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第13話『魚人さんいらっしゃい』

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「サトシ。この村に人魚が
 移住を希望してきておるぞ」

「おお人魚か!」

テンション高めで、ミミの
言う”人魚”の元に向かう。

「ギョギョ魚ッ?」

「……こんにちわ」


(って……。そうじゃないだろ!!
 魚の要素はじゃなくて
 のほうにすべきだろっ!
 それに人魚じゃなくて半魚人だ!)


「ギョ……? お前様が、
 この村の村長のサトシ殿ギョッ?
 おいらは漁師町インスマウスの
 魚人族《ディープワン》の町長のハンギョ
 というものギョ。以後お見知り
 おきして欲しいギョ」 


サトシは、予想と違ったが移住民が
増えること自体は喜ばしいことなので
気を取り直してハンギョと向かいあう。


「ハンギョさん。妻からは
 移住希望と聞いていますが、
 どうして漁師町インスマウスから
 このまだ開拓中の村に
 移住したいと考えたんですか?」

「実は……。最近、王都からの
 海産物や塩の納税義務があまりに
 きつくなってきたのが原因ギョ。
 もう、税が重すぎておいら達には
 とても暮らせなくなってきたギョ……。

 納税義務を果たすために町から
 餓死者も出してしまったので
 これ以上漁師町にとどまることは
 できないと判断して、この村への
 移住を決意したギョ」


「なるほど。理解しました。
 それは、大変な思いをされましたね。
 話を聞く限りは、移住の手配は
 なるべく急ぎで動いた方が良さそうですね。

 ところでこの村への移住希望との
 ことでしたが、どれくらいの人数が
 ここに来たいと言っているんですか?

 事前にみなさんが暮らすための家とか
 井戸とかを作る必要があるんで
 正確な人数でお願いします」


「移住者の総数は28名ギョ。
 急な話にも関わらずおいらたちの
 住まう住居まで用意してくれるとは
 涙がでるギョ。ありがとうギョギョ。

 もし移住させてくれたらその恩返し
 として海産物と塩は毎月無償で
 提供することを約束するギョ」


「海産物と塩ですか。
 そりゃあ助かります!」
 
「これで一気に料理のレパートリーが
 増えるのじゃな!」

「イカとかエビとかカニとか
 タコとか、とにかく食べられる
 海産物は何でも持ってきてくれると
 助かります。この村で取れる野菜は
 無償で移住者に提供しますので」

「お安い御用ですギョ」


「ついでと言っちゃなんですが
 コンブとかの海藻類の手配
 もお願いしてもいいですかい?」

「……? もちろん構わないギョ。
 だけど、そんな海の雑草を
 どう使うギョギョ?」


「天日干しすると良いダシが
 取れるようになるんですよ
 スープとかの味に深みを
 もたせるのに向いているんです」

「海藻なんて取り放題だし
 片手間で出来るから大丈夫ギョ」

「そっかー。そりゃ助かります!
 そうだ、海産物の荷運びとか
 大変でしょう?」


ハンギョは少し思案したあとに
サトシの問に答える。


「なにぶん生物で重量もそれなり
 なので、特に夏場は鮮度の
 いい状態で届けるのは
 確かに結構たいへんギョ。
 何分、人手が足りないもので。

 鮮度を保つために氷魔法を使う
 といってもさすがに限度があるギョ」


「そうでしょうねぇ。っとなると極力
 早く村に荷物を持ち帰れるように
 荷物持ちがあったら便利でしょう?」

「大量の荷物を運搬することに
 なるから力仕事を手伝って
 くれる人が居ると助かるギョ」


「ですよね。それじゃ、俺のゴーレムを
 5体貸します。そいつに荷運び
 をさせてやってくださいよ。
 道中で魔獣が出た時にはパンチ撲殺
 してくれるから安全に荷運びができますよ
 不合理な納税を強いた者たちに
 脅された時の抑止力にもなりますし」


サトシは、ウ・ラヴォースを倒した
際に手に入れた無尽蔵のエネルギー
を生み出す"ダンジョン・コア"を
埋め込んだゴーレムを魚人に貸し出す。


「これは助かるギョギョ
 サトシ殿、ありがとうギョ」

「ところで、これは好奇心から
 聞くんですがハンギョさんたち
 は亜人? それとも
 魔獣が進化した存在?」

「魚人族《ディープワン》は亜人ギョ。
 見た目は魔獣のサハギンに
 似ているギョが、亜人ギョ。
 というか、ご先祖たちはもともとは
 普通の人族だったって聞いているギョ」

「ほー。興味深い」

「元々は、漁師町インスマウスの
 魚人は、人間だったらしいギョ。
 変な儀式をしたら、住民が全員
 魚人になったらしいギョ。
 それが魚人になった起源と言われて
 いるギョ。ちょーウケるギョギョッ」


