2度と恋愛なんかしない!そう決意して異世界で心機一転料理屋でもして過ごそうと思ったら、恋愛フラグ!?イヤ、んなわけ無いな

弥生菊美

文字の大きさ
27 / 55

第27話 成人のお祝い1

しおりを挟む

 本日もお店は大盛況、1番忙しい昼時が終わって、一息つけるなーと空いたばかりのテーブルを片付けていると

「青葉ちゃん、ちょっと良いかな?」

 聞き慣れた声に振り向けば、そこに立っていたのはソラウさん
しかし、店の入り口の方をチラチラ振り返り落ち着かない様子だ。
さっき、会計を済ませてレイさんと共に帰っていったのに、忘れ物でもしたのだろうか?

「どうかされたんですか?」

片付けていた手を止めて、ソラウさんに向き直る

「実は、来週の祝日がちょうどレイの妹が成人する18歳の誕生日なんだ。
成人になる年の誕生日は、家族や親戚、友人達と盛大にお祝いするのがこの国の慣わしなんだけど、そこで是非!
その日の料理を青葉ちゃんにお願いしたいって、レイの妹のミリーに頼まれてさ…あっ、なんで俺が頼みに来たかって言うと、内緒で青葉ちゃんをその誕生日に招待して、兄であるレイを驚かせる。
 という、ミリーの悪巧みも入っててさ、だから青葉ちゃんにも参加してもらいたいんだ。
 お店が休みの日にゴメン、けど頼めないかな?
俺にとっても、ミリーは妹みたいなもんだからさ」

 お願い!と、手を合わせて頼み込むソラウさんの姿に、慌てて顔を上げて下さいと声をかける。
お店は休みだけど、レイさんとソラウさんはこのお店の第一号のお客様で、私にとっても特別な2人だ。
できる限り、頼みは引き受けたい。
ミリーさんの悪巧みとやらに乗るのはもちろん構わないのだが…

「私なんかでよければ、喜んで料理をご用意しますし参加もしますが…会場は「本当!?よかったぁー!!ありがとう!青葉ちゃん!!」

そう言って、嬉しそうに私の手を取りブンブンと振るソラウさん

「会場って言うほど立派なもんじゃ無いけど、レイの自宅の庭だよ普通の家だからそんなに広く無いけどね。
当日は料理を運んだりするだろうから、昼前に俺が迎えに来て会場まで案内するよ」

 ありがとう、ありがとう!と、とても嬉しそうにしているソラウさんには申し訳ないが…果たして私の保護者達に外出許可が降りるか、非常に不安なところである…

いっそ、この店を会場として使ってもらえた方が多いに…

「いや、あのーソラウさん、わたし「お客様、うちの店長へのお触りはご遠慮いただけますかー?
それとー、そのお祝いに僕は含まれてへんの?
青葉1人を、僕が行かせるとでも思てんの?」」

 どこからともなく現れた狐鈴さんが、横からギリギリと音を立ててソラウさんの手首を掴む

「イタタタ!悪かったって!
本当に青葉ちゃんの事になると見境ないなアンタら…」

慌てて手を離すソラウさんを狐鈴さんが睨みつける

「ほんで?」

狐鈴さんの圧のある言葉に、珍しくソラウさんの耳がイカ耳のように後ろへと倒れて、深いため息をついた。

「はぁ…こうなると思ってたから、ミリーにはもう2人参加する事になると思うけど?とは、言ってある。
 青葉ちゃんさえ来てくれれば、付き添いに誰が来ようと構わないってさ」

やれやれ、と言わんばかりにソラウさんが首を振る

「腕大丈夫ですかソラウさん!?狐鈴さんがスミマセン…」

「大丈夫だから青葉ちゃんは気にしないで…
っと、忘れる所だった。
 料理なんだけど、肉料理一品と食後のデザートを何品か頼みたいんだ。
生クリーム乗せプリンは必ず食べたいです。って、ミリーからの伝言、多分レイから聞いたんだろうな」

 口ぶりからするに、妹さんはお店には来たことがないのだろう。
それにしても、いつの間にかお誕生日会に狐鈴さんとゴコクさんも来る事になっている…。

 でも、付き添いがあれば外出許可が降りるなら、それはそれで良かった。
 内心で、ホッとしつつ成人の誕生日という一大イベントの一部料理を担当するのだ。
しかも相手はお世話になっているレイさんの妹!
頑張らなければ!!

「分かりました!腕によりをかけて美味しい料理とデザートを用意しますね!
何時もお二人にはお世話になってますし、その妹さんの人生に一度のイベントの料理!
頑張ります!!」

 気合を入れて己の拳を握り締めれば、ソラウさんがアハハハと声を出して笑う。

「さすが青葉ちゃん!期待してるよ!
それじゃ、来週は宜しくね!」

 そう言って、笑顔で手を振ると店の外へと出ていったソラウさん

 頑張るぞー!と振り返れば、目の前には冷たく目を細めた狐鈴さんと、その先のカウンターから同じく目を細めたゴコクさんが視界に入る。

何故不機嫌!?

「えぇ…っと…?」

 分からない…勝手に休日営業、配達を決めたこと?
それとも、また1人でフラフラ出かける気だったなコイツ!
とでも思われた!?いや両方!?

「青葉は、あのレイって犬っころの事をどない思ってはるん?」

思いもよらない狐鈴さんの問い
脈略!?
何故そんな話になるのか!?

