イケメンだけど追放されたのでお兄さん達を雌にするパコパコ旅行してきます

ぺけ

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ディスコミュニケーションの成功例

【今回の内容】

エロ無し


寝不足からくる空元気でこれ以上ないほどハイテンションになっている俺と、
そんな俺を見て冷静になっているイリア。

早朝山に入ると、どう見ても肉食の獣とか野良魔獣が現れては俺たちの命を刈り取る気満々で襲ってきた。

飛びかかってくる、小さいものはうさぎサイズから俺たちよりでかいものまでよりどりみどりの奴ら。

大体攻撃を受けたら即死しそうな動きをしているそいつらをイリアは、
武器どころか拳だけで当然のようにいなしていく。

めっちゃつよい、
どうも本人曰く触手の時は数もだけど、手下がピンチで頭に血が上っていたらしく、
それで自分まで捕まるなんてまだまだだと悔しそうにしていた。

俺もサポートとして催眠魔法で一瞬そいつらの意識飛ばして動き止めたりしてたけど、
別になくてもイリアが負ける要素が見えないくらい圧倒的に獣たちを返り討ちにしてた。

「……」

「?、どうした?」

獣を殴り飛ばすパンチをみて、ちょっとだけイリアにちょっかい出すときは次から上手くやろう、と決意した。

順調に進み墓地に近づいてからは、山の上の方で寒いせいか獣は減って、
代わりに死霊やゾンビっぽいのの群れが俺たちを出迎えてくれた。
奴らは俊敏さこそ魔獣の方がすごかったが、
それがない補うよう知性のある姑息な動きや武器を使い、連携プレーで俺たちを追い詰めてくる。

一回撤退した方がいいかもしれない、まで追い詰められたけど、
ダメ元で全力の催淫魔法をぶっ放したところ、上手くいったらしくそこは死霊のパーティ会場になってしまった。

「エグ、骨とか腐った肉でもヤれんのかな?」

気になって聞いてみたけど、イリアは引き攣った顔をしてから、
唸り声をあげ絡み合っている死体っぽいものたちをみつめて「申し訳ない…」とだけ呟いて特に見解はくれなかった。

最終的に骨と腐った肉が激しく絡み合ったせいでバラバラのぐちゃぐちゃになって、
その場に俺たち以外何も動くものは無くなったので、結論としてはヤれないが正解だと思う。