「そういうこともあるのか。ほーん。
 いや、魚人族《ディープワン》にとって海産物とか
 食べるのは共食いとかにならないか
 と気にしてたんだけど、いまの
 ハンギョさんの回答を聞く限り
 容姿が魚人なだけで、亜人ならその
 あたりは気を使わなくても良さそうだね?」


「一切気にする必要はないギョ。
 基本的に他の亜人と同じように
 なんでも食べれる雑食性ギョ。
 ちゅーか元が人間ベースだから
 海中でも活動できるけど、
 ずっと海中にいれる訳ではないギョ。
 あくまで生活の舞台は陸上ギョ。
 この村はおいらたちが暮らすには
 めっちゃ快適な環境ギョ」

サトシの隣で、頷きながら
静かに聞いていたミミが
ハンギョに向かって話かける。


「なるほどの。ところでじゃ、
 お主達、魚人族《ディープワン》は
 種族上、宗教上の理由で食べれない
 物とかないのかの? 

 共同生活をする際に気をつけねば
 ならぬ点などがあれば
 事前に教えて欲しいのじゃな」


「基本的にはないギョ。宗教上
 という点では、父なるタゴンと
 母なるハイドラに敬意を示すために
 極力、タコとかイカは食べないように
 はしているけど、まぁ、ほとんど
 廃れた習慣だから。気にせず食べる
 住民がほどんどという感じギョ」


「なるほどのう……。
 やはり種族ごとに信仰する
 神は違うのじゃな。主らの前に
 移住したドワーフたちは
 ヘパイトスとかいう神を
 信仰していると言っていたのじゃな」

「鍛冶神のヘパイトスは有名な神ギョ。
 ドワーフとは異なる種族の中にも
 鍛冶師を志すものの中には
 元々の宗派から鞍替えして
 ヘパイトスを信仰するように
 改宗するものもいるくらいギョ」


「なるほど、だいたいわかった」


サトシは集中力が切れたのか
明後日の方向を見ながら応える。

サトシに悪気はない。集中力
切れなのと宗教や種族などの
この世界固有の話になると
正直理解できないことが多いのだ。


そのサトシの死んだ魚の
ようになっている目をみかねて
ミミが咄嗟にフォローを入れる。


「すまぬな、ハンギョさん。
 妾の旦那さまはあまり
 難しい話は得意ではないのじゃな。
 細かい話は追って妾が旦那さまの
 代わりに聞かせてもらのじゃ
 それでいいかの。サトシ」

「すまん。ミミ、ちょっと宗教とか
 種族とかいろいろと難しい話
 なのでバトンタッチだ」


「漁師町インスマウス町長の
 ハンギョ殿もそれでいいかの?」

「ミミ殿は村長様の奥方で
 あればむしろ喜んでギョ」

「妾の方からのお願いとしては、
 もし氷魔法が得意な種族で
 移住希望の者が居たら、この村を
 紹介して欲しいのじゃ」

「それはどうしてギョ?」

「収穫物を腐らせないように巨大な
 氷室を造ろうと思っているのじゃが
 そうなると、氷属性に長けている
 ものが居ると心強いのじゃな」

「なるほど。理解したギョギョ。
 海鮮とか肉とかも長期保存が
 できるのは確かに便利ギョ」


「ふむ。これから村をドンドン
 開拓していくとなると食料問題
 は大きな課題となるのじゃな。
 ちょー大きな氷室が作れれば
 その心配が不要になるのじゃ!」

「氷魔法が使える亜人にはちょっとした
 心当たりはあるから、あまり期待は
 せずに待っていて欲しいギョ」

「助かるのじゃ~」

「おっし! ミミナイス。
 これでケチャップを長期保存
 できる目処がついたな!」


「ケチャップとは? なんギョ?」

「まぁまぁ、ハンギョさん騙された
 と思って、この赤いソースを
 舐めてみてよ」

「ペロ……。
 これは、普通にしょっぱいギョ」

「いやいやいやいやっ! 
 これは単体ではイマイチ
 なんだけど、ほらこの
 揚げたジャガイモにたらして
 食べると最高なんだって!
 その揚げたジャガイモに
 つけて食べてみてよ!」

「おお……確かにサトシ殿の言う通り、
 これはめちゃうまギョ!
 あまりにウマすぎて馬になりそうギョ」


(まあ。馬というよりも
 明らかに容姿は魚だけどなっ!)


サトシが妙にガチな反応をするので
空気を読んで多少のお世辞は
あったかもしれないが基本的に
感動しながら、ケチャップをつけた
揚げジャガイモを食べていた。


「というわけで、このケチャップという
 最強の調味料をこの村の名産品として
 なんとかして流行らせたいから
 行商人とかに会う機会があったら 
 宣伝してくれ!」

「もちろん協力するギョ」
=================
【辺境村の開拓状況】

◆住民
土属性:1名
世界樹:1名
ドワーフ:35名
魚人族《ディープワン》:28名 ←New!
ゴーレム:たくさん

◇特産品
ケチャップ
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