「そんなの決まってるじゃないですか!
レイさんとソラウさんは、このお店の初めてのお客様ですよ!
それから毎日来てくれる常連さんで、大切なお客様です!!」

 そう力強く力説すれば、コチラを見ていたゴコクさんがやれやれと言わんばかりに首を振りながらスッと目線を落として仕事に戻り、狐鈴さんも小さなため息をついた。

「ほんまに、ほんまの少しだけやけど、あの犬っころに同情してもーたわ…」

 同情!?なんで!?なんで私は呆れられているのですか!!!!!!?
スタスタと去っていく、狐鈴さんの背中を見つめながら、私が何をしたと言うんですか!?
と、心の中で涙を流した。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)

かのん
恋愛
 気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。  わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・  これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。 あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ! 本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。 完結しておりますので、安心してお読みください。

こわいかおの獣人騎士が、仕事大好きトリマーに秒で堕とされた結果

てへぺろ
恋愛
仕事大好きトリマーである黒木優子(クロキ)が召喚されたのは、毛並みの手入れが行き届いていない、犬系獣人たちの国だった。 とりあえず、護衛兼監視役として来たのは、ハスキー系獣人であるルーサー。不機嫌そうににらんでくるものの、ハスキー大好きなクロキにはそんなの関係なかった。 「とりあえずブラッシングさせてくれません?」 毎日、獣人たちのお手入れに精を出しては、ルーサーを(犬的に)愛でる日々。 そのうち、ルーサーはクロキを女性として意識するようになるものの、クロキは彼を犬としかみていなくて……。 ※獣人のケモ度が高い世界での恋愛話ですが、ケモナー向けではないです。ズーフィリア向けでもないです。

異世界から来た娘が、たまらなく可愛いのだが(同感)〜こっちにきてから何故かイケメンに囲まれています〜

恋愛
普通の女子高生、朱璃はいつのまにか異世界に迷い込んでいた。 右も左もわからない状態で偶然出会った青年にしがみついた結果、なんとかお世話になることになる。一宿一飯の恩義を返そうと懸命に生きているうちに、国の一大事に巻き込まれたり巻き込んだり。気付くと個性豊かなイケメンたちに大切に大切にされていた。 そんな乙女ゲームのようなお話。

転生したら、実家が養鶏場から養コカトリス場にかわり、知らない牧場経営型乙女ゲームがはじまりました

空飛ぶひよこ
恋愛
実家の養鶏場を手伝いながら育ち、後継ぎになることを夢見ていていた梨花。 結局、できちゃった婚を果たした元ヤンの兄(改心済)が後を継ぐことになり、進路に迷っていた矢先、運悪く事故死してしまう。 転生した先は、ゲームのようなファンタジーな世界。 しかし、実家は養鶏場ならぬ、養コカトリス場だった……! 「やった! 今度こそ跡継ぎ……え? 姉さんが婿を取って、跡を継ぐ?」 農家の後継不足が心配される昨今。何故私の周りばかり、後継に恵まれているのか……。 「勤労意欲溢れる素敵なお嬢さん。そんな貴女に御朗報です。新規国営牧場のオーナーになってみませんか? ーー条件は、ただ一つ。牧場でドラゴンの卵も一緒に育てることです」 ーーそして謎の牧場経営型乙女ゲームが始まった。(解せない)

獣人の世界に落ちたら最底辺の弱者で、生きるの大変だけど保護者がイケオジで最強っぽい。

真麻一花
恋愛
私は十歳の時、獣が支配する世界へと落ちてきた。 狼の群れに襲われたところに現れたのは、一頭の巨大な狼。そのとき私は、殺されるのを覚悟した。 私を拾ったのは、獣人らしくないのに町を支配する最強の獣人だった。 なんとか生きてる。 でも、この世界で、私は最低辺の弱者。

ちょっと不運な私を助けてくれた騎士様が溺愛してきます

五珠 izumi
恋愛
城の下働きとして働いていた私。 ある日、開かれた姫様達のお見合いパーティー会場に何故か魔獣が現れて、運悪く通りかかった私は切られてしまった。 ああ、死んだな、そう思った私の目に見えるのは、私を助けようと手を伸ばす銀髪の美少年だった。 竜獣人の美少年に溺愛されるちょっと不運な女の子のお話。 *魔獣、獣人、魔法など、何でもありの世界です。 *お気に入り登録、しおり等、ありがとうございます。 *本編は完結しています。  番外編は不定期になります。  次話を投稿する迄、完結設定にさせていただきます。

記憶喪失の私はギルマス(強面)に拾われました【バレンタインSS投下】

かのこkanoko
恋愛
記憶喪失の私が強面のギルドマスターに拾われました。 名前も年齢も住んでた町も覚えてません。 ただ、ギルマスは何だか私のストライクゾーンな気がするんですが。 プロット無しで始める異世界ゆるゆるラブコメになる予定の話です。 小説家になろう様にも公開してます。

【完結】モブのメイドが腹黒公爵様に捕まりました

ベル
恋愛
皆さまお久しぶりです。メイドAです。 名前をつけられもしなかった私が主人公になるなんて誰が思ったでしょうか。 ええ。私は今非常に困惑しております。 私はザーグ公爵家に仕えるメイド。そして奥様のソフィア様のもと、楽しく時に生温かい微笑みを浮かべながら日々仕事に励んでおり、平和な生活を送らせていただいておりました。 ...あの腹黒が現れるまでは。 『無口な旦那様は妻が可愛くて仕方ない』のサイドストーリーです。 個人的に好きだった二人を今回は主役にしてみました。

処理中です...