半竜皇女〜父は竜人族の皇帝でした!?〜

侑子

文字の大きさ
159 / 171
第二章

お礼

しおりを挟む
 空には、キラキラと綺麗な星が輝いている。
 やってきたのは、夜の庭園だ。噴水の側にあるベンチに、二人で並んで腰かけた。
 
 春とはいえ夜はまだ少し冷えると言って、ノアが部屋から持ってきた上着をかけてくれる。

「ありがとう」
「ん。で、どうした? セラは、何とか式典に間に合ったって聞いたけど、何かあったのか?」
「ううん。セラは、ちゃんと出演できたわ。ノアが、すぐにセラを見つけてくれたおかげよ! それに、ノアが証拠の小瓶を見つけてくれたから、すぐに犯人も捕まえられたのよね。本当にすごいわ!」
「いや、オレはそんなすごいことはしてないよ。それよりも、トーアがセラを絶対に式典に出させてやりたいんだって、すごく頑張ってた」
「そうなのよね! 新しい魔道具まで作ったって聞いたから、びっくりしちゃった。今日のセラはね、すごく素敵だったのよ。いつもは可愛いけど、今日は堂々としていて格好よかったの!」
「へえ。よかったな」
「あっ。でも、ノアは見られなくて、残念だったよね……?」

 父の側にロドルバンさんがいたように、本当なら、ノアは今日もわたしの近くで護衛をしてくれるはずだった。他にも護衛はいるのでセラの捜索を任せてしまったが、おかげでノアは式典の様子を見ることはできなかったのだ。

「別にいいよ。セラがちゃんと式典に出られて、キアラが悲しまなかったなら、何も問題ない」

 ノアが優しすぎる。でも、今日のわたしは、それでは不満なのだ。

「そう言ってくれるのは嬉しいけど、ノアはいつもそうやって、自分のことを後回しにしちゃうじゃない。なんだか申し訳ないわ」

 ノアは自分の境遇を気にして遠慮しがちなところがあるので、もっと欲張ってもいいのに、と思ったりする。

「いつも助けてもらっているけど、今日は特にありがとうって思ったから、何かお礼したいの。ねえ、何か欲しいものとか、してほしいことはない?」
「いや、そんなのいいって。オレの立場を考えたら、ありえないくらい良くしてもらっているし、充分に与えてもらってるよ」

 ノアは実質わたしの側近として働いているということで、少なくないお給金が発生している。欲しいものを自分で買うこともできるのだから、わたしがお礼をしたいと思っても、何をすればいいのか考えるのは、結構難しいのだ。

 ……あら? そういえば、以前お父様にも同じことを考えて、悩んだような気がするわ。その時は、どうしたんだったかしら。確か……。

「お父様にはほっぺにキスをしたんだけど、ノアにはお礼にならないわよね?」
「は!?」

 ノアが驚いた様子で身を引いた。そうよね。プーニャだった時もついキスをしてしまった時があったけれど、ノアはとても驚いていた。嫌ではなかったと言っていたが、困らせてしまっていたと思う。

「そうよね。ごめんなさい、お父様はとても嬉しそうにしていたから……」
「え、いや、違う。別に、嬉しくないわけじゃないから。というか、なる。すごくお礼になる」
「そうなの?」

 ノアの顔が赤い。無理をしているのではないだろうか。ノアは赤くなった顔を手のひらで隠しながら、視線だけでこちらを見た。

「……お礼のキスは、特別大好きな人にしかしないんだろ?」

 昔わたしが言ったことを、ノアは覚えていたらしい。そうなのよね。お礼にキスをしようなんて、お父様やお母様、ノアくらいにしか思わないもの。

「そうよ」
「……じゃあ、嬉しいよ」

 そう言ったノアの柔らかな笑顔に見惚れてしまい、思わずじっと見ていると、ノアが訝しげな顔をした。

「なんだよ。……今、してくれるんじゃないのか?」
「あっ、ごめん」

 そして、ふと気づく。ほっぺにキスをしようとしても、身長差があるので、お互いに座ったままでは届かない。

 ……ノアは、いつの間にこんなに背が高くなって、格好よくなったのかしら?

