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第二章
魔法の部、開始!
しおりを挟む建国祭、三日目。
今日もわたしは、公務として武闘会の観覧に来ている。
父と母と皇族席に座り、まもなく開始という盛り上がりを見せる会場内の熱気を、どこか遠くに感じていた。
「キアラ様、どうかされましたか?」
今日わたしの護衛を務めてくれているミリーシャが、心配そうに声をかけてきた。
「あ、ううん。何もないわ。ごめんなさい、ちょっと考え事をしていたの。それより、昨日は大変だったのに、急に護衛を頼むことになってしまってごめんなさい。引き受けてくれてありがとう」
「いえいえ。わたくしは、キアラ様の護衛騎士ですから! それに、確かに大変でしたが、気分はとても晴れやかなので、今なら一ヶ月休まなくても大丈夫な気がしています!」
ミリーシャの顔は、とても明るい。
それもそうだろう。彼女は、昨日の武闘会で優勝したのだから。
激闘の末、優勝を勝ち取ったミリーシャは、それはそれは格好良かった。わたしの護衛をしてくれていたルーシャスが、隣で感動のあまり涙を流していたほどだった。
約束通りわたしに勝利を捧げてくれた護衛騎士を、本当に誇りに思う。
「ふふ。ミリーシャなら本当にできそうだけど、一ヶ月も休みなしで働かせたら、ルーシャスにミリーシャを一人占めするなって怒られちゃうわ」
「あぁ、それはそうかもしれませんね」
ミリーシャと笑い合っていると、隣に座っている父が、こちらを見ていることに気がついた。
父は大丈夫だと言うように、小さく頷いた。わたしも、頷きを返しておく。
……なんだか大変なことになってしまったけれど、何も問題なく、今日の大会が終わりますように。
「さぁさぁ皆様! ついに始まりました、本日武闘会の二日目は、魔法の部です!」
「「ウオオオオー!!」」
ナレーターの女性の声が、拡声の魔道具で会場中に大きく響く。彼女の大会開始を告げる言葉に、観客たちは大きな盛り上がりを見せた。
そして、一戦目の選手たちがそれぞれ別の扉から姿を現した。
「大注目の一戦目! まず一人目は、その実力は帝国お墨付き! 宮廷魔法使いのモーヴィーさんでーす!!」
「「ワーーーー!!」」
すごい盛り上がりだ。宮廷魔法使いということで、彼の期待値はかなり高いらしい。
「そしてそして、二人目は~! なんと、あの謎に包まれた魔法大国、マギナリアからの挑戦者、匿名希望さんだー!! ……え、匿名希望? まじですか? いいんですか? ……はい、いいそうですー!!」
「「ワーーーーーー!!!」」
……昨日もそうだったけど、こういう大会って、みんな妙なテンションになるのよね。あぁ、わたしも、この大会を純粋に楽しめる立場でいたかった……!
「ところで、マギナリアの匿名希望さんは、フードをかぶっての登場です! 名前も外見も謎の人物! ミステリアスで素敵ですが、その素顔が気になるぅ~! すみませーん! ちょっとだけフードを取っていただけませんかー!?」
ナレーターの女性が尋ねると、観客はみんな、期待の籠った視線を彼に向ける。どこからか、ゴクリと唾をのむ音が聞こえた気がした。
しかし、フードを被った人物は、すぐに手で大きくバツを作った。
「ダメだそうですー! 残念~! でもそうですよねー! わかってました~!!」
残念そうなため息が、会場中を満たした。みんなの一体感がすごい。
……でも、フードを取れるわけがない。だって、あそこにいる選手は、本当はマギナリアから来た謎の人物なんかではないのだから。
ちらりと、フードの人物がこちらを見た。
わたしは祈るような気持ちで彼を見つめ返す。
フードを被っていてもはっきりとわかる。あそこにいるのは、たった一人の、わたしの眷属だ。
「頑張って……」
マギナリアから来た選手になりすましたノアが、小さく呟いたわたしの言葉に応えるように、コクリと頷いた。
ーーーーーーーーーー
※お読みくださり、ありがとうございます。
大変申し訳ございませんが、やっぱり今後は更新ペースがゆっくりになります……。
完結させたい気持ちはあるので、なんとか最後まで書き続けたいですが、他の物語にもチャレンジしてみたいのです。
楽しみにしてくださっていた方は、申し訳ありません。。
今のところ、一週間に一回くらい更新できたらなと思っていますので、また覗きに来てもらえると嬉しいです(>_<)💦
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