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13話
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地下独房の重い鉄扉が、地響きを立てて開いた。
中央に拘束されたエリオットは、血の気の失せた顔で笑みを浮かべている。
だが、そこに入ってきたレイヴンを見た瞬間、その笑みは凍りついた。
レイヴンは一言も発さなかった。
普段なら、冷徹な罵倒や威圧的な命令を下す彼が、ただ無言で、死神のような虚無を湛えた瞳でエリオットを見つめている。
その「沈黙」そのものが、今のレイヴンにとっては最大の怒りの表現だった。
(……閣下、声を出さないのか? 愛する小鳥を壊されたショックで、言葉を忘れたかな)
エリオットが挑発するように口を動かす。
だが、レイヴンの拳がエリオットの腹部を正確に、そして容赦なく穿った。
「が、はっ……!」
レイヴンは傍らにあった筆記具を手に取り、無造作に紙に書き殴った。
――貴様の舌を抜くのは、最後だ。まずは、その「音」を生み出す指から潰してやる。
悲鳴さえも届かない地下の奥底で、凄惨な断罪が始まった。
レイヴンは激情に任せることなく、機械的な正確さでエリオットの尊厳を奪っていく。
それは復讐というよりも、もはや神聖な「不純物の排除」に近い儀式だった。
――数時間後。
レイヴンは返り血を浴びた軍服を脱ぎ捨て、身を清めてから奏の部屋へと戻った。
ドアをノックする音さえ、今の奏には苦痛かもしれない。
レイヴンは極限まで音を殺し、忍び寄るように部屋に入った。
ベッドの隅で、奏は虚ろな瞳で虚空を見つめていた。
レイヴンの気配を感じた瞬間、奏の身体が反射的に強張る。
「……っ、……ぁ……」
奏は口元を押さえ、恐怖に満ちた瞳でレイヴンを見た。
レイヴンはそれ以上近づかず、その場に跪いた。
そして、懐から一枚のカードを取り出し、奏に見えるように掲げる。
『奏。もう声は出さない。だから、私を拒絶しないでくれ』
その丁寧な文字を見た瞬間、奏の目から大粒の涙が溢れ出した。
あんなに尊大で、支配的だったレイヴンが、自分のために「声」を捨てようとしている。
「レイヴン……様、っ、……う、うう……っ」
奏が泣き崩れると、レイヴンはゆっくりと、音を立てずに距離を詰めた。
そして、言葉ではなく、その大きな掌で奏の頬を包み込む。
指先から伝わる体温。服が擦れるわずかな音さえ、奏の脳には鋭い刺激として届く。
けれど、レイヴンがその身体全体で放つ「静寂の愛」は、奏の壊れた神経を、少しずつ凪へと導いていく。
レイヴンは奏の耳を塞ぐように両手を添え、額をそっと合わせた。
声という蜜はもう与えられない。
けれど、鼓動と、体温と、瞳の光だけで、彼は奏に語りかけていた。
(お前を愛している。たとえ、一生この沈黙の中で生きることになっても)
奏はその無言のメッセージを、肌を通じて受け取った。
口の中には、まだ鉄のような苦味が残っている。
それでも、奏はレイヴンの胸に顔を埋め、彼の心音を――今はまだ「苦い」そのリズムを、必死に愛そうと縋り付いた。
二人の間に流れる、静かすぎる夜。
支配者と被支配者の関係は、沈黙という新たな鎖によって、より深く、より逃れられないものへと変質していった。
中央に拘束されたエリオットは、血の気の失せた顔で笑みを浮かべている。
だが、そこに入ってきたレイヴンを見た瞬間、その笑みは凍りついた。
レイヴンは一言も発さなかった。
普段なら、冷徹な罵倒や威圧的な命令を下す彼が、ただ無言で、死神のような虚無を湛えた瞳でエリオットを見つめている。
その「沈黙」そのものが、今のレイヴンにとっては最大の怒りの表現だった。
(……閣下、声を出さないのか? 愛する小鳥を壊されたショックで、言葉を忘れたかな)
エリオットが挑発するように口を動かす。
だが、レイヴンの拳がエリオットの腹部を正確に、そして容赦なく穿った。
「が、はっ……!」
レイヴンは傍らにあった筆記具を手に取り、無造作に紙に書き殴った。
――貴様の舌を抜くのは、最後だ。まずは、その「音」を生み出す指から潰してやる。
悲鳴さえも届かない地下の奥底で、凄惨な断罪が始まった。
レイヴンは激情に任せることなく、機械的な正確さでエリオットの尊厳を奪っていく。
それは復讐というよりも、もはや神聖な「不純物の排除」に近い儀式だった。
――数時間後。
レイヴンは返り血を浴びた軍服を脱ぎ捨て、身を清めてから奏の部屋へと戻った。
ドアをノックする音さえ、今の奏には苦痛かもしれない。
レイヴンは極限まで音を殺し、忍び寄るように部屋に入った。
ベッドの隅で、奏は虚ろな瞳で虚空を見つめていた。
レイヴンの気配を感じた瞬間、奏の身体が反射的に強張る。
「……っ、……ぁ……」
奏は口元を押さえ、恐怖に満ちた瞳でレイヴンを見た。
レイヴンはそれ以上近づかず、その場に跪いた。
そして、懐から一枚のカードを取り出し、奏に見えるように掲げる。
『奏。もう声は出さない。だから、私を拒絶しないでくれ』
その丁寧な文字を見た瞬間、奏の目から大粒の涙が溢れ出した。
あんなに尊大で、支配的だったレイヴンが、自分のために「声」を捨てようとしている。
「レイヴン……様、っ、……う、うう……っ」
奏が泣き崩れると、レイヴンはゆっくりと、音を立てずに距離を詰めた。
そして、言葉ではなく、その大きな掌で奏の頬を包み込む。
指先から伝わる体温。服が擦れるわずかな音さえ、奏の脳には鋭い刺激として届く。
けれど、レイヴンがその身体全体で放つ「静寂の愛」は、奏の壊れた神経を、少しずつ凪へと導いていく。
レイヴンは奏の耳を塞ぐように両手を添え、額をそっと合わせた。
声という蜜はもう与えられない。
けれど、鼓動と、体温と、瞳の光だけで、彼は奏に語りかけていた。
(お前を愛している。たとえ、一生この沈黙の中で生きることになっても)
奏はその無言のメッセージを、肌を通じて受け取った。
口の中には、まだ鉄のような苦味が残っている。
それでも、奏はレイヴンの胸に顔を埋め、彼の心音を――今はまだ「苦い」そのリズムを、必死に愛そうと縋り付いた。
二人の間に流れる、静かすぎる夜。
支配者と被支配者の関係は、沈黙という新たな鎖によって、より深く、より逃れられないものへと変質していった。
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