神様、ちょっとチートがすぎませんか?

ななくさ ゆう

文字の大きさ
74 / 201
第三部 エルフと龍族の里へ  第一章 よもやま旅路

3.はじめてのおつかい/または偶然の再会の話

しおりを挟む
 はじめてのおつかい、である。
 いや、どこぞの番組ではなく。

 テルグスについた翌日、僕とリラはダルトさんに連れられこれからの旅で必要になる道具を買い集めに出ていた。
 ラクルス村にはお店なんてないし、前世では病室から出られなかったしで、文字通り『はじめてのおつかい』なのだ。

 まずは、僕とリラの鞄。
 服こそ麓の村で最低限仕立てたのだが、鞄までは手に入らなかった。
 だが、旅をする上では必需品だ。
 お師匠様の小屋で使っていた鞄は『闇』の襲撃であっさり破れちゃったしね。
 リュックサックみたいに背負える布袋と、腰に巻き付ける鞄をそれぞれ買ってもらう。

 次に向かったのは薬屋さん。
 ここは購入のためというよりはこちらが売るためだ。

「ほう、本当にこの薬は君が作ったのかね?」

 リラに尋ねる薬屋さん。
 頷くリラに、心底感心した顔。

「素晴らしい。その年でこれほどの純度で作るとは、よほど師匠がいいんだろうね」
「はい」

 お師匠様を褒められ、リラはうれしげに頷いた。
 が。

「お師匠さんを大切にしなよ」

 その言葉にはなんとも言えない表情になったのだった。

 その次は食料品屋さん。
 乾パンや干し肉などの保存食を中心に購入していく。
 他に買ったのはお塩。

「こっちのお塩よりさらさらなのは何?」

 リラが興味津々の顔でお店の人に聞く。

「あー、それは貴重品だからね。触っちゃだめだよお嬢さん」
「貴重品?」
「砂糖だよ」

 確かにこの世界では貴重品だ。
 ダルトさんもしげしげと観察。

「ほう。しかし、砂糖なのに塩のように真っ白だな」

 あれ?

「砂糖って白いものじゃないんですか?」
「それはもちろんそうだが、ここまで真っ白なのは珍しい」

 なるほど。
 日本では砂糖は白くて当然だけど、この世界ではそうでもないらしい。

「この砂糖はとても純度が高いんだよ。金の重さの1/2くらいの価値はあるね」
「ほう。それはずいぶんと良い品物を手に入れたものだな」
「とんでもない。高級品すぎて、うちみたいな店では持て余しているよ。安売りや自分たちで使うわけにもいかないしね。
 坊ちゃん達は行商人だろう。どこかの貴族に売り先を持っていないかね?」
「あてがないわけではないが、買い取る金はないな。売り掛けにするにしても、この街に戻ってくる予定もないし、店主としても一見客いちげんきやくをそこまで信用できないだろう?」
「そりゃあそうだな」

 店主さんは苦笑する。もともと言ってみただけなのだろう。
 ちなみに行商人というのは、僕らのかっこうを見て店主が勝手に誤解しただけだ。
 まさか王女様一行とはいえないので、誤解させたままにしておく。

「さて、最後は帽子屋か」

 これから先、砂漠に近い場所を歩くらしく、僕らだけでなくアル王女達の帽子も購入するように言われている。

「えっと、こっちだな」

 ダルトさんが言って、僕らはメイン通りから裏通りに入った。
 しばし裏通りを歩いていると――

 突然前からスキンヘッドの男が走ってきて、盛大にわざとらしくダルトさんにぶつかった。

「いててて、このガキども、ぼーっと歩いているんじゃねーよ」

 いや、どう考えてもぶつかってきたのはそっちだろう。
 するとどうだろうか。

「そうだぜ、坊や達、お兄さんに謝りな」
「お金持ちのお坊ちゃんなんだろう? ちょっとお兄さん達にお小遣いくれたら許してやるからさ」

 周囲にいた他の2人の男達が、いつの間にやら僕らを囲んでそう言い出す。
 とりあえず、僕は頭の中でスキンヘッド、長髪、入れ墨と呼び分けることにする。

 これ、どう考えても良くない雰囲気だよね。

「断る」

 ダルトさんがかっこよく言う。

「お前達の言い分は明らかに難癖だろう。従う道理はない」

 おお、カッコイイ。
 だけど、ダルトさんどうするつもりなの?

