2度と恋愛なんかしない!そう決意して異世界で心機一転料理屋でもして過ごそうと思ったら、恋愛フラグ!?イヤ、んなわけ無いな

弥生菊美

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第28話 成人のお祝い2

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 レイさんの妹さんの誕生会の誘いを頂いたが、この世界の祝い事のマナー知識が必要だろうと、お店に来ている洋品店の女の子から、成人の祝いの席へ参加する際のマナーを教えてもらった。
 
 成人の誕生日パーティーの主役は青い服を着るそうなので、それに被らない色の明るめの服であるなら、服は何でも大丈夫との事、そしてお祝いの気持ちを表すために、青い装飾品を1つ身につけるのが礼儀なのだとか、成程…それは用意せねばなるまい。

 話を聞いた更に翌日、従業員兼保護者であるゴコクさん、狐鈴さんと共に仕事終わりに宝飾店へと向かった。
 日本にいた時もアクセサリーに興味があまり無かったので、どれを選べば良いのか悩む…
幸いにも青色という括りはあるが、祝い事で青が使われるせいか、店には青色の宝飾品で溢れかえっている。

 なっ…悩む…

 うーん、と唸りつつもガラスケースの中を眺めていると、ゴコクさんと狐鈴さんが私の両サイドにスッと現れる。
 そして、そのガラスケースの上に両サイドからスッと差し出される指輪…指輪!?

「青葉には、この小さい青い石のついた指輪が似合うと思う」

「はぁ?何言うてんねん、青葉はこっちの水色の石が散りばめられてる指輪の方が似合うわ!
ほんで、指輪の内側にお互いの名前を彫ろうなー」

 ゴコクさんはちょっと照れたように、狐鈴さんはニコニコと嬉しそうにしている。
何故2人して指輪をチョイスしたのか!?
 そこは、ネックレスとかブレスレットとか、色々あるでしょうよ!
私じゃなきゃ、勘違いしちゃうよ!
2人がこの世界で無自覚タラシ男にならないか心配になってきた…。

「お気持ちは嬉しいのですが…指輪はちょっと…髪留めにしようかと思ってまして…」

「えぇー!何で!
指輪でもえーやん、狐鈴さんの指輪受け取ってくれへんの!?「ハイ」」

「食い気味で断るやん…流石青葉…」

ふん、と不敵に笑ったゴコクさんがズズいと私に指輪を差し出してくる

「青葉、俺の指輪は受け取ってくれる?「イイエ…」」

「……。」

「アハハハハ!!何、自分ならイケると勘違いしとんねん!
ダッサ!勘違い牛ダッサ!!」

 あの頃のクールな狐鈴様はどこへやら?
と言いたくなるような、小学生のようにゴコクさんを煽る狐鈴さん、そしてそれに乗っかるゴコクさんが、絶対零度の真顔で狐鈴さんの顔をみる。

 喧嘩するほど仲が良いと言うし、2人は意外と良い関係なのかもしれない。

 溜め息をついて喧嘩を止める事を諦めた私は、別のガラスケースへと移動して、店員の女の子から色々とアドバイスを貰いながら青い蝶々の髪留めを購入した。

 嫌味の応酬がひと段落したゴコクさんと、狐鈴さんから「青葉はどう思う?」と、あーでもない、こーでもないと選ぶ2人にアドバイスをするも、宝飾店の可愛い女子店員達が頬を染めてイケメン2人を前に、こちらもお似合いですぅー♡と、チヤホヤし始めたので、私はフェードアウトするように後ろに下がり、店の椅子に腰掛けた。
 
 後ろからゴコクさん達のやりとりを眺めながら、今更ながらに2人共顔が良いし身長高いもんね…そういう反応になるよねと、他人事のように見てしまう。

 ここでも実感するのは、己の可愛げの無さ…指輪も頬を染めて受け取るべきだったのか?
 そして、あの輪に入って私が2人に似合う物を選んであげちゃうんだから♡とか思うべきなのだろうか?
 
