田舎暮らしの貧乏令嬢、幽閉王子のお世話係になりました〜七年後の殿下が甘すぎるのですが!〜

侑子

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第一章 離宮の住人

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 そう言いながら、ピシッと綺麗に背筋を伸ばした伯母が姿を現した。

 外見は記憶にあるより少しだけ年を取っている気がするが、厳しそうな眼差しは相変わらずだった。

 けれど、私を視界に捉えた時、一瞬その眼差しの中に温かな光が見えた気がした。 

 その温かさに少し安心感を得た私は、落ち着いて伯母へ向き合うことができた。
 
「伯母様、お久しぶりでございます。お返事も待たずに訪問した無礼を、どうかお許しくださいませ」
 
 私が礼儀正しく挨拶をすると、彼女はフンと鼻を鳴らした。
 
「あんな田舎で暮らしていても、娘に礼儀作法を教えることくらいはきちんとできたようね」
 
 嫌味っぽく聞こえるが、一応褒められたようだと解釈する。
 
「まぁ、わたくしの返事も待てないほど急ぎの用だということなのでしょう。堅苦しい前置きはなしにするわ。それで、あなたの父親は、今度は一体どんな厄介事を引き起こしたの?」
 
 ……さすが伯母様、お見通しというわけですね。
 
 私は、事のいきさつと現状を簡潔に説明した。話が進むごとに、ピキピキと叔母のこめかみに青筋が走っていくのがわかる。
 
「あの阿呆、いつかオリビアを不幸にすると思っていたけれど、ついにやったというわけね。さらには娘まで巻き込むだなんて……」
 
 伯母の怒りは今や頂点に達しているようだ。
 
 父は優しいし素敵なところもたくさんあるのだが、迂闊すぎる点は同意せざるを得ないし、話が進まなくなりそうなので今の言葉はさらりと流すことにする。
 
「伯母様、どうか助けていただけませんか。お金は、働いて少しずつでも必ず返します。あの商人との結婚も避けたいのですが、わたくしは妹と弟を、学園に入れてあげたいのです。わたくしとは違って、二人とも才能のある子です。わたくしにできることならば何でもさせていただきますので、どうかお願いいたします」
 
 必死に頭を下げると、伯母は私を見定めるような眼差しを向けてきた。
 
「……何でもする、と言ったわね? その言葉に嘘はないかしら?」
 
 聞き返されて、思わずギクリと身を強張らせる。
 
 伯母は、何か私にさせたいことがあるのだろうか。
 あの商人でなくても、もしかしたらどこか繋がりを得たい家門へ嫁げと言われるのかもしれない。
 
 でも、それが誰であれあの男よりマシに違いない。
 それに、この伯母の指示ならば、きっとそれほど悪いようにはならないはずだ。何より、私がそれを受け入れることで家族を救えるのなら、迷うことはない。
 
「はい」
 
 私は力強く頷いた。
 
「いい目ね。気に入ったわ」
 
 伯母がニヤリと口端を上げた。
 

 
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