 事実、3人の男達はニヤニヤ笑う。

「おうおう、勇んじゃって恐い恐い。弟や妹の前でかっこつけか?」
「この2人は兄弟ではないが、いずれにしても……」

 言いかけたダルトさんの後頭部を入れ墨がぶん殴る。

「ぐっ」

 あっさり倒されるダルトさん。

 ――ちょっとぉぉぉぉ。
 ――さっきのかっこよさどこにいった?

 しかもなんか、そのまま長髪に蹴飛ばされて転がされているし。

「おいおい、あまりやり過ぎるなよ。身ぐるみ剥いだときに服の価値が下がるだろ」
「ああ、そうだな。おい、そっちのおちびちゃん達も鞄よこしな」

 さて、どうするか。

 選択肢は大きく3つだろう。

1.逃げる。
2.戦う。
3.降参する。

 ……僕とリラだけなら1は可能だ。
 僕の跳躍力に街のごろつきがついてこれるわけがない。
 が、ダルトさんまで回収できるかいうと、距離も離れてしまったし微妙。

 戦えば勝てるだろう。
 一番近くにいるスキンヘッドをぶん殴ってやればいい。
 それだけでいつぞやのアベックニクスのように、文字通り粉砕できる。
 が、手加減しても大怪我させてしまうだろう。

 かといって、降参して全部渡すのも。
 悔しいとかいう以前に、アル様達に怒られそうだ。

 それ以外の手段としては大声で助けを呼ぶとかもあるだろうけど……

 などと考えていると、今度はスキンヘッドがリラの首根っこを掴んだ。

「おらっ、とっとと出す物出せや姉ちゃん。言うこと聞かないと物だけじゃなくてお前さんも売り払っちまうぞ」

 ゲヘゲヘ下品な笑い。

 ――こいつら、リラにまでっ!!

 ダルトさんならいいというわけではないが、リラに手をかけようとしているスキンヘッドは許せない。
 ちょっと痛い目見てもらおう。いざとなったらダルトさんの回復魔法もあるし。
 とはいえ、さすがに殺しはしたくない。飛びかかって殴り飛ばすのは、僕の力を考えるとオーバーキルだ。

 ――ならば。

「わ、わかったよ」

 僕は精一杯怯えた演技をして――いや、実際怯えていたんだけど、ともあれ背負った袋を下ろしながらスキンヘッドにゆっくりと近づいた。

「鞄は渡すから、リラを離して」
「ふんっ、やっとその気になったか」

 スキンヘッドはリラを地面に下ろすと、僕から鞄を受け取ろうとし――

 ――その瞬間、僕はスキンヘッドの膝を蹴飛ばした。
 リーチの短い僕は近づかないと戦えない。

「ぎゃ、ぎゃぁあぁぁぁあぁ」

 全力で蹴ったわけではない。
 そんなことをしたらスキンヘッドの足を粉々に吹き飛ばしてしまうだろう。
 むしろ、僕としては軽く蹴ったくらいの印象。

 それでも、スキンヘッドは立っていることができないらしく、崩れて落ちた。

「なっ、ガキ、一体何をした!?」

 未だにダルトさんを痛めつけていた長髪が、僕に問う。
 僕はその問いに答えない。
 200倍の力なんて安易に口に出すべきことじゃないし、むしろこの場は不気味な現象くらいに思ってもらってとっとと逃げ出してもらいたい。

 が。

「このガキぃ!!」

 入れ墨は空気が読めないのか、僕に襲いかかってくる。
 右腕を振り上げる入れ墨。

 だが、遅い。
 
 少なくとも『闇』やキラーリアさんのスピードにくらべたら、新幹線と各駅停車だ。
 ――いや、僕は電車に乗ったことないけど。

 僕は入れ墨の右腕を、自分の左腕で払いのけた。

「ぎゃ、ぎゃあぁあぁぁぁぁっぁ」

 右腕を抱えて転げ回る入れ墨。
 払いのけただけなのに。

「なっ……」

 長髪は地面に転がるスキンヘッドと入れ墨を見て言葉を失い、次の瞬間きびすを返して逃げ出した。

 同時に。
 ダルトさんが呪文を唱え、自分の怪我を回復させたのだった。

 ---------------

 長髪が逃げた後、街の警備兵みたいな老人が来て、僕らに事情を尋ねた。

「ふむ、つまりコイツらが――あと1人長髪の男と一緒に、君たちに理不尽な難癖をつけてきたと」
「はい。それで仕方なく俺達も反撃を」

 ――いや、ダルトさん、あなたは反撃できずに転がされていただろう。

 内心思うが、ややっこしくなりそうなので黙っておく。
 7歳の、それも片手がない僕がこの2人に圧勝したなんてなったら、それこそ話がこんがらがるからね。

「ふむ、コイツらはこの辺りで何度も問題を起こしている連中だ。長髪の男も大体見当はつく。
 君たちは旅の者か?」
「はい」
「念のため、名前と泊まっている宿を教えてもらえるかな?」