でかい魔法を使ったせいでちょっと疲れてきた。
半日近く歩いてたし、流石に俺の口数も減った頃広い墓地の真ん中にたどり着く。

そこには一際大きい、慰霊碑のようなものまで建てられた目立つ墓があった。

【偉大な魔術師レイン、ここに眠る】

そう書かれているその墓の背面に、何故かこの場に不似合いな重厚な木製の扉がぴったりくっついている。

取手も、扉自体も、
枯れ木と苔と崩れた石でできた周囲の景色とは場違いなほど綺麗だった。

「これかな」

「…だろうな」

二人で顔を見合わせて、それから意を決して取手を下げて戸を引く。

開いた隙間からは真昼のような、白い光がサンサンと差し込んで直視できないほど眩しかった。

やっと慣れた目で前を見る。

扉の向こうには白い廊下、どこかに続く長い空間が広がっており、本来見えるはずの墓石や墓地は影も形もない。

よく状況がわからなくて、隣を見るとイリアは不思議そうに手を伸ばして扉に手をいれた。

「なにもないな」

そうイリアが言ったすぐ後、ペタペタと音がした。
まるで目の前に白い空間なんて存在していないように、
手は扉の枠で遮られた向こう側で、きちんと墓石に触れている。

「あれ」

俺も手を伸ばす、白い空間に手が入る。
イリアと同じようしているのに、俺の手は向こう側では見えず、墓石に触れることはできなかった。

当然のように白い空間の中で手は空を掴んでいる。

「…どうなってる」

イリアから見れば扉に手を入れると、俺の手首は何もない空間へ消えているようにでも見えるのだろうか。

すごく驚いていたので俺は、試しに思い切って半身を扉の奥へ入れる。
白い空間に突入したら清潔な良い匂いがした。

イリアには、やはり白い部屋側に入った俺の箇所は見えなくなるみたいで、驚いている。

「…なんか、俺だけ呼ばれてるっぽい」

不思議そうに扉の構造を確かめているイリアへ、お礼を言うと俺はその中へ進む。

「おい!」

呼び止められたので顔だけ覗かせた。

「多分ゾンビ共ほぼ全滅してたしこの辺ってもう安全だよな、
…ごめん、一晩待ってもし俺が戻って来なかったら一人で帰っといて」

「お前、そんな殊勝なキャラじゃないだろ」

悪態を突かれ苦笑する。

「たしかに
…でも、物理的にどうしようもないんじゃしょうがないかなって。

大丈夫。呪い解いてって頼むだけだし、最悪やばくなったら俺も全力で逃げ戻ってくるから。」

「会話が通じるような相手なのか?」

「どうだろう」

妄想で人呪ったり、こじらせて独り心中するような亡霊らしいしなぁ、会話は通じないような気がしなくもない。
自信がなくて素直に答えるとイリアは俺も着いていく方法を考える、
と言ってくれたけど、それよりも俺は名案を思いつく。

「…あ!じゃあ、もし上手くいったらご褒美に一緒にお風呂入ってよ」

目を輝かせて言うと、また怒るかと思ったけどイリアはぐっと耐えるように俺を見て、短剣を差し出してきた。

「戻ってきたら考える、護身用に持っていけ」

「えっ」

予想外の返し。

「ご褒美を?」

「…あぁ、正直、なんのご褒美かわからないが。

そもそも、お前の自業自得だしな」

たしかに、と笑ってしまった。

「何かあったらこれを使え、いいか、危ないと思ったら絶対に逃げろ」

「もちろん、俺逃げ足とか速いタイプだし大丈夫だよ」

まだイリアは何か言いたげだったけど、もう出発することにした。

背を向け、ご褒美楽しみにしてるね、とだけ言い残す。
ずっしりと重い、貰った短剣を握りながらお兄さんの顔を思い出した。


「……」

「来てくれたんだ」

逢ったらなんて言おうか考えながら長い廊下を進んだけど、
結局一瞬で呪いを解いてもらえそうな魔法の言葉は思いつかなかった。

白い廊下が終わると、廊下と同じような白い四角い、窓のない部屋があって、
その中心のテーブルでお兄さんはお茶を飲んでくつろいでいた。

俺に気づくと嬉しそうに駆け寄り、笑って抱きついてくる。

「やっと会えた」

そのまま、俺を抱きしめたままお兄さんは話を続ける。

「僕ね、ずっと夢見てたんです。
僕だけを愛してくれる、優しくて、大切な人。

時間はかかったけど、やっと会えた」

ギチギチと抱き締める力を強められた、痛い。

「これからは、あの思い出の場所でふたりで」

お兄さんは色々何か言っていて、
俺は未だにこの状況を打破できるような便利な言葉なんて思いつかなくて。

「…うーん、俺、そんなキャラでもないんだよなぁ」

色々考えてるうちに、面倒になってきて、
さっきまでのイリアとのやりとりを思い出しながら俺は思わず呟く。

「えっ?」

お兄さんの力が少し緩んだ。

いやさぁ、とつい、友達にでも話すようにいつもの調子で口を開いた。

「俺、村で金持ってんの良いことに遊びまくって、
それで嫉妬とか悪口をバカに言われてんのも知ってたけど不満があるかと言われると全くない。
むしろそいつらの妬むような自分と今の環境大好きだし。

