極上に甘く「再教育」されています

たら昆布

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15話

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魔塔の麓に現れたのは、かつてエリオットを「我が家の恥」と罵り、雨の中に放り出したクロムウェル伯爵――実の父親と、傲慢な義兄たちだった。
没落しかけた家を立て直すため、彼らはエリオットの新たな力が「金になる」と聞きつけ、臆面もなく迎えに来たのだ。


「エリオット! どこにいる、出てきなさい! この親不孝者が、高貴なクロムウェル家の血を引く者が、このような怪しげな塔にいつまで留まっているつもりだ!」


結界の外で叫ぶ父親の姿を、エリオットは塔のバルコニーから静かに見下ろしていた。
隣には、不快感を隠そうともしないヴィクトールが、エリオットの肩を抱いて立っている。


「……お前を捨てたゴミ掃除がまだ残っていたとはな。エリオット、私が今すぐ彼らの存在をこの世から抹消してもいいのだぞ」


ヴィクトールの指先に、黒い稲妻が奔る。だが、エリオットはそっとその手を制した。


「いいえ、ヴィクトール様。これは僕が自分で終わらせるべきことです」


エリオットはヴィクトールの魔力に守られながら、門の前に降り立った。
彼を見た父親たちは、そのあまりの美しさと、溢れんばかりの銀色の魔力に目を剥いた。


「おお、エリオット! さすが我が息子だ、その魔力があれば、また王宮へ返り咲ける。さあ、今すぐその首輪を外してこちらへ来い。隣国の富豪がお前を高く買ってくれると――」


「……黙ってください」


エリオットの冷徹な一言に、伯爵は呆然と口をつぐんだ。
かつての、常に怯え、家族の顔色を窺っていた気弱な少年は、もうどこにもいない。


「僕を捨てたあの日、僕たちの親子の縁は完全に切れました。僕が今持っているこの力も、この命も、すべてはヴィクトール様からいただいたものです。あなた方に分ける筋合いなどありません」


「何を……っ! 育ててやった恩を忘れたのか!」


義兄が逆上して掴みかかろうとした瞬間、エリオットの周囲に銀色の魔力の障壁が展開された。
それはヴィクトールの漆黒の魔力と混ざり合い、触れるものを拒絶する絶対的な拒絶の意志を放っている。


「僕にはもう、帰る家も、守るべき家名もありません。僕の居場所は、ここだけです」


エリオットは、首元の銀の首輪を愛おしげになぞった。
それは隷属の印ではなく、誰よりも自分を愛し、守ってくれる男との「絆」の証。


「……失せろ。私の小鳥がそう言っている」


背後から、ヴィクトールが音もなく現れた。
その圧倒的な圧力を受けた伯爵たちは、恐怖に腰を抜かし、這々の体で逃げ出していった。
彼らが失ったのは、金蔓だけではない。大陸最強の魔導師を敵に回したという、絶望的な未来だ。


「……終わりました、ヴィクトール様」


エリオットが振り返ると、ヴィクトールは何も言わず、彼を強く、壊れ物を扱うような優しさで抱きしめた。


「よくやった。……これで、お前の過去に繋がる糸はすべて切れた。これからは、お前の心も、その血の一滴に至るまで、私の愛だけで満たしてやる」


「はい……。嬉しいです、ヴィクトール様」


エリオットは、ヴィクトールの胸に深く顔を埋めた。
過去を捨て、家族を捨て、彼は今、世界でたった一人の「主」という名の愛を手に入れた。


二人の絆は、もはや何者にも引き裂くことはできない。
この夜、魔塔は祝福のような銀と黒の光に包まれ、かつてないほど甘やかな沈黙が二人を包み込んだ。
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