 五年前に人の姿で初めて会った時から、わたしも成長しているはずなのに、身長は追いつくどころか、離される一方だ。
 それでも、屈んでもらうのは何だか違う気がしたので、わたしは立ち上がって、ノアの前に立った。

「キアラ?」
「じっとしてて」

 ノアの両肩に手を置いて、ほっぺにチュッとキスをした。

「……」
「……」

 なんだろう。何となくノアの顔を見ていられなくて、視線を逸らした。
 サァァ、と噴水の水が流れる音が、やけに耳に響いた。

「えっと……お礼になった?」
「……なった。ありがとう……」

 ――この後、どうやって部屋へ帰ったのかあんまり覚えていないのは、すごく疲れていたからに違いない。うん、きっとそう。








 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


 ※ご挨拶

 いつもお読みくださり、ありがとうございます。
 いいねやエール、励みになっております!
 いつもエールをくださってる方がいると思うのですが、本当に嬉しいです。ありがとうございます(*>ω<*)
 たまに字数少ない日があり申し訳ありません……!
 毎日更新できるよう頑張ります!
しおりを挟む
感想 19

あなたにおすすめの小説

【完結】物置小屋の魔法使いの娘~父の再婚相手と義妹に家を追い出され、婚約者には捨てられた。でも、私は……

buchi
恋愛
大公爵家の父が再婚して新しくやって来たのは、義母と義妹。当たり前のようにダーナの部屋を取り上げ、義妹のマチルダのものに。そして社交界への出入りを禁止し、館の隣の物置小屋に移動するよう命じた。ダーナは亡くなった母の血を受け継いで魔法が使えた。これまでは使う必要がなかった。だけど、汚い小屋に閉じ込められた時は、使用人がいるので自粛していた魔法力を存分に使った。魔法力のことは、母と母と同じ国から嫁いできた王妃様だけが知る秘密だった。 みすぼらしい物置小屋はパラダイスに。だけど、ある晩、王太子殿下のフィルがダーナを心配になってやって来て……

側妃の条件は「子を産んだら離縁」でしたが、孤独な陛下を癒したら、執着されて離してくれません!

花瀬ゆらぎ
恋愛
「おまえには、国王陛下の側妃になってもらう」 婚約者と親友に裏切られ、傷心の伯爵令嬢イリア。 追い打ちをかけるように父から命じられたのは、若き国王フェイランの側妃になることだった。 しかし、王宮で待っていたのは、「世継ぎを産んだら離縁」という非情な条件。 夫となったフェイランは冷たく、侍女からは蔑まれ、王妃からは「用が済んだら去れ」と突き放される。 けれど、イリアは知ってしまう。 彼が兄の死と誤解に苦しみ、誰よりも孤独の中にいることを──。 「私は、陛下の幸せを願っております。だから……離縁してください」 フェイランを想い、身を引こうとしたイリア。 しかし、無関心だったはずの陛下が、イリアを強く抱きしめて……!? 「離縁する気か?  許さない。私の心を乱しておいて、逃げられると思うな」 凍てついた王の心を溶かしたのは、売られた側妃の純真な愛。 孤独な陛下に執着され、正妃へと昇り詰める逆転ラブロマンス! ※ 以下のタイトルにて、ベリーズカフェでも公開中。 【側妃の条件は「子を産んだら離縁」でしたが、陛下は私を離してくれません】

「わざわざ始まるまでまたないで、今のうちに手を打ったってよくない?」

イチイ アキラ
恋愛
アスター公爵令嬢エステルは、夢をみる。それは先を映す夢。 ある日、夢をみた。 この国の未来を。 それをアルフレッド王太子に相談する。彼女を愛して止まない婚約者に。 彼は言う。 愛する君とぼくの国のためなら、未来を変えるのも仕方なくない?

【完結】勤労令嬢、街へ行く〜令嬢なのに下働きさせられていた私を養女にしてくれた侯爵様が溺愛してくれるので、国いちばんのレディを目指します〜

鈴木 桜
恋愛
貧乏男爵の妾の子である8歳のジリアンは、使用人ゼロの家で勤労の日々を送っていた。 誰よりも早く起きて畑を耕し、家族の食事を準備し、屋敷を隅々まで掃除し……。 幸いジリアンは【魔法】が使えたので、一人でも仕事をこなすことができていた。 ある夏の日、彼女の運命を大きく変える出来事が起こる。 一人の客人をもてなしたのだ。 その客人は戦争の英雄クリフォード・マクリーン侯爵の使いであり、ジリアンが【魔法の天才】であることに気づくのだった。 【魔法】が『武器』ではなく『生活』のために使われるようになる時代の転換期に、ジリアンは戦争の英雄の養女として迎えられることになる。 彼女は「働かせてください」と訴え続けた。そうしなければ、追い出されると思ったから。 そんな彼女に、周囲の大人たちは目一杯の愛情を注ぎ続けた。 そして、ジリアンは少しずつ子供らしさを取り戻していく。 やがてジリアンは17歳に成長し、新しく設立された王立魔法学院に入学することに。 ところが、マクリーン侯爵は渋い顔で、 「男子生徒と目を合わせるな。微笑みかけるな」と言うのだった。 学院には幼馴染の謎の少年アレンや、かつてジリアンをこき使っていた腹違いの姉もいて──。 ☆第2部完結しました☆

たいした苦悩じゃないのよね?