親父に10歳くらいで始末しとけばよかったってブチギレられるようなろくでなしだし…お兄さん…
あー、名前なに?レイン?」

墓石に刻んであった名前を思い出し聞くと、お兄さんは困惑した顔で頷いた。

「レインが嫌とかじゃなくてさぁ、俺は不特定多数の子と遊びたいし、
あとレイン刺してでも呪い解いてこいみたいな空気あったけど命の責任とかも嫌。

というか全てになんの責任も取りたくない、誠実とか独占とは対極の自信ある。

ただただ呪い解いて欲しいし、レインだけを見てとか絶対できる気がしない。」

レインの顔色が変わる、怒ってる。

俺の首を絞めようとしてきたけどなんとか逃げながら続けた。

「というか思い出したけどあの高台が思い出ってさぁ!
他のもっと良い景色見たことねえの!?
暮らすとしてもあの村俺は嫌!もっと都会行きたい!」

「うるさい!」

距離を取れた、と思ったのに急にガクンと体が動かなくなった。

「やっぱり見たことないんじゃん」

そのまま全身に力が入らなくなって地面に突っ伏す俺に、
ゆっくりとレインは近づいてくる。

めちゃくちゃ怒ってる、怒りで声が震えている。
やばいのは分かったけど、まだ俺は悪態を続けていた。

「やっと、会えたと思ったのに…」

レインが絞り出すような声でつぶやいて、気分が悪くて舌が回らなくなってきた。
走馬灯が流れ出しているのか脳内に色々な景色が浮かんできて、それをそのまま伝えた。

「世界には星の運河や、海の底の城がある」

レインは俺の首を絞めようと馬乗りになって、喉元をじっと見ていた。

「アンタがそう言うの見た上で、あのしみったれた高台が好きならそれもいいと思う

でもさぁ、あそこしか知らなくて、
アンタの理想の想像の恋人だって、泣いてるアンタの涙すら拭えないようなやつじゃん」

段々首に絡んだ指に力が込められたけど、レインは何が悲しいのか泣いていて、
俺の言葉にいつのまにか自分が泣いていることに気づいて手が止まった。

「どうせ誰も、涙なんて拭ってくれない」

それは今までの話なんだろうか、生前の話なんだろうか。
諦めたように目を伏せているのを見て、妄想でもしないと自分を救えない何かでもあったのかとなんとなく思った。

「そんな場所も恋人もキープしといて、もっと都合の良いやつ、…探してみたら?

…少なくとも俺はあの村はモチがまずいし地味だから良いとこじゃないと思う」

「モチ?」

急な明後日の方向への悪口によくわからない、とレインは首へ力を込めるのをやめて、俺の意図を探るみたいに怪訝な顔で俺の目を覗き込んできた。

「…げほっ、そうそう…、

最初に会った時俺が食ってた、あの使い回しのやつ。
そんなもん売るなよな」

しかも塩すらくれないとか、今更な文句を言っていたら、
この場の空気に似合わない間抜けな話題がおかしかったのかレインは少し笑い始めて、
目尻伝っていた涙をようやく自分で拭った。

「あの村で生まれて、最期までどこにもいけなかった」

「ふーん、じゃあレインにとっておやつってあのモチなの?」

「村の人たちは出来立てのを食べてたけどね」

知りたくもない名産商法を知って最悪…、と思わず口をついてしまった。

やっぱこの辺の土地がクソだわ、民度が低いとか好き勝手言ってると、レインはまたおかしかったのかクスクス笑っている。
彼の表情が明るくなるにつれ俺を襲っていた強烈な脱力感が消えていった。