 警備兵に尋ねられ、ダルトさんと僕は名乗る。ただし、ダルトさんはファーストネームのみ。レストアの名前は出したくないらしい。
 宿屋については正直に答えたようだ。

「それで、お嬢さんの名前は?」

 警備兵に尋ねられるが、リラは僕の後ろに隠れる。

「どうしたの? リラ?」

 僕がリラに尋ねると、警備兵の顔色が変わる。

「リラ、だって?」

 え、えっと、この会話は一体?

「まさか……そんな……だが、その黒髪は確かに……」

 リラは警備兵の前におずおずと進み出た。

「お久しぶりです、お祖父ちゃん」

 ――ええええええええぇぇぇ!?
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

現代知識と木魔法で辺境貴族が成り上がる! ~もふもふ相棒と最強開拓スローライフ~

はぶさん
ファンタジー
木造建築の設計士だった主人公は、不慮の事故で異世界のド貧乏男爵家の次男アークに転生する。「自然と共生する持続可能な生活圏を自らの手で築きたい」という前世の夢を胸に、彼は規格外の「木魔法」と現代知識を駆使して、貧しい村の開拓を始める。 病に倒れた最愛の母を救うため、彼は建築・農業の知識で生活環境を改善し、やがて森で出会ったもふもふの相棒ウルと共に、村を、そして辺境を豊かにしていく。 これは、温かい家族と仲間に支えられ、無自覚なチート能力で無理解な世界を見返していく、一人の青年の最強開拓物語である。 別作品も掲載してます!よかったら応援してください。 おっさん転生、相棒はもふもふ白熊。100均キャンプでスローライフはじめました。

うっかり女神さまからもらった『レベル9999』は使い切れないので、『譲渡』スキルで仲間を強化して最強パーティーを作ることにしました

akairo
ファンタジー
「ごめんなさい!貴方が死んだのは私のクシャミのせいなんです!」 帰宅途中に工事現場の足台が直撃して死んだ、早良 悠月(さわら ゆずき)が目覚めた目の前には女神さまが土下座待機をして待っていた。 謝る女神さまの手によって『ユズキ』として転生することになったが、その直後またもや女神さまの手違いによって、『レベル9999』と職業『譲渡士』という謎の職業を付与されてしまう。 しかし、女神さまの世界の最大レベルは99。 勇者や魔王よりも強いレベルのまま転生することになったユズキの、使い切ることもできないレベルの使い道は仲間に譲渡することだった──!? 転生先で出会ったエルフと魔族の少女。スローライフを掲げるユズキだったが、二人と共に世界を回ることで国を巻き込む争いへと巻き込まれていく。 ※9月16日  タイトル変更致しました。 前タイトルは『レベル9999は転生した世界で使い切れないので、仲間にあげることにしました』になります。 仲間を強くして無双していく話です。 『小説家になろう』様でも公開しています。

SSSレア・スライムに転生した魚屋さん ~戦うつもりはないけど、どんどん強くなる~

草笛あたる(乱暴)
ファンタジー
転生したらスライムの突然変異だった。 レアらしくて、成長が異常に早いよ。 せっかくだから、自分の特技を活かして、日本の魚屋技術を異世界に広めたいな。 出刃包丁がない世界だったので、スライムの体内で作ったら、名刀に仕上がっちゃった。