ぽんぽこ狸
恋愛
 シェリルは、朝の日課である魔力の奉納をおこなった。    潤沢に満ちていた魔力はあっという間に吸い出され、すっからかんになって体が酷く重たくなり、足元はふらつき気分も悪い。  それでもこれはとても重要な役目であり、体にどれだけ負担がかかろうとも唯一無二の人々を守ることができる仕事だった。  けれども婚約者であるアルバートは、体が自由に動かない苦痛もシェリルの気持ちも理解せずに、幼いころからやっているという事実を盾にして「たいしたことない癖に、大袈裟だ」と罵る。  彼の友人は、シェリルの仕事に理解を示してアルバートを窘めようとするが怒鳴り散らして聞く耳を持たない。その様子を見てやっとシェリルは彼の真意に気がついたのだった。

存在しないことにされていた管理ギフトの少女、王宮で真の家族に出会う 〜冷遇された日々は、王宮での溺愛で上書きします〜

小豆缶
恋愛
「願った結果を、ほんの少しだけ変えてしまう力」 私に与えられたギフトは、才能というにはあまりにも残酷な自分も人の運命も狂わせるギフトだった。 そのあまりの危うさと国からの管理を逃れるために、リリアーナは、生まれたことそのものが秘匿され、軟禁され、育てられる。 しかし、純粋な心が願うギフトは、ある出来事をきっかけに発動され、運命が動き出す。 二度とそのギフトを使わないと決めて生きてきたのよ だが、自分にせまる命の危機ーー 逃げていた力と再び向き合わなければならない状況は、ある日、突然訪れる。 残酷なギフトは、リリアーナを取り巻く人たちの、過去、未来に影響し、更には王宮の過去の闇も暴いていく。 私の愛する人がどうか幸せになりますように... そう、リリアーナが願ったギフトは、どう愛する人に届くのか? 孤独だったリリアーナのギフトが今、王宮で本当の幸せを見つけるために動き始める

絶望?いえいえ、余裕です! 10年にも及ぶ婚約を解消されても化物令嬢はモフモフに夢中ですので

ハートリオ
恋愛
伯爵令嬢ステラは6才の時に隣国の公爵令息ディングに見初められて婚約し、10才から婚約者ディングの公爵邸の別邸で暮らしていた。 しかし、ステラを呼び寄せてすぐにディングは婚約を後悔し、ステラを放置する事となる。 異様な姿で異臭を放つ『化物令嬢』となったステラを嫌った為だ。 異国の公爵邸の別邸で一人放置される事となった10才の少女ステラだが。 公爵邸別邸は森の中にあり、その森には白いモフモフがいたので。 『ツン』だけど優しい白クマさんがいたので耐えられた。 更にある事件をきっかけに自分を取り戻した後は、ディングの執事カロンと共に公爵家の仕事をこなすなどして暮らして来た。 だがステラが16才、王立高等学校卒業一ヶ月前にとうとう婚約解消され、ステラは公爵邸を出て行く。 ステラを厄介払い出来たはずの公爵令息ディングはなぜかモヤモヤする。 モヤモヤの理由が分からないまま、ステラが出て行った後の公爵邸では次々と不具合が起こり始めて―― 奇跡的に出会い、優しい時を過ごして愛を育んだ一人と一頭(?)の愛の物語です。 異世界、魔法のある世界です。 色々ゆるゆるです。

妹の身代わりに殺戮の王太子に嫁がされた忌み子王女、実は妖精の愛し子でした。嫁ぎ先でじゃがいもを育てていたら、殿下の溺愛が始まりました・長編版

まほりろ
恋愛
 国王の愛人の娘であるアリアベルタは、母親の死後、王宮内で放置されていた。  食事は一日に一回、カビたパンやまふ腐った果物、生のじゃがいもなどが届くだけだった。  しかしアリアベルタはそれでもなんとか暮らしていた。  アリアベルタの母親は妖精の村の出身で、彼女には妖精がついていたのだ。  その妖精はアリアベルタに引き継がれ、彼女に加護の力を与えてくれていた。  ある日、数年ぶりに国王に呼び出されたアリアベルタは、異母妹の代わりに殺戮の王子と二つ名のある隣国の王太子に嫁ぐことになり……。 「Copyright(C)2023-まほりろ/若松咲良」 ※無断転載を禁止します。 ※朗読動画の無断配信も禁止します。 ※小説家になろうとカクヨムにも投稿しています。 ※中編を大幅に改稿し、長編化しました。2025年1月20日 ※長編版と差し替えました。2025年7月2日 ※コミカライズ化が決定しました。商業化した際はアルファポリス版は非公開に致します。

処理中です...