「運河」

「えっ?」

体が自由になって、レインが馬乗りをやめ俺の隣に座ったので、改めて俺も体を起こして並んで話す。

「星の運河、そんなに綺麗なの?」

「…あー…、実は俺も見たことない。
なんかの本で見ただけだから場所も忘れた」

「遠いかな」

「この辺は海も川も少ないし、そうかも。

でも、探してる間も他のもんみれるし、それはそれで良いと思う。
あ、…レインって遠く行けんの?」

「…多分、大丈夫」

レインは自分のつま先を見つめる、色は白いけど、亡霊とは思えないちゃんと実態のある綺麗な足だった。

「じゃあ見つかるまで探せるな」

「そうだね」

嬉しそうに笑ってる顔が子供みたいに無邪気で、そんなふうにも笑えるんだと感心した。

他に俺が知ってるデートスポットだの観光地だの、珍しい土地や有名な景色の話をして、
その全てにレインはまるでその場にいるように目を輝かせて話に聞き入った。

「行ってみたいなぁ」

「多分、大体いいとこ」

無責任な俺の言葉にレインはまた笑ってから、

「でも、きっと景色が見たいんじゃなくて、僕は」

「えっ?」

寂しそうになにかを望むレインの言葉の意味が分からなくてどう言う意味、と聞き返したけれど、
それに返事はなく、レインは少しだけ考えるように黙った後、
優しく俺の頬を撫で「呪い、解くね」と言った。

「なんで?」

「解いて欲しかったんでしょう?」

聞き返されて、それはそうだけどと首を傾げると、
レインはまた俺に抱きついて、けれど今度はさっきみたいな縛るような強さじゃなくて、優しく、確かめるようにそっと背中へ腕が伸ばされた。

「僕が見えるくせに、僕を愛さない人が嫌いだった。」

「……」

「僕を見てくれないなら、みんな何も手に入らなければ良いと思った。

…でも、あなたは今のままじゃあきっと困るから」

「今更だけど名前、レオンハルト。
大体あだ名で呼ばれてるし好きに呼んで。
あなた、じゃなくってさ。
…まぁ、困る、だいぶ。キープも出来ないし」

「最低」

また頭の後ろでレインに笑われる。
背中を数回ポンポンと叩かれて、その度になんとなく体調の悪かった寝不足の体が徐々に軽くなっていった。

「………一緒に」

レインが何か言った気がする。
上手く聞き取れなくて、聞き返そうとしたけれど声がうまく出なかった。
気がつくとどんどん周囲が白らんでいって、光しか認識できなくなる。

「レイン」

腕が離れる感触がして、咄嗟に名前を呼んだけど、最後に見えたのは俺から離れ微笑む彼の顔だけだった。


「……、ヴェ、レーヴェ!」

一瞬後、急に大きな音がして驚いて目を開ける。
目の前には焦った顔のイリアがいた。

「意外とまつげ長い」

「…は?」

俺は墓石にもたれかかって寝ていたらしく、
「気がついたらそこにいた」俺をイリアはゆすり起こしていたらしい。

さっきまでの白い部屋も暖かい空間もなく、寒々しい墓地と俺が荒らした亡者の部位がその辺に散乱していて、俺は戻ってこれたんだと分かった。

改めて至近距離でみた、俺を心配する端正な顔つきを眺めて素直な感想を出すとイリアは意識の確認のつもりか俺の頬を数回叩いた。

「いたたた」

「まったく…、で、上手くいったんだな?」

「あぁ、うん。…多分。」

「そうか、ところで」

安心したイリアが珍しくちょっと笑ってる。

…でも、彼は結局最後まで俺の名前を呼ばなかったな。

さっきまでのやりとりを思い出して、レインがなんで俺の呪いを解いたのかとか、
彼はこれからどこにいくんだろう、とか考えて少しだけしんみりとした感情に浸っていた。

そんな俺の横顔を見てイリアは改めて少し考えた後、

「ところで、こいつは誰だ?」

と聞いてきた。

なんの話か分からず、イリアの指さしている自分の背後を見る。

「ひっ」

なぜ俺は気がつかなかったのだろう、至近距離で自分の顔を覗き込む真っ黒な瞳に。

本気でビビって身体を硬直させたら、当然のようにレインは「良かったね、じゃあ帰ろうか」と俺たちに話しかけてきた。
感想 10

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