【完結】辺境に飛ばされた子爵令嬢、前世の経営知識で大商会を作ったら王都がひれ伏したし、隣国のハイスペ王子とも結婚できました

いっぺいちゃん
ファンタジー
婚約破棄、そして辺境送り――。 子爵令嬢マリエールの運命は、結婚式直前に無惨にも断ち切られた。 「辺境の館で余生を送れ。もうお前は必要ない」 冷酷に告げた婚約者により、社交界から追放された彼女。 しかし、マリエールには秘密があった。 ――前世の彼女は、一流企業で辣腕を振るった経営コンサルタント。 未開拓の農産物、眠る鉱山資源、誠実で働き者の人々。 「必要ない」と切り捨てられた辺境には、未来を切り拓く力があった。 物流網を整え、作物をブランド化し、やがて「大商会」を設立! 数年で辺境は“商業帝国”と呼ばれるまでに発展していく。 さらに隣国の完璧王子から熱烈な求婚を受け、愛も手に入れるマリエール。 一方で、税収激減に苦しむ王都は彼女に救いを求めて―― 「必要ないとおっしゃったのは、そちらでしょう?」 これは、追放令嬢が“経営知識”で国を動かし、 ざまぁと恋と繁栄を手に入れる逆転サクセスストーリー! ※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。

99歳で亡くなり異世界に転生した老人は7歳の子供に生まれ変わり、召喚魔法でドラゴンや前世の世界の物を召喚して世界を変える

ハーフのクロエ
ファンタジー
 夫が病気で長期入院したので夫が途中まで書いていた小説を私なりに書き直して完結まで投稿しますので応援よろしくお願いいたします。  主人公は建築会社を55歳で取り締まり役常務をしていたが惜しげもなく早期退職し田舎で大好きな農業をしていた。99歳で亡くなった老人は前世の記憶を持ったまま7歳の少年マリュウスとして異世界の僻地の男爵家に生まれ変わる。10歳の鑑定の儀で、火、水、風、土、木の5大魔法ではなく、この世界で初めての召喚魔法を授かる。最初に召喚出来たのは弱いスライム、モグラ魔獣でマリウスはガッカリしたが優しい家族に見守られ次第に色んな魔獣や地球の、物などを召喚出来るようになり、僻地の男爵家を発展させ気が付けば大陸一豊かで最強の小さい王国を起こしていた。

攻撃魔法を使えないヒーラーの俺が、回復魔法で最強でした。 -俺は何度でも救うとそう決めた-【[完]】

水無月いい人(minazuki)
ファンタジー
【HOTランキング一位獲得作品】 【一次選考通過作品】 ---  とある剣と魔法の世界で、  ある男女の間に赤ん坊が生まれた。  名をアスフィ・シーネット。  才能が無ければ魔法が使えない、そんな世界で彼は運良く魔法の才能を持って産まれた。  だが、使用できるのは攻撃魔法ではなく回復魔法のみだった。  攻撃魔法を一切使えない彼は、冒険者達からも距離を置かれていた。 彼は誓う、俺は回復魔法で最強になると。  --------- もし気に入っていただけたら、ブクマや評価、感想をいただけると大変励みになります! #ヒラ俺 この度ついに完結しました。 1年以上書き続けた作品です。 途中迷走してました……。 今までありがとうございました! --- 追記:2025/09/20 再編、あるいは続編を書くか迷ってます。 もし気になる方は、 コメント頂けるとするかもしれないです。

能力値カンストで異世界転生したので…のんびり生きちゃダメですか?

火産霊神
ファンタジー
私の異世界転生、思ってたのとちょっと違う…? 24歳OLの立花由芽は、ある日異世界転生し「ユメ」という名前の16歳の魔女として生きることに。その世界は魔王の脅威に怯え…ているわけでもなく、レベルアップは…能力値がカンストしているのでする必要もなく、能力を持て余した彼女はスローライフをおくることに。そう決めた矢先から何やらイベントが発生し…!?

無能と呼ばれたレベル0の転生者は、効果がチートだったスキル限界突破の力で最強を目指す

紅月シン
ファンタジー
 七歳の誕生日を迎えたその日に、レオン・ハーヴェイの全ては一変することになった。  才能限界0。  それが、その日レオンという少年に下されたその身の価値であった。  レベルが存在するその世界で、才能限界とはレベルの成長限界を意味する。  つまりは、レベルが0のまま一生変わらない――未来永劫一般人であることが確定してしまったのだ。  だがそんなことは、レオンにはどうでもいいことでもあった。  その結果として実家の公爵家を追放されたことも。  同日に前世の記憶を思い出したことも。  一つの出会いに比べれば、全ては些事に過ぎなかったからだ。  その出会いの果てに誓いを立てた少年は、その世界で役立たずとされているものに目を付ける。  スキル。  そして、自らのスキルである限界突破。  やがてそのスキルの意味を理解した時、少年は誓いを果たすため、世界最強を目指すことを決意するのであった。 ※小説家になろう様にも投稿しています

処理中です...