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16話
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実家との決別を経て、エリオットの心は晴れやかだった。
だが、それと引き換えにするように、彼の体には新たな、そして奇妙な変化が現れ始めていた。
食欲が落ちたわけではない。ただ、常にヴィクトールの魔力に触れていなければ、内側から熱く、疼くような感覚に襲われるのだ。
その中心は、かつて魔力回路が通っていた丹田――腹の奥底。
「……っ、ふ……あ……」
ある日の午後、バルコニーで花の手入れをしていたエリオットは、あまりの気だるさにその場に膝をついた。
内側から脈打つような熱。それはエリオット自身の魔力ではなく、ヴィクトールの魔力が実体を持とうとしているかのような、重厚な波動だった。
「エリオット! 顔色が悪いぞ、どうした」
瞬時に現れたヴィクトールが、エリオットを横抱きにして寝室へと運ぶ。
彼は焦燥した様子でエリオットの体に魔力を流し込み、その「異変」の正体を探った。
すると、ヴィクトールの紅い瞳が、驚愕に見開かれた。
「……信じられん。これは、魔導の奇跡か……?」
「ヴィクトール、様……? 僕は、どこか悪いのでしょうか……」
不安げに見上げるエリオットの腹部に、ヴィクトールは大きな手をそっと、震わせながら添えた。
そこには、二人の魔力が複雑に絡み合い、小さな光の種となって息づいている。
「悪いどころではない。……エリオット、お前の中に、私たちの魔力が融合した『命』が宿り始めている」
「え……? 命、って……。でも、僕は男で……」
「通常の人間ならばあり得ん。だが、お前の体は私の魔力で再構築され、私の一部となった。私たちの魂が共鳴しすぎた結果、魔力の結晶が実体を持ち始めたのだ。……私の、私たちの子供だ」
ヴィクトールの声は、歓喜と、信じられないほどの愛おしさで震えていた。
最強ゆえに、自らの血を残すことなど生涯ないと考えていた孤独な魔導師。
その彼が、愛する男との間に、これほどまでに確かな「絆の証」を授かったのだ。
「僕たちの……子供……」
エリオットは、自分の腹部に添えられたヴィクトールの手の上に、自らの手を重ねた。
不思議と、先ほどまでの苦しさが消え、多幸感に包まれていく。
国に捨てられ、家族に捨てられた自分が、世界で一番大好きな人の「家族」を、この身に宿している。
「……嬉しい。嬉しいです、ヴィクトール様……っ」
涙をこぼすエリオットを、ヴィクトールは壊れ物を扱うような優しさで抱きしめた。
「ああ。……何があっても、お前も、この小さな命も私が守り抜く。大陸すべてを敵に回してでもな」
ヴィクトールの独占欲は、今や一つの家族を守るための、最強の「加護」へと昇華された。
銀の首輪が、祝福するように穏やかな光を放つ。
しかし、この魔導的な懐妊が放つ強大な「生命の奔流」は、遥か彼方の闇に眠る「古の災厄」を呼び覚まそうとしていた。
本当の最後の試練が、二人に近づいていた。
だが、それと引き換えにするように、彼の体には新たな、そして奇妙な変化が現れ始めていた。
食欲が落ちたわけではない。ただ、常にヴィクトールの魔力に触れていなければ、内側から熱く、疼くような感覚に襲われるのだ。
その中心は、かつて魔力回路が通っていた丹田――腹の奥底。
「……っ、ふ……あ……」
ある日の午後、バルコニーで花の手入れをしていたエリオットは、あまりの気だるさにその場に膝をついた。
内側から脈打つような熱。それはエリオット自身の魔力ではなく、ヴィクトールの魔力が実体を持とうとしているかのような、重厚な波動だった。
「エリオット! 顔色が悪いぞ、どうした」
瞬時に現れたヴィクトールが、エリオットを横抱きにして寝室へと運ぶ。
彼は焦燥した様子でエリオットの体に魔力を流し込み、その「異変」の正体を探った。
すると、ヴィクトールの紅い瞳が、驚愕に見開かれた。
「……信じられん。これは、魔導の奇跡か……?」
「ヴィクトール、様……? 僕は、どこか悪いのでしょうか……」
不安げに見上げるエリオットの腹部に、ヴィクトールは大きな手をそっと、震わせながら添えた。
そこには、二人の魔力が複雑に絡み合い、小さな光の種となって息づいている。
「悪いどころではない。……エリオット、お前の中に、私たちの魔力が融合した『命』が宿り始めている」
「え……? 命、って……。でも、僕は男で……」
「通常の人間ならばあり得ん。だが、お前の体は私の魔力で再構築され、私の一部となった。私たちの魂が共鳴しすぎた結果、魔力の結晶が実体を持ち始めたのだ。……私の、私たちの子供だ」
ヴィクトールの声は、歓喜と、信じられないほどの愛おしさで震えていた。
最強ゆえに、自らの血を残すことなど生涯ないと考えていた孤独な魔導師。
その彼が、愛する男との間に、これほどまでに確かな「絆の証」を授かったのだ。
「僕たちの……子供……」
エリオットは、自分の腹部に添えられたヴィクトールの手の上に、自らの手を重ねた。
不思議と、先ほどまでの苦しさが消え、多幸感に包まれていく。
国に捨てられ、家族に捨てられた自分が、世界で一番大好きな人の「家族」を、この身に宿している。
「……嬉しい。嬉しいです、ヴィクトール様……っ」
涙をこぼすエリオットを、ヴィクトールは壊れ物を扱うような優しさで抱きしめた。
「ああ。……何があっても、お前も、この小さな命も私が守り抜く。大陸すべてを敵に回してでもな」
ヴィクトールの独占欲は、今や一つの家族を守るための、最強の「加護」へと昇華された。
銀の首輪が、祝福するように穏やかな光を放つ。
しかし、この魔導的な懐妊が放つ強大な「生命の奔流」は、遥か彼方の闇に眠る「古の災厄」を呼び覚まそうとしていた。
本当の最後の試練が、二人に近づいていた。
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