 女子力を持ってない&自分への自信の無さが悲しくなる。
 はぁー…油断すると直ぐに襲ってくる自己嫌悪のループ、全く嫌になる。

 結局ゴコクさんは、すずらんに似た花の形の青色の銀製ブローチを、狐鈴さんは下地がシルバーで青い石の乗ったボロタイを購入していた。

 お会計は経費で落としますのでと、私が財布を取り出したところゴコクさんに手で制される。

「青葉の分も俺が払うから」

「なに抜け駆けしてえぇーカッコしようとしてんねん
青葉の分は僕が買うんやから、牛は引っ込んどき!」

「「あ〝ぁぁぁん!?」」と再度レジ前で火花を散らす2人を横目に、スミマセン…まとめて私が払いますので…。
と、店員さんに謝って支払ったのは記憶に新しい。
 誕生日会でも喧嘩しそうで不安しかない…。

 料理はお肉料理を希望されていたので、パーティーと言えばローストビーフのイメージ…と言うかそれしか見栄えの良い豪勢な肉料理が思いつかなかった…ので、それにしようと決めたのだが、そこでふと思い浮かぶのはゴコクさん…。

 狐鈴さんが、事ある毎にゴコクさんの事を「牛」と言うので、ゴコクさんに確認したところ…なんと人の姿になる前は牛だったと言う衝撃の事実を聞いてしまった。
 
 今まで、サイコロステーキとか牛丼とか普通に賄いで出してしまっていた…もはや共食いですよね!?
なんてサイコパスな女なんだ私は!?
いや、しかし…何も言わずに食べるゴコクさんも大概…本人は

「人の姿が長すぎて、別に気にならない。
青葉が作ってくれる物なら、同族だろうと毒だろうと何でも食べるよ」

と、微笑みながら言われ、私の背筋に悪寒が走ったのは言うまでもない。

「青葉、これあかんヤツや…このサイコパス、警察呼んで捕まえてもらお…」
 
 横に居た狐鈴さんも、珍しく青ざめていた。
 狐鈴さんも言っていたが、正にサイコパス…ゴコクさんは間違いなく病デレ属性だ…ヒッ…と声がでかけ、今後はゴコクさんには絶対に牛肉料理は出さないと心に誓った。

 そんなこんなで怒涛の1週間が過ぎ、あっという間に当日が来てしまった。 
 私の服装は落ち着いたデザインのアイボリーのワンピースに、髪は頑張りすぎました!感を出さないように、ゆるっと巻いたハーフアップ、元々髪色が暗いしまぁ、そこまでは目立たないだろう。

 保護者二人組も、洋品店の女子達からマナーに反しない服装ということで、白のワイシャツに黒のスラックス、そして先日購入したワンポイントの青の装飾品、そんなシンプルな服装なのにまるでモデルの様な2人
カッコイイな2人とも…その隣を歩くのか…女の子に舌打ちされそう…。
思わず心の中で涙を流す。

「なんや青葉、そんな可愛らしいくおめかししてはるのに、浮かない顔やな?
可愛い顔が台無しや、狐鈴さんの顔見てニコッて笑ってみ」

肩に掛かった私の髪を後ろに流してくれながら、イケメンスマイルが私を照らし、ゴコクさんも

「青葉は笑った顔が1番可愛い。
笑って、青葉…」

と、微笑む

 まっ…眩しい!!

 思わず手で日除を作りたくなるほどの、イケメン2人の悩殺スマイル…しかし、浮かない顔をしている私に気を遣ってくれているのだからと、口の端がヒクヒクと引き攣りつつも笑顔を作ると

「ブハッ!!」
「フッ…ン…フフッ…」

 狐鈴さんが吹きだし、ゴコクさんが横を向き肩を振るわせつつ必死に笑いに耐えている。
 悪かったですね…どうせ引き攣り笑いの変顔しかできませんよ…2人をジト目で睨みつければ、カランカランと店の扉が来客を知らせる。

 扉の方を見れば、何時もの作業着とは違う正装したソラウさんの姿が目に入った。
 ソラウさんも白いシャツに黒のスラックス姿、そして胸ポケットには水色のハンカチが入っているというシンプルな装いなのだが、猫耳がピクピクと忙しなく動き、長い猫さんの尻尾がまた何ともファンタジー要素満載で、枯れた乙女心が潤う気さえする。

 正装した猫さん可愛い!!!

心の中で絶叫しつつ、ソラウさんの元へと駆け寄る。

「ソラウさん、こんにちは
お迎えありがとうございます。
 私達の服装、これで大丈夫でしょうか?
この国に来てから、初めてのお呼ばれなもので少し心配でして…」

そう言って、後ろのメンズ2人の方を振り返る。

「おまたせーって、服装?
んー?まったく問題ないよ
やっぱ、あの2人はタッパがあるからサマになるな…青葉ちゃんもすごい可愛いし完璧!
レイの奴がどんな顔するか、今からすげー楽しみだ。」

 クツクツ笑うソラウさんの尻尾が楽しげに揺れた。






 
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