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第27話 成人のお祝い1
しおりを挟む本日もお店は大盛況、1番忙しい昼時が終わって、一息つけるなーと空いたばかりのテーブルを片付けていると
「青葉ちゃん、ちょっと良いかな?」
聞き慣れた声に振り向けば、そこに立っていたのはソラウさん
しかし、店の入り口の方をチラチラ振り返り落ち着かない様子だ。
さっき、会計を済ませてレイさんと共に帰っていったのに、忘れ物でもしたのだろうか?
「どうかされたんですか?」
片付けていた手を止めて、ソラウさんに向き直る
「実は、来週の祝日がちょうどレイの妹が成人する18歳の誕生日なんだ。
成人になる年の誕生日は、家族や親戚、友人達と盛大にお祝いするのがこの国の慣わしなんだけど、そこで是非!
その日の料理を青葉ちゃんにお願いしたいって、レイの妹のミリーに頼まれてさ…あっ、なんで俺が頼みに来たかって言うと、内緒で青葉ちゃんをその誕生日に招待して、兄であるレイを驚かせる。
という、ミリーの悪巧みも入っててさ、だから青葉ちゃんにも参加してもらいたいんだ。
お店が休みの日にゴメン、けど頼めないかな?
俺にとっても、ミリーは妹みたいなもんだからさ」
お願い!と、手を合わせて頼み込むソラウさんの姿に、慌てて顔を上げて下さいと声をかける。
お店は休みだけど、レイさんとソラウさんはこのお店の第一号のお客様で、私にとっても特別な2人だ。
できる限り、頼みは引き受けたい。
ミリーさんの悪巧みとやらに乗るのはもちろん構わないのだが…
「私なんかでよければ、喜んで料理をご用意しますし参加もしますが…会場は「本当!?よかったぁー!!ありがとう!青葉ちゃん!!」
そう言って、嬉しそうに私の手を取りブンブンと振るソラウさん
「会場って言うほど立派なもんじゃ無いけど、レイの自宅の庭だよ普通の家だからそんなに広く無いけどね。
当日は料理を運んだりするだろうから、昼前に俺が迎えに来て会場まで案内するよ」
ありがとう、ありがとう!と、とても嬉しそうにしているソラウさんには申し訳ないが…果たして私の保護者達に外出許可が降りるか、非常に不安なところである…
いっそ、この店を会場として使ってもらえた方が多いに…
「いや、あのーソラウさん、わたし「お客様、うちの店長へのお触りはご遠慮いただけますかー?
それとー、そのお祝いに僕は含まれてへんの?
青葉1人を、僕が行かせるとでも思てんの?」」
どこからともなく現れた狐鈴さんが、横からギリギリと音を立ててソラウさんの手首を掴む
「イタタタ!悪かったって!
本当に青葉ちゃんの事になると見境ないなアンタら…」
慌てて手を離すソラウさんを狐鈴さんが睨みつける
「ほんで?」
狐鈴さんの圧のある言葉に、珍しくソラウさんの耳がイカ耳のように後ろへと倒れて、深いため息をついた。
「はぁ…こうなると思ってたから、ミリーにはもう2人参加する事になると思うけど?とは、言ってある。
青葉ちゃんさえ来てくれれば、付き添いに誰が来ようと構わないってさ」
やれやれ、と言わんばかりにソラウさんが首を振る
「腕大丈夫ですかソラウさん!?狐鈴さんがスミマセン…」
「大丈夫だから青葉ちゃんは気にしないで…
っと、忘れる所だった。
料理なんだけど、肉料理一品と食後のデザートを何品か頼みたいんだ。
生クリーム乗せプリンは必ず食べたいです。って、ミリーからの伝言、多分レイから聞いたんだろうな」
口ぶりからするに、妹さんはお店には来たことがないのだろう。
それにしても、いつの間にかお誕生日会に狐鈴さんとゴコクさんも来る事になっている…。
でも、付き添いがあれば外出許可が降りるなら、それはそれで良かった。
内心で、ホッとしつつ成人の誕生日という一大イベントの一部料理を担当するのだ。
しかも相手はお世話になっているレイさんの妹!
頑張らなければ!!
「分かりました!腕によりをかけて美味しい料理とデザートを用意しますね!
何時もお二人にはお世話になってますし、その妹さんの人生に一度のイベントの料理!
頑張ります!!」
気合を入れて己の拳を握り締めれば、ソラウさんがアハハハと声を出して笑う。
「さすが青葉ちゃん!期待してるよ!
それじゃ、来週は宜しくね!」
そう言って、笑顔で手を振ると店の外へと出ていったソラウさん
頑張るぞー!と振り返れば、目の前には冷たく目を細めた狐鈴さんと、その先のカウンターから同じく目を細めたゴコクさんが視界に入る。
何故不機嫌!?
「えぇ…っと…?」
分からない…勝手に休日営業、配達を決めたこと?
それとも、また1人でフラフラ出かける気だったなコイツ!
とでも思われた!?いや両方!?
「青葉は、あのレイって犬っころの事をどない思ってはるん?」
思いもよらない狐鈴さんの問い
脈略!?
何故そんな話になるのか!?
「そんなの決まってるじゃないですか!
レイさんとソラウさんは、このお店の初めてのお客様ですよ!
それから毎日来てくれる常連さんで、大切なお客様です!!」
そう力強く力説すれば、コチラを見ていたゴコクさんがやれやれと言わんばかりに首を振りながらスッと目線を落として仕事に戻り、狐鈴さんも小さなため息をついた。
「ほんまに、ほんまの少しだけやけど、あの犬っころに同情してもーたわ…」
同情!?なんで!?なんで私は呆れられているのですか!!!!!!?
スタスタと去っていく、狐鈴さんの背中を見つめながら、私が何をしたと言うんですか!?
と、心の中で涙を流した。
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